歴代3人の社長により、約7年間に渡って続いていた東芝の不正会計。日本を代表するような電機メーカーの不祥事に、衝撃を受けた方も多いかと思います。

このように、たびたび世間を賑わしている不正会計ですが、2015年度の上場企業における不適切会計は、58件と過去最高を更新しており(※)、対岸の火事として傍観しているわけにはいかない状況であるといえます。

※単純な誤りも含めた件数(東京商工リサーチ調べ 2015年度「不適切な会計・経理を開示した上場企業」調査 http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20160414_01.html

不正会計についての知識や、決算書でチェックすべきポイントなどをしっかりと理解し、自社で不正会計が起こるのを防ぐ手立てを考えてみましょう。

単なる間違いは「不適切会計」、意図的に操作した場合は「不正会計」

Q:近年、不正会計が話題になっていますが、どのような会計処理が不正と判断されるのでしょうか。

A:不正会計の手法は多岐にわたりますが、売上の前倒しと費用の繰延が事例として多いです。

近年、名門企業と言われている会社でも不正会計の事例が生じています。企業間の競争が激しくなり、経営者は投資家から業績成果を求められます。このようなプレッシャーや経営環境の厳しさから逃れるために、好業績が演出できてしまう不正会計が後を絶たないようです。

実は会計上、誤りには2種類あると考えられます。「誤謬」と「不正」です。どちらも会計上の誤りですが、意図的であるか否かが異なります。

種類 内容 主な例
  誤謬   決算書の誤りではあるが、意図的ではない誤り   会計処理の適用誤り、事実の見落とし・勘違い
  不正   経営者、従業員または第三者による意図的な行為に基づく決算書の誤り   資産の流用、証憑(しょうひょう)の偽造・改ざん、取引の隠ぺい

誤謬は実務上、自社内での点検や、公認会計士(監査法人)監査の過程で分かることが多く、大きな問題とはなりません。
一方で不正の場合は、経営者など会社側が意図的に決算書を不正に作っていることから、社内はスルーされてしまいますし、公認会計士監査でも発見するのがなかなか難しいです。また多くの場合、一度不正な会計処理をすると、辻褄を合せるために不正な会計処理や決算を継続し、結果として不正による損失が巨額なものとなってしまいます。

なお、近年「不適切会計」という言葉が紙面を飾りました。こちらは「意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又は誤用したことによる誤り」と定義されます。

そのため、決算書に間違いがあった場合であっても、それが「意図的であるか否か」が不明な段階では「不適切会計」と称し、意図的であったことが判明した後は「不正会計」と呼ばれます。

利益は操作できるという誤った考え方が、不正を生む温床になる

Q:不正会計には、どのような方法があるのでしょうか。

A:手法はたくさんありますが、主たる手法は以下のようなものです。

勘定科目 主な内容
売掛金  滞留売掛金の隠ぺい
在庫  過大評価や架空在庫
固定資産  過大評価(減損未適用)
架空貸付金  前倒計上や架空売上、循環取引
売上原価  費用の繰延

不正会計の主たる狙いとしては業績を良く見せるためですので、
・売上を増やす
・費用を減らす

上記の二方向にインセンティブが働く会計処理を不正に働きかけます。例えば、実態のない売上を作ったり、費用を繰り延べて損失の先送りをしたりすることが該当します。

不正を働いた者からすると「いつかは帳尻が合う」という思いがあるかもしれませんが会計は一定期間ごとに報告・説明する責任がありますので「今期だけは不正をしても大丈夫だろう、、、」という身勝手な理屈は通用しません。
次回以降は、具体的な不正会計処理について見ていきたいと思います。

専門家:江黒崇史
大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。
ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。