AIやIoT、〇〇Techなど新たなテクノロジーが普及し、“第4次産業革命”と言われる新時代に差し掛かろうとしています。市場の成熟や労働人口の減少などにより、GDPで中国に抜かれるなど、経済的に停滞が続いている日本。テクノロジー分野で存在感を見せ、経済成長の足掛かりにしたいところですが、IT人材の不足という深刻な問題に直面しているのです。その現状と、副業が普及しつつある、これからの時代のIT技術者の働き方を紹介します。
IT業界が人手不足の理由
そもそもIT人材はなぜ不足しているのでしょうか。その理由として、IT・WEB市場の成長が挙げられます。今やあらゆる業種の企業が、ITシステムやWEBを活用して事業展開しています。それに伴って必要なIT技術者の数も増え、追いついていない状況なのです。
また、IT技術者へのネガティブなイメージも要因の一つです。かつて、肉体労働の仕事が3K(きつい、汚い、危険)と呼ばれていましたが、IT業界も3K(きつい、帰れない、給料が安い)というイメージが持たれているようです。2000年代、IT技術者の過酷な日々が2ちゃんねるに投稿され、社会現象になりました。書籍化や映画化もされ、IT業界=ブラックというイメージが広く定着してしまったのです。
これは無理もありません。IT市場の普及によって、開発会社やSIerも増加していきます。ライバルが増えるわけですから、他社に負けないように早く、安く、高品質で納品しないといけません。そのあおりを受けるのは、もちろん現場の技術者たちです。残業や休日出勤は当たり前、時間外や休日手当も支払われない、同僚たちはどんどん疲弊していく……そんな噂が広まれば、IT技術者を目指す人が増えるわけはありませんよね。
IT技術者たちの実情
待遇の低さも挙げられます。日本のIT技術者の平均年収は、500万円前後がボリュームゾーンです。決して安くはありませんが、先に挙げた過酷さが伴うとしたら、見合っているとは言えないでしょう。IT業界は多重下請け構造で成立しています。元請けが二次請けに、そして三次請けに依頼することで技術者を確保しているため、下に行くほど単価が安くなり、格差が生まれてしまうのです。
米国、中でもシリコンバレーなどIT最先端のエリアでは、年収1000万円以上が当たり前です。日本では、大手IT企業や一部のベンチャーを除いて、それだけの金額をもらえる企業はほぼありません。今後、IT技術者の待遇改善をしていくことも、人材不足解消のために必要となるでしょう。
では、IT技術者はどれくらい不足しているのでしょう。経済産業省によると、現時点で17.1万人が足りていません。こういった事態を解消すべく、2020年から小学校でのプログラミング教育が必修化されます。シニアや女性、外国人の活用もさらに加速していくでしょう。
しかし、テクノロジーのさらなる普及や労働人口の減少、ベテランエンジニアの引退などによって、2030年には不足する技術者が78.9万人にも膨れ上がるという試算があります。日本がIT分野で世界をけん引するために、クリアすべきハードルはたくさんあるのです。
さて、IT人材が不足している現状を紹介してきました。しかし逆に言うと、ITスキルを持った方にとってはチャンスだと言えるでしょう。優秀なエンジニアは、常にヘッドハンティングの対象となります。転職して年収が倍になった、というエンジニアも珍しくありません。
副業としてITスキル・知識を活かす
また、技術や知識があれば、副業でもしっかり稼ぐことができます。代表的なのが、LancersやCrowd worksなどのクラウドソーシング。空いた時間を活用して、自分のレベルに合ったシステム開発や運用、WEB制作などを請け負うことができます。
クラウドソーシングは基本的に在宅ですが、客先に行って作業を行う副業もあります。エンジニアの空き時間と、企業のニーズを繋ぐPROsheetといったマッチングサービスです。同サービスは単価の高さが売りで、「週3日で月収36万円~」とHPでうたっています。ほかにもさまざまなマッチングサービスがあるので、副業を希望するIT技術者は、自分に合った働き方をきっと見つけられるでしょう。
副業で講師を行う、という選択肢もあります。IT技術者の育成を行うオンラインスクールのCodeCampやTECHACADEMYに、講師として登録すれば、空き時間に好きな場所で副業をできます。手を動かすよりも人に教えるのが好き、という方は、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。
さて、実は筆者も、「ココナラ」というサービスを利用して、IT技術者に仕事の依頼をしたことがあります。内容は、Wordpressで発生したバグの解消。たくさんのIT技術者が登録しており、対応できる業務範囲や価格帯がそれぞれ表示されています。また飲食店口コミサービスのように、一人ひとりに星で格付けもされています。その中から、気になった方とメッセージのやり取りなどを行い、正式に依頼を行うという流れです。
筆者が依頼した方は、非常に迅速かつ丁寧に対応してくださり、すぐに解決しました。金額も、企業に依頼するより間違いなく安価で済みました。今後、大規模開発はともかく、ちょっとした案件であれば、個人に依頼が行く時代が来るのかもしれません。
かつてIT企業にいて、今は違う業界で働いている。学校でプログラミングを習ったけど、IT業界以外に就職した。そんな方が活躍する機会も増えるでしょう。ITの知識やスキルを持つ方々が、一人ひとりのレベルや空き時間に合わせて活躍できるプラットフォームは、着々と整いつつあります。この流れは、IT人材不足の緩和に繋がっていくのでしょうか。注目していきたいと思います。
ライター: 肥沼 和之
大学中退後、大手広告代理店へ入社。その後、フリーライターとしての活動を経て、2014年に株式会社月に吠えるを設立。編集プロダクションとして、主にビジネス系やノンフィクションの記事制作を行っている。
著書に「究極の愛について語るときに僕たちの語ること(青月社)」
「フリーライターとして稼いでいく方法、教えます。(実務教育出版)」