今回は会計、定量指標の観点でみた、「売上を増やすために」というテーマを、前・中・後編の3回に分けて解説いただきます。第7回はその前編をご紹介いたします。売上を増やすには、まず3つの指標に注目していきましょう。売上高を見る時も、ただ売上高だけを見ていては何も数字は語りません。売上を分解して経営戦略に活かしていく必要があります。そして、自社にとって重要なKPIとは?
3つの指標を意識して売上増幅を図る
Q:売上を増やすにはどうすればよいのでしょうか?
A:売上=単価×顧客数×購入回数を意識しましょう。
会計上、売上は以下の式から生まれます。
売上高=単価×顧客数×購入回数(リピート数)
よって、売上を伸ばすにはこの単純な式の要素を意識すればよいのです。
- 単価を上げる
- 顧客数を増やす
- 購入回数を増やす
経営者は自社のビジネス環境をみて、経営資源をどう投入するかを考えていかなければいけません。上記3つの内、どの要素を上げることができるのか、また短期的な売上高だけではなく、半年後、1年後、3年後、5年後も売上を伸ばすためはどのような戦略をとるべきなのか、3つの指標を意識して予算や経営戦略を立てていきましょう。
例えば、中長期的に考えれば、時には単価を値引いて、顧客数や購入回数を増やして売上全体を伸ばす戦略もあるでしょう。
Q:先述の3つの指標以外に重要なポイントはありますか。
A:自社のビジネスにおいて何が重要な指標となるのか意識しましょう。
近年ではKPI=Key Performance Indicator(重要業績評価指標)という言葉が流行っておりますね。この言葉はまさに自社の経営・業績を図る指標を設ける重要性が高まっている表れです。
KPIは会社、業種ごとによって様々ですが、たとえば販売部門におけるKPIは「今月の新規獲得顧客数」などがあてはまります。また「一人当たり販売額、利益額」というものもKPIとなります。経営における目標指標と考えてみてください。
売上高を見るときは細分化して分析
さらに売上高を見る時も、ただ売上高だけを見ていては何も数字は語りません。例えば、
- 事業別売上高
- 一店舗当たり売上高
- 従業員一人当たり売上高
というように、売上自体も細分化して分析し経営に活かしていきましょう。
たとえば、アパレル事業を展開している会社があります。その会社を見る上でも、メンズ事業、ウィメンズ事業、子供服事業と事業別に売上や損益を見ることで、どの事業が好調なのか、どの事業が問題なのかわかります。
飲食事業であれば店舗別の売上高や損益が重要な指標になるでしょう。また店舗の効率性をみる上では、従業員一人当たり売上高が重要な指標になるでしょう。
感覚で経営をするのではなく、数字に強い経営者となり、売上向上の戦略を実施していきましょう!
専門家:江黒 崇史
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。