本連載は、企業会計の初心者の方や企業会計が苦手な方向けの、専門用語の知識不要の企業会計入門です。第4回は、限界費用についてです。ポケモンGOが爆発的にユーザ数を増やすことを可能にした理由とは何か?企業会計の視点で見ると、ゲームアプリには限界費用が存在しないという特性があるからと言えます。今回は、ゲームアプリを題材として、限界費用を解説します。

前編では、限界費用について、ソフトウェアは限界費用がないので「規模の経済」を発揮しやすいという点について取り上げました。後編では、ポケモンGOについて、そのビジネスモデルを解説します。

■ポケモンGOが爆発的にユーザ数を増やすことができた要因

インターネットやスマートフォンが企業や個人に関係なく世界中に普及している昨今にあっては、ユーザは、いつでもどこでもソフトウェア(アプリ)をダウンロード可能となっています。よって、ソフトウェアを供給する側の企業は、極めて短時間かつ地理的制約なしにソフトウェアを市場投入することが可能なのです。

ダウンロードによりソフトウェアを供給することになるので、需要予測による生産量を確保する必要はなく、在庫という概念が存在しないので、供給可能な量に上限が実質的にないことになります。さらに、インターネットやスマートフォンを使用するコストは、ユーザが負担しているので、ソフトウェアを供給する側の企業にとっては、効率良く流通にかかるコストをユーザに転嫁していると言えるのです。

整理するとポイントは、下記の3点となります。
・限界費用がゼロであること
・在庫という概念が存在しないこと
・流通にかかるコストの負担がないこと

企業会計の視点から見た場合、ポケモンGOが爆発的にユーザ数を増やすことができた要因として、極めて効率的に供給可能なことが指摘できるのです。

■ポケモンGOのビジネスモデル:フリーミアム

ポケモンGOは、基本的にはフリー(無料)で遊ぶことができ、ゲーム内のアイテムをプレミアム(有料)として課金しています。ポケモンGOは、アイテムを売ることでキャッシュを稼いでいるのです。かつてのゲームアプリは、アプリ本体に課金するものでしたが、最近ではアプリ本体をフリーとし、ユーザが必要に応じて、アイテムを有料で購入することが主流となっています。ポケモンGOでは、ゲームのお役立ちアイテムをゲーム内で購入できる「ポケコイン」を使って手に入れることができます。

このようなビジネスモデルのことをフリーミアムと言います。フリーでソフトウェアを普及させて、プレミアムなアイテムや機能で稼ぐのです。ゲームアプリに限らず、流通しているモバイルアプリの実に約8割がフリーミアムで稼いでおり、モバイルの世界では主流となっています。

フリーミアムは、プレミアム(有料)利用者をいかに獲得するかがキーポイント

どのようなビジネスモデルでも、営業活動の前段に必要なリソースを手に入れ、事業活動のプロセスを経て価値を生み出して、価値を顧客に提供することにより対価を得ています。

ゲームアプリを開発するにあたっては、人財の確保、作業環境の整備が必要となります。また、開発したゲームアプリがゲームとしての機能を満たしており、プログラムにバグ(欠陥)がなければ良いのではないのです。大量アクセスがあっても快適にゲームを楽しめるようなサーバーやネットワークの構築、不正アクセスや情報漏洩を防ぐ手立ても必要です。そこには、高度なノウハウや技術、時間が必要であり、多額のコストが必要となります。これらは、ゲームアプリをリリースするまでの先行投資であり、先行投資をしたキャッシュを回収できないことには、成功したとは言えないのは言わずもがなです。

フリーミアムは、プレミアム(有料)に位置付けているアイテムや機能の利用者をいかに獲得するかがキーポイントとなります。プレミアムの利用者の割合は全利用者の2%~5%が最も多いとの調査結果があります。フリーミアムは、フリー(無料)による利用者をより多く獲得することが成功における必要条件となるので、限界費用がなく、インターネットで供給が可能なソフトウェアに向いているビジネスモデルと言えます。

参考サイト:【App Annie・IDC調査】フリーミアムモデルの課金者の割合は2~5%が最多
http://gamebiz.jp/?p=128622

専門家:中野真志
明治大学卒業。中小企業診断士、社会保険労務士、宅地建物取引士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士。
東京都中小企業診断士協会 城北支部所属、ビジネスイノベーションハブ株式会社 取締役、シュー・ツリー・コンサルティング パートナー、イー・マネージ・コンサルティング協同組合 組合員、日本マーケティング学会会員、人を大切にする経営学会会員。
活動分野はIT、ビジネスモデル、デザイン思考、地域活性化。
大手システム会社を6年間勤務した後、独立してフリーランスで活動、数多くのプロジェクトに参画。ITを有効活用した中小企業の経営革新を実現するために、ビジネスモデルの研究やコンサルタント、執筆、セミナー企画、セミナー講師などの活動を行う。地域誘客プロジェクト立ち上げや商店街支援など、地域に根ざした活動もしている。 主な執筆、小さな会社を「企業化」する戦略(共著)、新事業で経営を変える!(共著)、「地方創生」でまちは活性化する(共著)、地方創生とエネルギーミックス(共著)。

ノマドジャーナル編集部
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