数多くの講師・コンサルタントをみてきた、研修・セミナープロデューサーの原 佳弘氏による「選ばれるコンサルタント」連載。

第1回から第5回までのコラムでは、コンサルタントを目指す方向けに、多くの活躍されているコンサルタントを見てきた立場から語って参りました。

今回からは、実際の現在活躍されているコンサルタントの「先人」にお話をお伺いし、リアルなコンサルタント像をお届けいたします。

初回のリアルトークに登場していただくのは「ビジネス数学」の深沢 真太郎さん。会計学でも、統計学でもなく、どんな職種、役職の方でも、ビジネスを遂行するにあたり必要となる数的思考・スキルを提唱しています。このビジネス数学の考え方・スキルを、企業のビジネスマン向けに提供し、組織におけるビジネススキル向上を支援しています。

そんな「ビジネス数学」の深沢さん、どんなヒストリー、想いでコンサルタントになっていったのでしょうか。

突然会社を辞めることとなり、そこで考えた事は?

Q:―独立の転機は何だったのでしょうか?

深沢真太郎氏(以下、深沢):

ターニングポイントは、35歳の時でした。突然やってきましたね。前職の外資系企業に勤めていた時、経営が変わったこともあって、会社を去ることになりました。

Q:否応なしに独立のきっかけがやってきたのですね。
そこから「ビジネス数学」の専門家になるまでには、どういった経緯だったのでしょうか?

深沢:

独立にあたって、色々な事を考えました。過去の自分のして来たこと、経験、好きなこと、を振り返り、どんなビジネスをしていこうか、と。

その時、以前、数学の塾の先生をしてきたこと、アパレル企業を中心に販売やマーケティング、新規事業開発、最後はマネジメントといろいろ経験してきたこと、これらが頭に思い浮かびました。

そして、それらを踏まえて、次の3つの視点で分析を行いました。

  1. 自分の強み分析…数学の教師✕ビジネスで数字を扱ってきた経験から、ビジネスに付いてまわる「数字」を自分は教えることができる
  2. 市場ニーズ分析…会計や財務、マーケティング部門などでは「数字」を多く扱っているが、他の多くのビジネスマンは「数字」が苦手である
  3. 競合分析…世の中を見渡して、競合となる「ビジネス数学」を扱っているコンサルタントはいない

そうして、「自分はビジネス数学の世界で第一人者になる!」と決めました。

独立コンサルタントは、より感謝される仕事を提供できるステージ

Q:独立ではなく、転職する、サラリーマンを続けるという選択肢もあったと思います。

深沢:

この時は、サラリーマンに戻ることは一切考えませんでした。なぜならば、サラリーマン時代には「感謝される仕事をした記憶がなかった」からです。「今度こそ、感謝される仕事がしたい!」という想いが、独立への路を決意させました。

Q:感謝される仕事がしたいという想いが独立の原動力だったのですね。感謝される仕事とは深沢さんにとって、何でしょうか?

深沢:

感謝される仕事とは、自分が得意な事、好きな事で何かの専門家になること。専門家になれば、困っている人にダイレクトにお手伝いできます。

そして、「ビジネス数学で、グローバル時代に通用するビジネスマンを増やす」

これをミッションとして掲げました。

Q:よく、独立や起業ではメンターを持つべき、と言われます。
相談したり教えてもらうようなメンターのような方はいたのでしょうか?

深沢:

メンターはいました。いた、というより積極的にメンターを設定しました。「感謝される仕事を」という信念は、私の師匠の提唱するキーワードでもありました。自分が専門家となるにあたり、各分野におけるメンターを分野ごとに1名絞って、その方々だけを忠実にお手本としていきました。

Q:なるほど、よく分かります。
世の中には、多種多様な成功法則があり、先人・先輩たちが色々な場面で提唱されています。
私も講師・コンサルタントに囲まれた世界にいるためか、正直、過剰な程の成功法則に囲まれていました。
ただ、多ければいいというものではなく、彼らのご意見の中には、正反対の意見・案もあり、そのために迷ったり、ブレたりすることがあります。
その点、深沢さんは、各分野に師匠(メンター)を1人に絞ったということですね。

深沢:

ブレずに信じるものを追求する。これが良かったと思います。

Q:印象に残っているアドバイスなどありますか?

深沢:

印象的に残っているアドバイスは、メンターの1人から、「Give&Takeではダメだ。Give&Give&Giveぐらいでないとだめだ」といわれたことですね。実は、この考え方は各分野のメンター達、皆が口を揃えて提唱する共通のキーワードでした。何かに困っている人を助けること、これこそが商売の基本だ、と。

「傷ついた経験」こそが、課題を解決するコンサルタントには必要!

Q:それでは、「Give&Give&Give」を実践してきたわけですね?

深沢:

独立当初は、この「Give&Give&Give」が徹底できていませんでした。それどころか、「ビジネス数学」を企業やキーパーソンに売り込んでしまっていました(笑)。それでは全く売れませんでしたね。それどころか興味関心さえ示してくれませんでした。

Q:それで気が付いたと。

深沢:

こりゃダメだ、と気づきました。今思えば、とても痛い話でしたが、良い経験でした。

Q:どのように行動が変わったのでしょうか?

深沢:

「相手の困っていることは何か?」を大事にして、お客様に会って話を聞くようにしました。自分の売りたいものは後回しにして、「お困り事は何ですか?」これを会話の中心に据えました。そしてお客様だけでなく、知人友人にも同じように接することにしました。すなわち「For You」の徹底です。

「仕事とは、その人が好きだから頼むもの。

逆に考えれば、困り事を解決してあげていれば、結果的にその人に好かれることになる」という考え方に落ち着いてから、ブレなくなりましたね。

Q:For Youに大きく行動変革をしたのですね。

深沢:

そうです。この「For you」の精神は、何かしら傷ついた経験や失敗体験があるからこそ持つことができます。私はサラリーマン時代にたくさん失敗を経験しましたし、いろんな要因があったとはいえ、最後は職を辞する(つまり失敗)ことになったわけです。でも、その失敗経験が、困りごとや悩みを抱えた企業や人の痛みが分かる重要なポイントになります。

自分中心のコンサルティング・教育ではなく相手目線でのサービスが提供できる最大の秘訣はまさにここ。だから、私はFor Meのビジネス数学の売り込みから、For Youの相手の問題解決を図ることに、自身のスタンスを転換することができました。

コンサルタントはいわば「先生」です。だからこそ、どうしても自分のコンテンツを「正」と思い込み、上から目線で相手に接してしまいがちですが、これは絶対にしてはいけません。

コンサルタントとして、発信していくことは?

Q:現在、具体的にはどうやって仕事を獲得しているのですか?

深沢:

一つ決めた事があるんです。営業は自分ではしない。それよりも、そういった方々と繋がること、探すことだけをしました。

Q:ここでもやはり、お困り事の解決、というスタンスを貫いているのですね。

深沢:

売り込んで頂く仕事ではない、という事が骨身に染みていました。

Q:では営業につながるようなことは何か他にしていましたか?

深沢:

その他にしたことと言えば、ブログで発信し続けた事だけです(笑)。実は、これが大事なのですが、そこで発信した情報は、何が特徴か、ソリューションは何か、ということではなく、「自分がどんな人なのか」「どんな事に関心があるのか」を中心に発信しました。

Q:ソリューションなどを発信した方が直接営業につながりそうですが、どうしてでしょうか?

深沢:

「誰がどんな想いで仕事しているか」こそが、コンサルティングなどを発注する意思決定権者が大事にしていることだからです。

まさに、「Do」より「Be」、ビジョンやミッションを語るのです。

《後記》

「自分中心でなく、相手のお困り事を」という考え方、そして「困っている人を見て、自分が昔傷ついていた経験を思い出せる」こういった、人と人の基本的な関係性が、コンサルティングの源泉かもしれません。

いくらソリューションやノウハウ、知識知恵があっても、この基本的なスタンスこそが、コンサルタントを目指すにあたり、不可欠のように思います。

【専門家】深沢真太郎
ビジネス数学の専門家/教育コンサルタント
公益財団法人日本数学検定協会「ビジネス数学検定」国内初の1級AAA認定者。
BMコンサルティング株式会社代表取締役/理学修士(数学)/多摩大学非常勤講師
ビジネスパーソンの数字力と思考力を鍛える「ビジネス数学」を提唱し人財育成に従事。
「数字が苦手な人をゼロに」を使命とし、これまで延べ5,000人を指導。企業研修などを通じて苦手意識を持つビジネスパーソンを劇的に変えている。
主な著書にベストセラーとなった『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など多数。
★ビジネス数学.com 深沢真太郎オフィシャルウェブサイト
http://www.business-mathematics.com
【専門家】原 佳弘
Brew(株) 代表取締役  セミナー/研修プロデューサー
1973年生まれ。中小企業診断士。
横浜市立大学卒業後、建設市場のシンクタンクにて経営企画を担当。その後、法人向けセミナー・企業研修を行う会社へ転職。
階層別研修から営業、マーケティングなど専門領域の研修設計、セミナー企画実施を10年以上行う。
 
2014年、Brew(株)設立。300人以上の講師・コンサルタントネットワークから「最適講師の提案」、顧客の課題解決につながる研修やコンサルティングを「ゼロから設計」して提供している。
東洋経済オンライン、ハーバービジネスオンラインなどでも執筆。

著書には、「研修・セミナー講師が企業・研修会社から”選ばれる力”」(同文館出版)がある。
ノマドジャーナル編集部
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