子育てや介護などのライフイベントと仕事の両立は、今の日本ではなかなか大変なもの。また、ライフイベントの主な担い手は、未だに女性が多くを占めています。実態はどうなっているのか。現状を打破するためには、どういった取り組みや工夫が必要なのか。自身の経験や実際の声を交えながら、考えていきたいと思います。
第2回では、仕事をやめざるを得ない理由のひとつとして、最近メディアでも取り上げられていることの多い、保育園問題についてお話します。
やめざるを得なかった理由の二つめは、”サポートのなさ”。
保育園に入りたくても入れない!保活は大変。
共働き家庭の強い味方、「保育園」。ですが、待機児童が多いことは、皆さんご存知の通りです。仕事との両立と同時に、保育園に入るための活動”保活”も、とても大変です。
どうしてこんなに大変になってしまうのかというと、保育園の絶対数が足りないことが大きな要因です。保育園の定員数よりも入りたい人が多いわけですから、優先順位をつける必要があります。認可外など、民間が運営しているところは、先着順での申し込みが多いです。
しかし認可保育園は、ポイント制で、多い順から決まります。フルタイム共働きというだけでは、入れない自治体がほとんど。すでに認可外に預けて復職している、子供が複数人いる、介護している、親が遠くてサポートが受けられないなど、追加のポイントを積み重ねて、どうにか入れるのです。
ちなみに、フリーランス=自営業、という時点で、サラリーマンより点数が低くなる、という自治体もあるようです。替えがきかない、という面ではサラリーマンよりシビアなのに、おかしいなと感じています。
保活の大変さは聞いていたものの、私は「生後6ヶ月くらいになったら、保育園回り始めればいいかな。」と思っていました。「甘い!そんなんじゃどこも入れないよ!妊娠中から保育園回りしておかないと!」と先輩ママに喝を入れられてなかったら、今頃は我が子も待機児童になっていたことでしょう。実際、妊娠中からキャンセル待ちしていた認可外が空いたと連絡があったのは、子供が生後7ヶ月の時でした。生まれた後の予約だったら、繰り上げはまずなかったでしょうし、その後認可保育園に転園することもできなかったと思います。
夫のサポートに期待したいけれど・・・男性の子育て参加
厚生労働省の調査によれば、平成27年度の男性の育休取得率は、わずか2.65%と非常に低い数字になっています。育休まで取らなくても、早く帰ってきて、子供をお風呂に入れたり、洗い物をしてくれたりするだけで、随分助かる、という女性は多いのですが、現実はなかなか難しいようです。なお、内閣府のデータによれば、30代男性では約5人に1人が、週60時間以上(1日平均12時間以上)の長時間労働をしているそうです。子育てに参加したくても、できる状況ではないですね。それが当たり前という風潮であれば、会社の理解を得るのが難しいことも、容易に想像できます。
では、時間があれば、家事・子育てを手伝ってくれるのでしょうか。女性は自然と、四六時中子供のそばにいて、授乳におむつ替え、泣いたらあやして、とお世話をするようになります。でも男性は、意識して手を出すようにしなければ、機会に恵まれません。また、そもそも家事スキルが低いからできない、「何をサポートしたらいいのか、よくわからない」といった声もよく耳にします。やり直しさせられてやる気を削がれ、やらなくなった、という悲しいケースも多いです。
我が家では、私が外出する月曜と土曜が夫の担当。月曜は、17時退社で18時に保育園にお迎えに行かなくてはいけないため、朝早めに出社しています。20時半頃私が帰宅して、バトンタッチして寝かしつけに入った後、家で仕事をしています。その他の平日は、22時頃の帰宅です。
子供が病気で保育園に行けず、私が外出する時は、在宅勤務で夫が看てくれることもあります。
私がフレキシブルな働き方をしているので、週2サポートで成り立っていますし、忙しい中子育てに関わろうと積極的な夫に感謝しています。ですが、将来的に第二子が生まれた場合どうなるのか、不安は残ります。
夫自身も、「もっと生産性を上げなければ、仕事人としても家庭人としても、この先まずい」と感じているようです。また、病児保育のために在宅勤務制度を使うのは、夫が社内で初でした。抵抗はなかったのか、と尋ねると「誰かが道を切り拓かないとね」という答えが返ってきて、頼もしく思いました。
次に強力なサポーターは、実家
次に強力なサポーターは、実家。特に女性側の実家は、頼みやすいので頼りにしている、という人も多いでしょう。子供が病気で保育園に預けられない、残業でお迎えが間に合わないなど、緊急時は非常に頼りになります。「東京と九州の距離だけど、来てもらっている」というケースも聞いたことがあります。
しかし、それも親が元気だから頼めること。親も仕事をしていたり、介護をしていたりすれば難しいでしょうし、遠距離ではなかなか通えない場合がほとんどでしょう。
我が家の場合は、私の実家のサポートを受けるため、車で30分かからない今の家を選びました。母は週2で仕事をし、同居している祖母の介護をしていますが、緊急時にはかけつけてくれます。引退して孫を溺愛している父も、熱があっても元気に遊びたがる娘の相手をしてくれています。
夫のサポート、実家の協力。非常にありがたいですが、正直、これがないと仕事できません。また、夫については、彼も親なわけですから、”サポート”という言葉は的確ではない、と感じています。お互い感謝の気持ちを忘れてはいけないと思いますが、「妻が子育ての主体者で、夫が協力者である」という意識を妻側が捨てない限り、「夫婦が共に子育てする」という概念は、世の中に根付かないと思うのです。自戒を込めて。
孤軍奮闘するワーキングマザーたち
仕事を思い切りできないストレス、際限のない家事。限られた時間の中で、成果を出すと同時に、子供との時間をいかに捻出するか。両立の可否は、女性個人の力量と工夫、周囲を巻き込む力に委ねられているのが現状です。一社会人として、スキルアップし続ける努力は不可欠ですが、もっと社会全体の仕組みとして担保できることがあるのではないかと、改めて感じました。
このコラムでは、そんな現状を少しずつ変えていくための取組みや事例を、今後ご紹介していきたいと思います。お楽しみに!
専門家:天田有美
慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。