ビーエムウィン(水野与志朗事務所株式会社)代表取締役社長 「水野 与志朗」さんに聞く

数多くの講師・コンサルタントをみてきた、研修・セミナープロデューサーの原 佳弘氏による「選ばれるコンサルタント」連載。

今回のリアルトークに登場していただくのは「ブランド・コンサルタント」ビーエムウィンの水野 与志朗さん。数々の国内・外資系での、ブランド・マネージャーの実績を積まれた後、ひょんな御縁から独立され、15年近く「ブランド・コンサルタント」としてご活躍されています。

独立されて既に10年以上たち、ブランド・マーケティングの世界では著名となった水野さん。どんなヒストリー、想いで独立(ノマド)コンサルタントになっていったのでしょうか。

「学校を卒業して、そのままコンサルタントになるのはやめなさい!」と言われた新卒時代。その真意とは!?

Q:そもそもコンサルタントを目指された経緯・キッカケは何だったのでしょう

水野 与志朗氏(以下、水野)

大学生の頃、なんとなくですが、コンサルタントにあこがれていました。特に強い理由はありませんでした。なんとなくです。就職活動も、外資・国内系とコンサルティング会社を沢山受けていました。
ちょうどその頃、この世界で有名なとあるコンサルタントの方をご紹介いただきました。就職活動の参考になるだろうというキッカケです。その方は、パナソニック(旧松下電器産業)ご出身でニューヨークでご活躍のコンサルタントでした。その方にお会いして、「コンサルタントになりたいのです」と率直にご相談したのですが、衝撃的な言葉を浴びせられました。

「コンサルタントを目指すのは立派だが、学校を出てすぐにコンサル会社に就職するのは、やめなさい。クライアントのなかには30年かけて一代で100億円の企業を作った経営者もいる。そんなひとを相手に、昨日大学を出たばかりのような若者がコンサルティングを行うなど、おこがましいと思いませんか?」「ちゃんと事業会社で実績を積んでからコンサルタントになりなさい

コンサルタントになりたいと思っていた私には衝撃的な言葉でした。しかし、仰っていることは、すんなりと頭に入ってきたことを覚えています。

コンサルタントになる前に、事業会社で経験しておくべきこととは?

Q:仰ってくださった事が当然だ!と感じられたのですね。

水野

その方は、更にありがたいことに貴重なアドバイスをくださいました。今後は、こうした点に注意して、自分を磨いていけば、いずれコンサルタントになれるよ、という内容でした。

① 事業観を身につける:会社には理屈を超えたしがらみや独特の力学がある。様々な人がいて組織が成り立っていて、ビジネスがどう回っているのかを肌で感じ理解すること。

② マーケティングを身につける:教科書で学んだマーケティングではなく、実際にモノを売った経験。できれば大量に売った経験を積むこと。

③ 英語を身につける:今後日本はもっとグローバルになる。英語が出来ないことで本当は積めるはずのキャリアを逃さないために英語は必ず習得すること。

この3つを、事業会社に行って経験しなさい、鍛錬しなさい、と仰って下さったのです。

Q:そのアドバイスのおかげで、キャリアのスタートは事業会社に行かれたのですね

水野

はい、色々マーケティングを経験させてくれそうな会社を受けました。ご縁がありまして、味の素ゼネラルフーヅ(AGF)さんに入社することが出来ました。この会社が、今思えば、鍛えられるにあたりとても良い会社でした。マーケティングで有名な会社でしたし、会社の規模も1,000人という、大きすぎて個人が埋もれてしまうことなく、小さすぎて仕事のダイナミズムが損なわれることもない、ちょうどよいサイズでした。そして味の素とクラフトフーズのジョイントベンチャーだったので、英語を仕事で使う機会があった。
まさに、先輩が仰っていたことが仕事を通じて、学べる環境でした。

Q:これは、コンサルタントになった際にも実用的だ、と思いながら仕事をされていたのですか?

水野

いえ、それが、仕事にのめり込んでしまい、コンサルタントになることをすっかり忘れていたのです(笑)。特に、マーケティングにのめり込んでしまいました。マーケティングは、世の中に大きなインパクトを出せる、そして色々な人を巻き込んで1つの目的を追っていく。失敗も沢山経験しましたが、少しの成功を味わうと、これにはシビれました。余談ですが、良い意味で、私には「マーケティングとは、売上利益を目的としたバカ騒ぎ」でした。
その延長で、AGFを辞めた後も、外資系数社で、ブランド・マネージャーやディレクターを経験しました。やがてコンサルタントのことなど忘れてしまって、いずれは外資系の日本支社長になりたい!なんて思っていました。

「ブランド・マネージャー」出版を機にコンサルタントへ

Q:マーケティングを事業として実践する側に集中していたのですね、それがまたなぜ、コンサルタントへの転機が?

水野

たまたまなのですが、20世紀の終わり2000年の年末に、「これまでやってきたことをまとめてみよう!」と急に思い立ったのです。本を出版するとか、独立のためなど目的も意図もなくです。それが書き出したら、止まらない。今度は、本を書くことにのめりこみました。すると、なんとか初めての原稿のようなものがまとまったので、たまたまオフィスの目の前にあった出版社に持ち込んでみたのです。こんな経験初めてですから、もちろんドキドキしながらです。すると1週間後にその出版社から連絡が来まして、出版しましょう!となったのです。「ブランド・マネージャー」というタイトルでした。

そして出版後は、本を読まれた方から、ふらりと連絡が来る。会社の仕事とは別に、困っている方・会社のお手伝いをしていました。二足のわらじですね、1年ぐらい続けていました。当時は、「あ!これがコンサルタントなのかな」と感じて、喜んでやっていましたが、本業との両立は時間的には大変でした。

2013年に出版した「たった1年で”紹介が紹介を生む”コンサルタントになる法」(左)と2015年に出版した「5年以内にコンサルタントで独立して成功する法」(右)どちらもコンサルタントを目指す人にとって必読の一冊です

Q:読者の依頼が舞い込むうちに、副業でコンサルタントになってしまった!というのがスタートなのですね。

水野

そうです、そして1年後には、副業の収入が本業を超えたので、これは本格的にコンサルタントで勝負してみよう、と独立しました。

まずは「人に教えること」からスタートしてみてはどうか?

Q:独立されてからの経緯は順調だったのでしょうか

水野

はい、そうですね、独立してからはある程度順調にお仕事を頂戴しておりました。しかし、「東日本大震災」の時は私も大変苦労を味わいました。あの頃は、長年続いていた仕事でさえも中止、新規の大きな仕事もほぼ全てストップしました。今でも、あの頃の不安はよく覚えています。今では、おかげ様で震災前以上に回復しましたが、あの頃は、本当に目の前が真っ暗になりました。

Q:最後に、これから独立コンサルタントを目指す方へメッセージを

水野

そうですね、「まだ独立されていない方」と「既に独立して始めている方」向けに、それぞれ違うメッセージをお送りしたいと思います。

「まだ独立されていない方」には、「最初の一歩として、人に何か教えるコト」から始めてみる、という事をオススメします。社内の勉強会でも、趣味の発表会でもいいんです。それが、段々違う場所、呼ばれて教える場所、とステージが広く・大きくなっていきます。そうすると、面白いことが起こる。お客さんが勝手に仕事を運んできてくださるのです。「ここを直した方がいい」とか「知人を紹介するよ」と、改善や集客・紹介につながっていきました。ですので、小さなステージでも良いので、まずは人に何か教える事から始めることをお薦めいたします。

「既に独立して始めている方」には、こんなメッセージを。「お客さんを増やすことに注力するより、目の前の1社、大事なお客様にトコトン向き合うこと」これを絶対に大事にした方がいい。1社しかお客様がいないと不安でしょう、来月は、この先は、と不安になるのもよく分かります。
しかしコンサルティングの仕事は、ご縁なんです。集客するものではなく、ご紹介などのご縁によるものが大半です。お医者様と一緒です。目の前で血を流している患者さんをしっかり止血して、気持ちも励ます。それが出来ないまま、新たな患者を探しに行く医者をどう思いますか。それと一緒です。
ホームページを!ネット広告を!ということも大事ですが、それより目の前のお客様を。これが私が一番、10年以上経験してきてお伝えしたいことです。

【専門家】水野与志朗(みずのよしろう)
ビーエムウィン代表取締役社長/ブランド経営コンサルタント
(財)ブランド・マネージャー認定協会理事
1968年生まれ。学習院大学経済学部 卒業。経営者、経営コンサルタント、講演家、著述家。大学卒業後、味の素ゼネラルフーヅ(株)、マキシアム・ジャパン(株)、ハーシージャパン(株)などで、ブランド・マネージャー、などを歴任。34歳の時、独立。
これまで、味の素、サッポロビール、サンスター、ブリヂストンスポーツ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ソフトバンク・ヒューマンキャピタルなど、大手企業を中心に200社以上のコンサルティング・プロジェクトに関わる。2010年には(財)ブランド・マネージャー認定協会の理事に就任。
著書、「ブランド・マネージャー(経済界)」は、まだブランディングという言葉すら存在しなかった頃の先駆的な書籍と評価されており、以来、大手消費財企業で新人マーケターの教科書になっている。

【専門家】原 佳弘
Brew(株) 代表取締役  セミナー/研修プロデューサー
1973年生まれ。中小企業診断士。
横浜市立大学卒業後、建設市場のシンクタンクにて経営企画を担当。その後、法人向けセミナー・企業研修を行う会社へ転職。
階層別研修から営業、マーケティングなど専門領域の研修設計、セミナー企画実施を10年以上行う。
 
2014年、Brew(株)設立。300人以上の講師・コンサルタントネットワークから「最適講師の提案」、顧客の課題解決につながる研修やコンサルティングを「ゼロから設計」して提供している。
東洋経済オンライン、ハーバービジネスオンラインなどでも執筆。

著書には、「研修・セミナー講師が企業・研修会社から”選ばれる力”」(同文館出版)がある。
ノマドジャーナル編集部
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