多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第22回です。

前回は顧客に正しく物事を理解してもらうことの重要性について述べた。

正しく理解してもらうためには顧客の理解する順番に沿って説明しなくてはならない。

最初に顧客が気にすることは「こいつは信用できるのか?」

以前も記事に書いたが、

先ず最初に顧客が気にすることは「こいつは信用できるのか?」である。

ラポールの構築ができていることが何よりも重要である。

信用ならない相手の言葉は聞こえていても頭に入らない。

次が顧客にとってのメリットである。

「目の前の相手にとって」のメリットを提示する

目の前の相手にとってのメリットを具体的に提示出来ない限り顧客が興味をもつことはない。

特に大事なことは「目の前の相手にとって」という点である。

例えば顧客の会社全社的にメリットがあることであっても、顧客担当者にとってはメリットがない場合も多い、この際に全社メリットを提示したところで担当者は動いてくれない。

逆もまた然りである。全社的には大した問題ではなくても担当者ベースでメリットがあれば動いてくれる。

極論、「この営業担当と仕事をしたい」ということだけでも受注するのに十分な場合も多い。

メリットに価値を感じない限り、次のステップには進めないのでこの点を認識して「この人にとっての」メリットはなにか?という点から伝える内容を考えることが必要だ。

メリットは担当者や会社によって変わってくるのでラポールを通して「何がこの会社と担当者にとってのメリットなのか?」をヒアリングしておくことも大事である。

また、業種・職種を絞ってしまえば「どの会社・担当者にも共通のメリット」を決めてしまうことも可能である。

この場合、ヒアリングは一切せず、営業側のトークだけで受注までもっていくこともある。

トップオブトップの営業はよくしゃべる

よく「優秀な営業は口数が少ない」というが、私は「トップオブトップの営業はよくしゃべる」と思っている。

相手に話させる前に状況やしぐさ、表情から相手のほしい情報・言葉・物を提供できるのが一流の営業であると思う。

一方的にしゃべっているように見えて顧客の心の機微をとらえて話せる営業こそ優秀な営業であると思う。

メリットが相手に伝わると顧客は検討を始める。この段階で大事なことは「ダメな理由」を言わせないということだ。

人間の習性として「何かを変えること」は基本的には嫌がる。

仮にメリットの方が大きかったとしても、人はなんとかして変えない理由を探す。

人は自分の言葉に最も説得される生き物

そして、人は自分の言葉に最も説得される生き物でもある。

「営業はダメ出しをされてからが本番」などという言葉があるが、あれは間違っている。

ダメな理由に反対するいわゆる「アウト返し」をしている時点で営業は顧客の意見に反対する「敵」である。「敵」から物は買わない。

つまり、「ダメな理由を口にされてから反対する」のでは遅すぎるのだ。

なので営業を構築する上で大切なことの2番目は「想定されるダメな理由を言わせない」ことである。

そのためのトークを予め商談の構成に入れておくことだ。

よくあるダメな理由で言うと「うちにはまだ早い」「安いので十分」「既存の外注先がある」などがあるが、これらに本質的な要素はない。

「メリットがあればやれば良いし、なければやらなければ良い」だけであるからだ。

が、営業現場にいるともっともらしい「ダメな理由」に聞こえてしまう。

これを回避するには「メリットを伝え、顧客が検討に入る前」に「早いところやっとかないとね!」とか「安かろう悪かろうだよ」とか「良いところがあれば合理的に外注先を選ばないと」といった言葉を引き出しておかなければならない。

自分で「早いほうがいい」と言った人がその1時間後に「まだ早い」とはなかなか言えないものである。

それは「言った手前恥ずかしくて言えない」というものではなく、「早い方がいい」と言った自分の言葉に説得されているからである。

「ダメな理由」を収集する

であるから、営業の構築においてはこの「ダメな理由」をとそれを言わせない「トーク」の組み合わせをできるだけ多く発見することが重要である。

商材を新しく扱うことになると私は営業をしながらこの「ダメな理由」集めを行う。

商談構築初期段階では「なんでダメなのか詳しく教えて下さい。」と顧客に根堀り葉堀り聞く。

当然、それだけ「ダメな理由」を話した顧客がその商材を買うことはほぼないが、批判的な顧客ほどその商材の「ダメな理由」を知っている。

これは商談を構築する上で大変有用な情報だ。

いつも、大変ありがたく頂戴している。

商談の構築の3ステップ

まとめると、商談の構築は3ステップである。

まずは「目の前の人にとってのメリット」を提示すること(これは顧客の業種・規模・役職でおおよそ類型化できる)

次に「ダメな理由」を収集すること

最後が「ダメな理由を言わせないための方法」を商談の中に織り込むことである。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。

ノマドジャーナル編集部
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