実務経験もさることながら、いろいろな企業にネットワークをもつのは強みでもあり、ノマドワーカーにとってはそれが課題でもあるのではないでしょうか。

今回登場するのは、ERPパッケージの導入コンサルティング・開発、Webアプリケーション開発、組込系開発業務などを展開する、今期で30周年を迎えたスペース・ソルバ株式会社の社長参謀(CFO)を努める福田 宗就(ふくだ むねなり)さん。

5,000社とのネットワークを保有し、企業とのマッチングをこの3年間で500件以上も手がけるとともに、経済産業省後援の日本最大級である起業家支援サイト「ドリームゲート」でもその手腕を発揮する、氏のキャリアや今後の働き方について詳しく話を伺いました。

数多くの経験がいまの自分を支えてきた

Q:まず、これまでのキャリアについてお話いただけますでしょうか。

福田 宗就さん(以下、福田):

大学院でMBAを取得したのち、流通業など複数の企業を経て、キャリアアップのために単身で渡米しました。ニューヨークで本場のビジネスを経験し、日本へ一時帰国しているときにヘッドハンティングで声をかけていただいたのが、スペース・ソルバ株式会社でした。その縁で2002年に入社し、管理部マネージャーに就任。財務・法務・経理・人事・総務といった管理業務全般を統括させていただきました。

Q:幅広く業務に携わっていたようですが、それはご自身の希望だったのでしょうか?

福田 宗就さん(以下、福田):

もともと、起業願望がありましたので、当時3社を経営していた社長のもとで色々なことが学べる良い機会だと思い飛び込みました。代表取締役である瀧川の経営方針が”すべてを受け入れる”というスタンスであり、私から希望を伝えたところ、「それならやってみなさい」と快諾いただきました。

しかし、中途半端にやっては元も子もない。それならば徹底的にやろう、ということで寝る間を惜しんでひたすら業務に励みましたね。その甲斐もあり、徐々に力をつけていくことができました。

ターニングポイントはとある会計士との出会い

Q:その後も業務は順風満帆だったのでしょうか

福田 宗就さん(以下、福田):

いえ、やはり壁はありました。会社が株式公開(IPO)を目指すということで社長参謀として様々な方と話す機会が多々あるのですが、その業界の専門用語が多く出てくるのですね。しかし、それが分からないのでは話になりませんし、社長の顔を潰すことに繋がるかもしれない。

そんなときに出会った会計士がとてもすごい知識の持ち主だったのです。年齢は私とほぼ変わらないのに、会計以外の知識も豊富で、こちらからどんな質問をしても的確なレスポンスが返ってくる。

この会計士との出会いが正にターニングポイントでした。自分の視座が上がる瞬間でした。その出会いもあり、専門的知識を得ることの重要性を再認識しました。経営管理系や経理・財務系、金融系、人事・労務系、情報系など、自身の専門的な知識を獲得するために勉強した結果として、保有している資格は40を超えました。

私自身は資格で商売するつもりや独立することを考えておらず、ただ専門家に繋げるために資格を取得してきました。ある程度の知識が身に付けることで、専門家の難しい話が理解でき、会社にとって有益な情報が引き出せ、最終的には経営の意思決定に活かすことができました。

Q:その豊富な知識が各社とのネットワークに活かされていると。

福田 宗就さん(以下、福田):

そうですね。いままで取得してきた資格は実務経験と紐付いていると断言できます。

お客様のニーズを把握し、的確な判断をすることで、各種専門機関へのマッチングも可能となります。最初はGive Giveしていたのですが、返報性の法則というのでしょうか多くの社長が今度は様々な企業をご紹介頂けるようになり、その結果として5,000社とのネットワークが構築でき、それに伴い自分自身の目利き能力も高まり、この3年間で500件以上のマッチングに至ったかと思っています。

困っている人に手を差し伸べ、人と人を繋げたい

Q:なぜ5,000社以上のネットワークを持つようになったのでしょうか。

福田 宗就さん(以下、福田):

困っている人を助けてあげたい、喜んでもらいたいというのが一番大きいですね。実力はあるのになかなか良い出会いがない、という方。とあるビジネスを展開したいが、コネクションが無い、優秀な人材がいない。そんな悩みが多方面から聞こえてきたのです。

それならば、私自身の知識やコネクションを活用して、私欲を捨て困っている人を繋げてあげればいいのではと思い、マッチングを始めました。本来であれば金融機関やベンチャーキャピタルの方のお仕事かもしれませんですが、そこを地道に積み上げてきました。気が付いたら5,000社になっていたところでしょうか。

なお、ほぼボランティアで実務で培ったノウハウや経験等をこれから起業する方向けに提供したいと考え、2010年9月には経済産業省後援の「ドリームゲート」のアドバイザーに就任し、さまざまな経営に関する疑問や悩みついてアドバイスをしています。今後も日本経済を支える起業家の支援に携わり、人と人を繋げまくり、人を幸せにできるよう、頑張っていきたいですね。

Q:今後の働き方はどのようになっていくべきかと思われますか。

福田 宗就さん(以下、福田):

実力のある方がいま以上に羽ばたいていける環境になるのが望ましいと思っています。現状、実力はあるけれど環境がマッチしていないために成果を出せないという方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

いまは昔と違い、ベンチャー企業などでは副業を認めているところも増えてきているようです。また優秀な方は一社に属さず、複数の企業に自分のノウハウや経験を提供する時代が到来すると思っています。そのため自身の長所を伸ばした仕事を始めたり、さまざまな資格を取得して、人との差別化、いわゆる”トガリ”を意識していくべきかと思います。

Q:独立を考えているビジネスパーソンや外部人材採用を検討している経営者へメッセージをいただけますでしょうか。

福田 宗就さん(以下、福田):

独立を考えている方は、まず意識を高くもつことが必要です。また、自身の武器である知識や経験などの”トガリ”があれば独立を考えてもよいでしょう。ただ、さまざまな積み重ねが必要になるので、サラリーマン時代に潤沢な経営資源を有効に活用する機会をものにしつつ、常にトガリを意識して自身を高めてください。

外部人材の採用を検討している経営者は、大きな視点で雇用を考えてほしいですね。外部の人材を採用するにはコストもかかりますが、優秀な人材が集まることで、将来的にはコスト以上の恩恵を受ける可能性はとても大きいでしょう。

取材・インタビュア/千葉 忍
撮影/加藤 静

ノマドジャーナル編集部
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