今回はこれからさらに増加していく「女性リーダーの活躍」についてのコラムです。
独立した働き方は男性だけのものではなく、むしろ女性に向いている働き方であるともいえます。というのは、女性は、結婚や出産、育児などでライフステージが大きく変わることが働き方に与える影響が大きく、そのために自然と「働き方」を考える機会が多いのです。比較的キャリアの初期から自身の生涯の働き方の設計について考える女性は多く、結果として独立した働き方や自身のキャリアステップ、それに紐づくスキルについてもよく考えている方が多いように思います。(逆に男性の方が保守的で、知らず知らずのうちに現職の組織依存的にキャリアを考えてしまっている人が多いかもしれません。)
今後さらにビジネスノマドとしての女性の活躍が増えていく社会になっていく中、そのために必要なスキルは何か?社内での管理職やリーダーとしての活躍していくことはもちろん、ビジネスノマドとしての独立や起業といったステップでも重要な要素について考えます。
今回は、「女性の活躍」というテーマで、「凛女のススメ」を出版されているキャリアアドバイザーの久保田一美さんにお話を伺いました。
-最近は「女性の活躍」がメディアでも取り上げられ、「女性活躍推進法」も可決されました。現場で働く女性からみて、「女性の活躍」はどのように映っているのでしょうか?
久保田一美氏(以下、久保田):
そのような背景もあって、企業は女性登用に数値目標を定めて推進していくことになります。一方、現場で働く女性にとっては、自身のキャリアプランの中に「いつかリーダーになりたい」と思って日々仕事をしている方と、「管理職にはなりたくない」と思う方がいます。実は、様々な理由があって、「なりたくない」と考える方も少なくありません。
-「管理職になりたくない」という女性も多いのですね、どうしてでしょうか?
久保田:
なりたくない理由には、「残業が増える」「会議が増える」「有休が取りづらい」など物理的なものの他に、「自信がない」「ロールモデルがいないので、具体的にイメージできない」「興味がない」など心理的な理由もあげられます。
しかし、あるデータによると、「あなたは管理職になりたいですか?」という問いに、「はい」と回答する方が3割くらいに対し、その後追跡調査で、「あなたは管理職になって良かったですか?」という問いには7割くらいの方が「はい」と回答するという結果もあるそうです。
-管理職になりたい人3割に対して、実際になった方はよかったと思っている方が7割と多いですね。これは、何を意味しているでしょうか。
久保田:
管理職になりたい人が多くはありませんね。女性の多くは、企業内では男性ほどチャレンジ精神に溢れている訳ではなく、先ほどの物理的あるいは心理的な理由により、管理職になるメリットを感じられないのです。また、結婚や出産、育児などのライフイベントや、夫の転勤、親の介護などを考えたとき、どの時点でキャリアが中断されてしまうのか?など、考えなければならない事柄が、男性に比べてとても多いのです。
しかし、これから女性の管理職登用が増加していくと、キャリアを積んで長く働いている女性や、まわりからの評価が上がった女性に、ある日「リーダーをやってみませんか」とお声が掛かるわけです。その時に、「適切なフォロー」をすることで、その女性は「私にも出来るかもしれない」「まずはやってみよう!」と思い、後に「管理職をやってみて良かった」となるのです。
-初めてリーダー職に就く女性への「適切なフォロー」とは、何でしょうか。
久保田:
それは、「あなただったら、出来るよ」「思うようにやってみてごらん」など、自信を持たせたり、心から信頼している、ということが伝わるようなちょっとした言葉だったりします。売上目標や数値的な改善値を最初に伝えプレシャーを与えるより、初めてリーダー職に就く女性には、心理的な面が大きく左右すると思うのです。
私は大学卒業後に日系のIT企業にお客様先でのオペレーション教育を行うインストラクターとして入社後、4年目に急成長中であった事業のマーケティング部へ異動し、そこから”BtoBマーケティング”という仕事に20年以上従事してきました。2000年には日系IT企業での実績を基に、大手外資系IT企業へ転職をしたのですが、後者の外資系企業で初めて上司になった方の話をしたいと思います。なぜその話をするかというと、その上司が「女性を活かす理想的な上司」だったからです。まず、転職した時に感じたことは、一言でいうと、「女性が皆、自立している」、ということでした。上司からの細かな業務内容を指示されたりすることもないし、やり方は本人に任せるため、指示待ちの人もいません。それは私にとって、とても仕事がしやすい環境でした。
「上司が部下を信頼している」から、自分なりの仕事のやり方で、新しいことにチャレンジできると感じていました。そして、何か問題があった時だけ、上司がフォローする。また、そのように上司が徹底しているので、上司が最も残業も少なく、率先して有休も取得されていました。その実体験から感じることは、これは外資系企業だからということではなく、女性は認められ、任され、時に褒められ、そっと背中を押してあげたら、「期待以上に成果を出せる方が多くいる」ということだと思っています。それが、女性の「大変そうだと思っていたけど、管理職をやってみて良かった」というアンケート結果の背景だと思います。
-女性を活かす理想的な上司について伺うことができました。リーダー次第で女性が活躍できる場がもっと広がりそうですね。女性こそ活躍できる分野はどういったところがあるでしょうか?
久保田:
もう1つ女性こそ活躍できる分野としてはマーケティングなど消費行動に影響をあたえる領域があげられます。ソーシャルネットワーキング時代の現在、企業は女性の得意とする「共感力」・「影響力」の可能性を最大限に引き出すときがきていると感じています。
今後ますますITが進化し「在宅勤務」もより一層取り入れられることでしょう。また、昨今ユニクロが週休3日制など、「多彩な働き方」を導入することが話題となり、そのような企業の動きも活発になるでしょう。しかし「制度」を整えるだけではなく、企業で働く「やりがい」を感じられてこそ、女性が真に活躍できる時代なのでは、と思うのです。その「やりがい」を感じられるかどうかは、「その企業内の中に、お手本となるような女性がいるかどうか?」というのが、わかりやすい指標の1つです。女性がワクワクするような未来が描けるロールモデルがいない企業は、今後ますます能力の高い人材の確保は難しくなるでしょう。
そして、究極のところ、これからは、「あの人が発信する思いに共感する」。
だから「あの人のいる会社で働いてみたい」。そんなことが実現できる時代だと思っています。
現在はfacebookなどのSNSを活用することで、従来に比べて驚くほど広告費用を掛けることなく、製品の思いや企業の思い、社員の思いを届けることができます。人は、人や製品の誕生ストーリーによって共感します。世の中の消費の8割は女性と言われています。つまり、男性の愛用品であるものも、奥様や、恋人が選択している!ということです。女性はそういった「共感して、シェアする」という能力がとても高いのです。
-女性の管理職登用を検討している会社は多いと思いますが、それらの担当の方々へはどのような事をお伝えしていますか?
久保田:
企業の皆様には、「もっと女性のちょっとしたアイデアを聞く機会を設けましょう!」とお伝えしたいですね。ランチの時間、休憩時間にさりげなく同僚と話しているおしゃべりの中にも、すごいアイデアが眠っているかもしれません。そこで働く思いを発信したり、そのアイデアを形にする前に、SNSを使って、テストマーケティングをすることもできます。新しい新規事業を創る。そういったアイデアを持った「やりがい」のある仕事のリーダーを女性に任せたら、きっと予想以上のパワーを発揮してくれるでしょう。
お客様先でのオペレーションを教えるインストラクターとして、日系IT企業へ入社。その後急成長していた事業のマーケティング部へ異動し、グループリーダーを経験。2000年にキャリアアップ転職し、大手外資系IT企業である株式会社シマンテックにてBtoBマーケティングに従事。販売促進のためのプロジェクト企画、実施、オンラインプロモーションなどで実績を積み、マネージャへ昇格。育児をしながらも、成果を出すノウハウを蓄積し、最優秀社員賞を含む多数のアワードを受賞。 2015年に前向きな女性への応援書「凛女のススメ」共著出版し、Amazon《女性と仕事》など3部門で第1位獲得。企業リーダー対象の専門誌「月刊リーダーシップ」や、キャリア通信教育教材などを執筆。企業や商工会議所でのキャリア研修、リーダシップ研修にて活躍中。
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