永井順也専務取締役。小豆島オリーブ園の看板前にて

 

小豆島(しょうどしま)は瀬戸内海に浮かぶ離島。人口約29000人、面積約150k㎡。瀬戸内海では淡路島に次いで2番目の大きさだ。オリーブ・醤油・そうめん・佃煮・ごま油などの生産が盛んで日本有数の名産地となっているほか、小説「二十四の瞳」の島としても知られる。近年、若者・子育て世代を中心に移住者が増加。瀬戸内国際芸術祭が開催されたり、小豆島高校野球部が甲子園出場を果たしたりと明るいニュースが多い。
首都圏への人口・商業施設の集中から脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、人気のある離島ではどのような地域づくりが行われているのだろうか?そこで、小豆島へ5年前に移住した筆者が、小豆島で活躍する企業・事業・人について取材・発信していく。

 

第1回は、日本のオリーブ発祥の地の「小豆島」で、日本最古の産業用オリーブ農園である「小豆島オリーブ園」専務取締役・永井順也氏にインタビューを行いました。前編では、オリーブに付加価値をつける新しい取り組みについてお伺いしました。

小豆島のオリーブの森を、次の100年に繋げるために

Q:現在の事業内容を教えてください。

オリーブの良さを日本に住んでいる方々や観光で小豆島に来られた方々に発信しながら、オリーブ製品を広めていくのが事業内容です。
オリーブの森を次世代につなげていくことが使命だと思っています。2019年に創業100周年を迎えますが、売上を上げていく事が目標ではなく森を次の100年に向けて存続させていくために、オリーブ観光農園としての商売を成立させる事を考えて事業を行っています。

 

Q:新しい試みを次々とされていますね。

「オリーブ」が事業の中心にある事は変わらないのですが、今は「年数が経ったオリーブがあるよ」というだけではお客様にお越しいただけないので、売店やお手洗いなどの施設を充実させたり(同園では、最先端のレジシステムや赤ちゃんからお年寄りまで使用できるバリアフリートイレを設置)それ以外の魅力、そこに行かないと経験できない付加価値をつけていかないといけないと考えています。

 

立ち寄った時に、「こういう事ができてすごく楽しかった」など印象が良ければ、そこで作っている商品の印象も良くなり、買って帰って、おみやげであげたり自分で使ったりいただいた後に、それが良ければ通信販売事業にも結び付く。だから、オリーブにどんな付加価値をつけるのかという事が大切になってきます。

毎年秋ごろに収穫されるオリーブ。国内産は非常に希少だ。

 オリーブを五感で楽しんでもらうためのテーマパークをつくりたい

Q:オリーブ農園でありながらも、アートとの融合をされるきっかけは?

次の世代につなげるための新たな仕掛けをしたいと思っていた時に、香川県がアート観光県として売り出しを始めました。この流れに乗るのも1つの手だと思い、施設のリニューアルを進めながら、イサム・ノグチというエッセンスを加えていきました。これに関しては色々な人と話しながら出てきたアイデアでもあるし、自分が「オリーブの丘」というのを意味のある場所にしたいと考えて探して見つけたものでもあります。

 

スパイラルスライドという大きな滑り台をシンボルチックに扱って設置したらどうかと思い、2012年10月、オリーブの丘に世界的に有名な彫刻家イサム・ノグチの遊具彫刻を完成させました。2014年11月には、イサム・ノグチの作品の幅広さという観点から照明器具や家具などをコレクションした珠玉のミュージアム「ARTETRA(アルテトラ)」をオープン。さらに今年2016年4月のレストランリニューアルに伴い、体験スペース「LaboleA(ラボレア)」を作り、世界で一つのオリジナルオリーブオイルをつくれる体験「オリーブオイルブレンド体験」を始めました。

 

オリーブの丘に設置された、イサム・ノグチの遊具彫刻

イサム・ノグチの照明や家具などを配置したミュージアム「ARTETRA(アルテトラ)」

Q:LaboleA(ラボレア)内ではどんな体験ができるのですか?

世界各国のオリーブオイルをテイスティングしていただき、オリーブオイルの幅広さを実感していただきます。その後自分の好みのオリーブオイルをブレンドしていただき、世界で一つのオリジナルオリーブオイルを作成します。これは昨年従業員から提案があったプランになりますが、「確かに面白い、でもどうやってやろうか?」という中で、余剰スペースがなかったので、レストランのリニュアルをする計画に埋め込んでしまおうと。将来的には、LaboleA(ラボレア)内で、何種類かの体験プログラムを作れたらいいなと思っています。旅行会社からの問い合わせも多く、実際に体験されたお客様からはとても好評いただいております。

 

世界でひとつだけのオリーブオイルをブレンドすることができる。

 

レストランをはじめ園内のいたる所から、瀬戸内海を眺める事ができる。

 

(後編へ続く)

専門家:城石 果純

早稲田大学人間科学部卒業後、株式会社リクルートに入社。
入社2年目に第1子を出産した事で、時間あたり生産性の概念に興味を持つ。
第2子出産時に小豆島に移住。それ以後、時間と場所に制約を抱えながら
MVP・通期表彰などの事業表彰を獲得し続けた事で、
リクルートグループがリモートワークに取り組むきっかけを作った。
現在は、「地域と組織のサポーター」としてフリーランスで活動。小豆島在住の3児の母。
地域の良いものを掘り起こしてコーディネートする事と「ひとのチカラ」を活かす事を大切にしている。