高度な専門性を備え、複数の企業と業務単位での請負契約を結び活動する「インディペンデント・コンストラクター(以下、IC)」。日本での認知度が低いため、この名称を初めて知った方も多いのではないでしょうか。本ジャーナルではそれらの人材を「ビジネスノマド」と定義づけています。
今回登場するのは、そんなICという働き方を広く普及することを目的とした、NPO法人IC協会の理事長を努める斉藤 孝浩さん。
IC協会の話をはじめとし、ICマーケットの現状や、働き方によるメリット・デメリット、なぜいま、ICとして働く人が増えていくのかなど、詳しく話を伺いました。
︎ICという働き方を広く普及させていくことが使命
-まず、IC協会の経緯やサービス内容を教えていただけますでしょうか。
斉藤 孝浩さん(以下、斉藤):
当協会はICという働き方を広く普及することを目的としています。2003年4月に任意団体として発足し、同年12月にNPO設立登記。4名の発起人からスタートし、現在(2015年9月時点)では会員が110名ほど在籍しています。内訳は男女比が7:3、年齢は平均をとると40代後半。40代から50代の方が多く活躍しています。
当協会の会員向けサービスは主に講演会・勉強会や親睦会から、税務・法務相談会、ICスタートアップセミナーを開催し、会員のIC同士のつながりを広げる場作りをしています。また、独立志望者や、ICとして活動している方たちの支援も行っています。
-IC協会の会員になる条件とはなんでしょうか。
斉藤:
業界は問いませんが、事業会社でキャリアを積み、その分野での専門的な知識を身に付けている方が対象です。その上で、いま現在、個人事業主もしくは法人化された個人として生計を立てている方。もしくは個人事業主もしくは個人として、スタートすることが決まっている方が入会資格となっております。
なお、当協会に所属する会員様からの紹介が必要で、紹介がない場合は事前審査が必要です。当協会は業務案件の紹介を斡旋する組織ではないことをご了承いただければと思います。
︎自分らしく働く、自分らしく生きる
-現在、日本全国でICとして活躍している方はどれくらいいるのでしょうか。
斉藤:
国内での労働人口の19%で、約1,228万人(2015年4月時点)が活動しているという調査結果(出典:国内のフリーランスは1,228万人。ランサーズ、日本初のフリーランス実態調査を実施)が報告されています。ただし、これはあくまでも広域的な話であり、副業として活動している方も含まれています。
当協会が支援しているICの方たちは、複数の企業と契約しながら働いている方を指します。一人あたり平均3~5社と契約している中、多い方だと20社と契約を結んでいる方もいらっしゃいます。人数は124万人ほど(出典:国内のフリーランスは1,228万人。ランサーズ、日本初のフリーランス実態調査を実施)で、近年、ノマドワーカーという言葉が注目されるようになり、特に2014年ごろから上昇傾向にあるようです。
-ICとして働くことのメリット・デメリットはなんでしょうか。
斉藤:
最大のメリットは、ライフワークバランスが確立されるというところですね。また、環境の変化が多いため、新しいことに対して果敢に取り組む意欲的な方であれば、モチベーションの継続にもつながります。収入面においても、独立後に3年以上継続するコツをつかんだ方であれば、会社に所属しているときよりも増加傾向にあるようです。例えば、ICとして活動することによって、前職よりも1.5倍以上の収入を得られる方もいらっしゃいます。
デメリットは収入面での問題でしょうね。メリットで収入アップのことをお話しましたが、これと反するケースも少なくはありません。経済的な自立だけでなく、自律や自己管理にも気をつけなければなりません。
一例を挙げると健康面がありますね。企業に所属しているときは、病気になっても会社が守ってくれますが、ICとして働くとその後ろ盾がありません。そのため、日々の健康管理が重大なファクターとなるでしょう。
︎3年先を見据えて行動することが重要
-これからICとして働く人に注意すべき点を教えてください。
斉藤:
注意することは大きく分けて3点です。
まず、初めてICとして活動するなら、前職を辞める前に2年分の生活費を確保すること。コネクションがないスタート地点では仕事も少なく、生活も困窮していくでしょう。そうなるとモチベーションが落ちる一方ですし、リスクも高い。そのため、2年間だけ必要最低限で生活できる金額を用意すべきですね。
前職を退職するとき、会社とは良好な関係を築いておくことも重要です。退職したのち、何かしらのきっかけで仕事をいただけるケースもあります。もし、最悪な状態で退職すると、その会社に近しい企業や、その業界で変な噂が出てしまうことで、仕事が回ってこなくなるという可能性があります。
複数企業と契約する際に、売り上げのポートフォリオにも注意しましょう。例えば、特定企業とのシェアが高くなりすぎると、いざ契約が打ち切られた時に、リスクが高くなります。そのため、ひとつの会社から得る売り上げは3割程度に抑え、それを超えた場合は注意したほうが良いと思います。
-リスクを回避することがとても重要なことなのですね。
斉藤:
そうですね。できるだけリスクを回避しながら、複数の企業と良き関係を持つことは長いスパンで仕事をするうえで、非常に重要なことです。
私が独立する際も、仕事に割く時間のうち、3割は営業や新規開拓(これらはさまざまな方とのネットワーキングや勉強会参加なども含みます)に充てなさいと先輩ICにアドバイスをいただきました。
契約期間もだいたい3年周期といわれているので、常に3年先を見越しながら、目標を設定します。その上で、自分の専門性を整理しつつ、新しい情報を収集し続けながら新しい分野を開拓していくことで、次のビジネスに繋がっていくと思いますよ。
ノマドジャーナル編集部
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