プロ人材の園部浩司さん(以下、園部)と𡈽方雅之(以下、𡈽方)さんは、共にNEC出身の元同僚です。今回の株式会社三菱ケミカルホールディングスにおける業務改善プロジェクトでは、2人がコンビとなって参画。お互いが異なる領域で力を発揮し、プロジェクト推進が行われました。全社横断のプロジェクトがどのように会社を巻き込んで業務効率化を達成したのか、実際にプロジェクトに参画されたメンバーの皆さんを交えてお伺いしました。

全社横断の業務改善プロジェクト推進のため、外部プロ人材2名体制を採用

4社のグループ会社に対し経営管理を行う三菱ケミカルホールディングス

株式会社三菱ケミカルホールディングス 総務室長 中藤 毅様株式会社三菱ケミカルホールディングス 総務室長 中藤 毅様

総務室長 中藤毅さん(以下、中藤):当社は2005年に設立された会社で、事業会社4社の全体戦略策定や資源配分など、経営管理を行っています。企業のビジョンは、「人、社会、そして地球の心地よさがずっと続いていくこと」を指す「KAITEKI実現」。Sustainability、Health、Comfortの3つの価値を重視したソリューション創出にチャレンジしています。

テレワークの常態化によって大規模な業務改革が必要だったが、ディスカッションが2ヶ月進まなかった

中藤:今回のプロジェクトのきっかけは、コロナによってテレワークが常態化したことです。社長から「社員に困っていることはないだろうか」と言われ、実際に社内アンケートを採ってみると、社員の多くはテレワークには肯定的である一方、確かに業務上で困っていることも多いようでした。

テレワークにおける課題を解決していかないと、会社自体が上手く回っていかないだろうということで、今回のプロジェクトが立ち上がっています。とはいえ、最初は何から手を付けたらいいのかわからない状態でした。

三菱株式会社 技術統括本部 技術部長 原恭太さん(以下、原):執行役員からは「コロナ対策を単発で実施しても意味がない」と言われていたので、広く長い視野、高い目線での業務改革を行うことにしました。ところが、何度ディスカッションをしても、何も進まなかったんです。そんな状態が続いてしまったので、サーキュレーションさんにお願いをした次第です。

熱量の高い2人のプロ人材と一緒なら自分たちの思いを伝えられるのではと感じた

中藤:社内のつながりを通じてサーキュレーションさんも含めたコンサル会社を数社選び、それぞれにヒアリングを行いました。サーキュレーションさんは「プロジェクトに対して専門家をアサインする」というサービスを行っていますが、これが我々には新鮮でしたね。

原:プロ人材の方は合計3名紹介いただきました。その中にいたのが園部さんと𡈽方さんで、この二人に関してはペアとなって支援をする形をご提案いただきました。

中藤:紹介いただいた方それぞれに面談をさせていただき、お二人にご依頼を決めました。園部さんと𡈽方さんが良かったのは、まずは1ヶ月間、当社の本気度を見たいとおっしゃったことです。それからどういうコンサルティングができるのかを決めるということでした。普通のコンサルなら「半年でここまでやります」という提案になるので、このプロセスには驚きました。「うちが会社として試されているぞ」と思った一方、この人たちになら我々の持つ思いも伝わるのではという期待も持てました。

元NECコンビがしっかり役割分担をすることで、より良い支援をしたかった

プロ人材 園部 浩司氏プロ人材 園部 浩司氏

園部:私と𡈽方さんはNECマネジメントパートナー時代の同僚で、業務改革推進本部で業務改革を進めていた者同士です。今回のプロジェクトが大きな仕事になるということは、サーキュレーションさんからお話を伺ってすぐにわかりました。私一人で担当した場合は「ギリギリ成功するかどうかだな」と思ったこと、当時はちょうど𡈽方さんが独立して起業されていたタイミングだったことから、ぜひ力を借りようと思ったんです。

仕事を分割することになるので個人としてのフィーは減りますが、それよりもお客様により良いサービスを提供できればという一心でしたね。

プロ人材 𡈽方 雅之氏プロ人材 𡈽方 雅之氏

𡈽方:園部さんとはこれまでにも何件か共同で案件をを担当させていただいていますが、ここまでしっかりと一緒に組んだのは久しぶりのことでした。支援に入るにあたっては事前に園部さんと何度か打ち合わせをして、お互いがどんな領域を見るのか、納得いくまで話し合いました。

園部さんはどちらかといえば広い視野でプロジェクトを牽引し、私はもっと足元のテクニカルな部分を見る。こういう形で、能力を発揮できればと考えていました。

ファシリテーションやコーチングなど異なる領域でプロとして力を発揮してくれた

「半年先まで会議のスケジュールを押さえ、きっちり時間内で終える」重要性を実感

園部:今回のご支援は、大きくいうと私がプロジェクトを推進する事務局のサポートと全体設計、𡈽方さんは実際に業務改善を進める上でのコーチングという役割で進めました。私は例えば事務局会議や運営会議、報告会などを設計させていただきましたが、皆さんいかがでしたか?

原:半年先まで会議のタイミングを設計してくれたのは、すごいです。いつもは、会議の日程が近づいてから参加者のスケジュールを調整してバタバタするのが私のパターンなのですが、それがなかったのは非常に楽でした。

株式会社三菱ケミカルホールディングス 総務室 総務1グループマネジャー 兼 秘書グループマネジャー 兼 コーポレート・セクレタリー室 中田 真一様株式会社三菱ケミカルホールディングス 総務室 総務1グループマネジャー 兼 秘書グループマネジャー 兼 コーポレート・セクレタリー室 中田 真一様

総務室 総務1グループマネジャー 中田真一さん(以下、中田):その上で、園部さんも𡈽方さんも、会議の予定を一度も変更しなかったのには感心しました。また、会議そのものもアジェンダをしっかり決めて、必ず5分前には終了するんです。これは真似をしなければいけないと思いました。

中藤:プロジェクトは第一世代として昨年の10月から今年の3月まで働き方改革に必要な5テーマを立ち上げて活動し、また、第二世代として今年の4月から9月まで第一世代の集約・継続テーマを3テーマ、新テーマを1テーマの4テーマを進めていったのですが、第1世代の後半に中だるみが発生そうになって。そのときに、園部さんが私と園部さん・𡈽方さん、そして私と施策責任者の1on1を設定してくれました。逆に第2世代のときはきちんとプロジェクトが回っているということで、1on1はあまり実施しなかったんです。状況に応じた柔軟な進め方があるのだなと、非常に勉強になりましたね。

プロジェクトが進むごとに、的確かつバランス感覚のあるコーチングが社内で高く評価されていった

株式会社三菱ケミカルホールディングス KAITEKI推進室 生産技術グループマネジャー 山田 浩様株式会社三菱ケミカルホールディングス KAITEKI推進室 生産技術グループマネジャー 山田 浩様

KAITEKI推進室 生産技術グループマネジャー 山田浩さん(以下、山田):𡈽方さんは各施策の推進において、コーチとして非常に的確な指示を出してくれました。𡈽方さんの進め方を知ってしまったことで、逆に今後生半可にはできなくなったというのが、今の大きな課題です(笑)。

中田:𡈽方さんのコーチングは忍耐強いですよね。相談を受ける立場として適任だと思いました。また、相手の言葉への返し方がテクニカルかつ、アカデミックです。言われたほうは反論や異論を投げ返せないくらい完璧だったので、メンバーはみんな𡈽方さんを頼っていました。もちろん頼りすぎはよくありませんが、𡈽方さんはそこを自分で上手くコントロールしながら、メンバーにサジェッションを与えている印象が強かったです。

原:最初はコーチングの場をセッティングしてもなかなかメンバーが集まらなかったのですが、後半にはびっしり席が埋まるようになりました。これが𡈽方さんのコーチングに対する評価の全てだと思います。ほかのプロジェクトを実施するときにも、𡈽方さんのような役割の方がいたらガラッと進め方が変わりそうです。

会社側の「熱量」にまで言及してくれる外部の専門家という存在は、プロジェクトを推進する上で大きな刺激となる

中藤:ただ、プロジェクトの最中はよく園部さんから「あなたたち、熱量が上がっていませんよ」と言われたんです。

中田:私なんかは途中からプロジェクトに参画したのですが、それとは別に重い業務を抱えていたので、なかなかキャッチアップするだけの余裕がなかったという事情もあります。とはいえ、外部の専門家からもらう「熱量」という言葉は、会社側としてはすごく良い刺激になりますね。「このプロジェクトには本気にならないといけないんだ」という気付きをいただけた気がします。

原:逆に熱量が上がっているかどうか、わかるものなんだなと思いましたよ。

園部:メンバーの熱量に関しては、前職のときからいつもセンサーを働かせているんです。

𡈽方:園部さんが「熱」や「情」といった側面をはっきりと見ていてくれたので、私は理論をつなぎにいくほうに集中しました。プロジェクトの熱量を上げていく係と、裏で理論を支える係というのも、プロジェクトの初動段階で上手く分けられたのかなと思っています。

中藤:ここはコンサルタントと企業の相性もありますよね。こちらが熱量を上げれば上がるほど熱が下がるコンサルも中にはいますから、お二人と当社の相性もばっちりだったのだと思います。ここまで入り込んでくれるような人材はなかなかいませんよ。

単なる業務改善だけではなく「会社の風土」を根本から変革できた

当初の目的である業務改善を少しずつ達成し、社内の働き方に好影響が生まれている

原:5つのテーマではそれぞれ成果が出ています。例えば私が責任者を担当したのは、脱ハンコ・脱郵便というテーマでした。いわゆる社内稟議の電子化ですね。システム選定から導入、社内浸透の施策を主に検討しました。

通常、こういった施策をシステム部門に依頼するとシステム検討だけで年オーダーで時間がかかるのですが、プロジェクト自体は半年で成果を出さなければいけないという状況があったので、システム導入までを1~2ヶ月程度で実施しています。そこまでスピーディに推進できたのが成果ですね。

園部:プロジェクトに期限があったからこそ、スピード感を持ってやれた感じですよね。

山田:私は標準業務プロセスのマニュアル化という分野で責任者を務めました。その中で、これまでバラバラだった新人に対するオンボーディングのやり方を統一しています。具体的な内容はいくつかありますが、例えばPCのセッティングが不要な仕組みを作ったのもその一つです。これにより、1~2日はオンボードの時間を短縮できるようになりました。

「言えばやれる、やればできる」という社内風土が醸成されたことが最大の成果

中田:以上のようにテーマごとに個別の成果はありますが、何より会社として「自部門以外の事柄において改善意見を出し、それを形にできた」ということが大きいです。例えば人事部門の業務に関して、経理部門の人が改善する。こうした担当領域を超えた活動も、言えばやらせてくれる、やればできる。そういう風土を社内に現実できたのは、最大の成果だと捉えています。

中藤:あとは、園部さんが担った「会議のファシリテーション」という専門領域において、メンバー全員が有効なツールを使うようになったこと、そして会議を時間通りに終わらせる意識を持つようになったことも非常に良かったと思います。

今回のプロジェクトの前提は「テレワーク下における業務改善」ではあったのですが、支援を通して、その根底にある「働き方の改善」を掘り起こしていただいたと思っています。その一つが、会議の質の最適化でした。これによって社内に新しい風が吹き、大きな変化が生まれています。

中田:ただし、本当の成果は園部さんと𡈽方さんのご支援が終わった後に見えてくると思います。お二人がいなくても同じように施策を回せるのなら、「成果が残っている」と言って良さそうです。

二人の支援を通して学んだことを基に、自走型組織へと成長していきたい

タイプが違う2人のプロ人材が野球のバッテリーのような阿吽の呼吸を発揮してくれた

原:お二人はスキルが高いことはもちろんなのですが、我々がきちんと自走できるように、お二人が持つ能力を植え付けるようなマインドで支援してくださいました。社員の立場や気持ちに立った行動は、本当に素晴らしいと思います。

山田:私は特にコーチングの場面で𡈽方さんにお世話になりましたが、𡈽方さんは頭の中がすごくシステマチックなんですよね。だからこそ、我々の悩みを解決した上で自分でも仕事を引き受けて、すぐに資料を作ってくれます。しかも、それがものすごく速い。お昼に打ち合わせた内容の資料が、夜には出来上がっていることすらありました(笑)。

園部さんと𡈽方さんのコンビも夫婦のように息がぴったりで、園部さんが𡈽方さんに「これをお願いします」と言う前にもう資料が作られていた、なんてことも多かったです。まさに阿吽の呼吸ですね。

中田:私は野球のバッテリーのようだと思いましたね。サインすら出さずに「次はカーブだ」とわかり合っているようなイメージです。お互い全く違うタイプだからこそ、良いコンビになっているのだろうなと思います。

園部:お互いの領域を信頼し合っていて、侵さないんですよね。グレー部分が少ないんです。

昭和の働き方を脱却し、社員自らが自発的に業務を改善していく「自走型組織」を目指す

中藤:我々がこのプロジェクトを通して目指すのは、自走型の組織です。社員が自発的にさまざまな事柄を改善していく気持ちを持てるようになるのが、最大のゴールですね。いわゆる「やらされ感」なく動ける人たちが集まる会社になってほしいです。

中田:当社はコロナ以前、典型的な週5出社の「昭和の働き方」をしている企業でした。しかしコロナ禍になって園部さんと𡈽方さんを迎え、会社は大きく変わることになった。その変革が動き出している実感も強く感じています。将来的にもこの動きは止めたくありませんし、しっかりと歩き続けたいと思っています。

今回は元NECのお二人がバッテリーを組んで、大企業の業務改善という難しい内容に挑みました。メンバーの皆さんも各々が抱える別の業務や思惑がありましたが、プロジェクトが進むごとに「この業務改善は今、やるべきことなのだ」という意識が強くなっていったそう。プロ人材と企業、お互いが持つ「熱」が呼応し合った結果、全社を巻き込む大規模な改善が達成できたのだと感じました。

本日はお忙しい中、ありがとうございました!

株式会社三菱ケミカルホールディングスの皆様と支援したプロ人材のお二人

企画編集:花園絵梨香

写真撮影:樋口隆宏(TOKYO TRAIN)

取材協力:株式会社三菱ケミカルホールディングス

※ 本記事はサーキュレーションのプロシェアリングサービスにおけるプロジェクト成功事例です。