2014年11月にオープンしたミュージアム「ARTETRA(アルテトラ)」

 

小豆島(しょうどしま)は瀬戸内海に浮かぶ離島。人口約29000人、面積約150k㎡。瀬戸内海では淡路島に次いで2番目の大きさだ。オリーブ・醤油・そうめん・佃煮・ごま油などの生産が盛んで日本有数の名産地となっているほか、小説「二十四の瞳」の島としても知られる。近年、若者・子育て世代を中心に移住者が増加。瀬戸内国際芸術祭が開催されたり、小豆島高校野球部が甲子園出場を果たしたりと明るいニュースが多い。
首都圏への人口・商業施設の集中から脱却を図る「地方創生」が叫ばれる中、人気のある離島ではどのような地域づくりが行われているのだろうか?そこで、小豆島へ5年前に移住した筆者が、小豆島で活躍する企業・事業・人について取材・発信していく。

 

第1回は、日本のオリーブ発祥の地の「小豆島」で、日本最古の産業用オリーブ農園である「小豆島オリーブ園」専務取締役・永井順也氏にインタビューを行いました。後編では、アートとの融合、オリーブのブランド化など、さらなる新しい挑戦と小豆島への地域活性化に繋がる取り組みについてお話をお聞きしました。

ブランドイメージを統一することで、売上アップを実現

Q:3年後の小豆島オリーブ園開園100周年に向けての取り組みは?

ここ数年でハード面はある程度整えたので、次の1~2年では中身のソフト面を変えていきます。これから先の100年オリーブ農園を残していくために、どのようにやっていくのかという事を小豆島オリーブ園の強み・弱み含め、社内で検討しました。企業コンセプト・ブランド・製品を整理し、「オリーブと生きる」という理念、「五感で感じるオリーブ園」というコンセプト、「民間企業では日本最初のオリーブ園として、原木を有するオリーブの森を健康な姿で次の100年へと継承していくこと」という企業使命、「国内産オリーブのパイオニアとして、常に日々研究と開発にはげみながら、日本人にとってオリーブと暮らす豊かな生活を提唱しオリーブ業界の発展に努めること」という経営目標を設定しました。
同時にデザインガイドラインも作成し、カラーやロゴの使い方などを冊子にまとめ、広告媒体の方向けにビジュアル化しました。これをベースにホームページ・パッケージ・広告を展開し、これに沿う形で展開していきます。今後はより統一された明確なメッセージを、お客様に伝えることが出来ればと思っています。

ブランドバイブルやデザインガイドラインをもとにしたパンフレット

 

Q:取り組みの背景にはどのような事があったのでしょうか?

自分が入社した当時は、3年先も不安になるような状態で、計画的に物事を進めて行くには難しい状況でした。10年後も商売を存続させていくためにイメージを一新させる必要があると思い、店舗カラーを「オレンジ」に設定し紙袋や製品パッケージを変更する事から始めました。様々なリニューアルや営業努力によって徐々に売上も伸びてきたため、近年では売店やレストランなどの費用のかかるリニューアルも可能になりました。
そしてこの100周年の節目を迎えるにあたり、従業員一人一人の意識向上や会社としての方向性を明確にすることの重要性を感じたためブランドバイブルの作成に取り掛かりました。自分一人のアイデアでは限界があったり偏ったりしてしまう可能性があるので、この取り組みにおいては多くの従業員の意見を取り入れています。その中の一つが、今回実現したオリーブオイルのブレンド体験です。

 

オリーブの小道では、木々の間からこぼれ落ちる日差しを浴びながら散策することができる。

小豆島の住民が一体となることで、観光業が大きく育つ

Q:小豆島の活性化に関する課題は?

小豆島という島自体が、観光を伸ばしていかないとこの先30年生きていけないだろうという危機感がすごくあります。観光という事で考えると、オリーブも重要な素材ではあるものの、オリーブ単体では弱い気がしていて、色々な素材がたくさんある事が小豆島の魅力につながっています。その魅力をどれだけお客様にわかりやすく伝えてこちらに来てもらうか。
小豆島にどんどんお客様を呼び込んで交流人口を増やす事で、観光として小豆島の産業を成り立たせていかないと、小豆島全体的に萎んでいってしまいます。観光客の数が増えていくと私達のような立ち寄り施設やフェリーやホテルあたりにお金が落ちるのはもちろんですが、結果的にそこで売られている素麺や醤油や佃煮など、観光客が来る事によって、そこで買い物をしていただいて商品が動いていく。ホテルで食材が使われる事で、別の企業の潤いにもつながっている。そこを今後伸ばしていかない事には、小豆島の先行きはかなり怪しいものになるでしょう。
その危機感が、小豆島の中で共有されていない。観光を中心にとらえて一生懸命やっている方もいれば、観光は関係ないと考えて割り切ってやっている方もいると思います。そのあたりの危機感の共有ができればと思います。

 

Q:その「危機感」について、具体的に教えてください。

何をするにしても、外から見ると小豆島は小豆島。土庄(とのしょう)町も小豆島町もないんです。やっている仕事に関しても「小豆島」というキーワードになって売れて、小豆島のイメージにつながっている。
でも、住んでいる町や地区ごとに縛られている考え方や行動がたくさんあります。小豆島は本当は1つでいいけれど、1つにできない。住んでいる人達が小豆島はひとつでないとやっていけないという意識を持っていない。島の中で争っている場合ではないという危機感を持てていない。この先、どんどん若手の働く人が減り労働人口が減る中で、平均年齢だけが上がっていく。そうなったときに、小豆島が小豆島としてやっていけないようになってしまう。
小豆島という場所が観光地として、すごくいいものを持っているのは皆わかっているんです。住んでみてわかる良さもあるが、観光としてお越しいただいた中でも、その良さを充分実感していただけると思っています。それを感じていただくためには、地元の人とのふれあいだったり、ちょっとした会話だったりが大事になってくると思います。そこの住民と、前向きな話ができるようになってほしいと思います。

香川県への観光客を増やす取り組みが、予算の獲得と小豆島への観光客の増加に繋がる

Q:地域での活動はどのような事をされていますか?

小豆島観光を考える「新風会」という団体の会長をして5年目になります。本当は4年目の任期が終わったあと、若い人に譲りたかったんですが。若い人がやりたいように、思っている通りにやれるようにしたいのですが、上の世代の人の名前が入ってくるとそちらに任せてしまう。トップを若い人にして、周りもその人がやりやすいようにメンツを揃えて、今までと違う事でもやってもらえるようにしたいですね。
「新風会」という名前なのだから40~50代の人たちがやるのではなく、若い人がやりたいようにやってもらって、足りない部分をベテランがサポートしていくという形を作りたいと思っています。「新風会」として、自分が会長に就任した5年前から大阪・東京での説明会を行っています。今年は東京から旅行会社の担当者を小豆島に呼んで、実際に島の良さを見てもらっています。

 

Q:今後どのような事をしていきたいですか?

小豆島という立場で見れば、小豆島単独でも色々難しくなってきている部分はある。例えば町から予算が出ないと何かができないとなると続けていけない。メディア系の旅行会社の収益は厳しいし、小豆島としてPRのために用意できる費用も限られている。なので、香川県として、琴平や直島など他の地域と一体になってやっていきたいと思っています。香川県はインバウンドに対しての補助金は空港利用も含めて注力しているものの、旅行の多くを占めている国内旅行に対しての補助金枠が少ない。
県に働きかけて仕組みを作っていかない事には、商品数も少なくなってしまう。今後、道後温泉の改装が実現すると四国へのツアーの絶対数が明らかに減る。四国の中の道後というウェイトはとても大きい。県として予算をつけながら、香川県に来てもらう人を増やしていく取り組みを小豆島として増やしていきたいです。

 

小豆島オリーブ園としては、ハード面に関してはある程度整備が出来てきています。今後は従業員も含めたソフト面の充実を図っていきたいと思っています。古いものやこれまでの歴史のあるものを大切にしながら、道具については最新のものを導入し利便性を高めています。例として、売店のレジについては導入から1年半以上たちますがいまだに都会から来た方が「初めて見た」とおっしゃいます。正直当園のような売店には最適なレジシステムではないかもしれませんが、目新しい道具を取り入れながらオリーブ園らしくやっていきたいと思っています。既存の概念に捕らわれることなく新しいことに挑戦する事で、会社として成長させていく事が出来ればと思っています。

 

オリーブの丘から見渡す瀬戸内海。心をなごませてくれる。

 

小豆島オリーブ園の取材を通して感じたのは、「昔ながらの良いもの」を守っていく事と、「時代に合わせた新しいもの」を取り入れていく事のバランスの良さだ。オリーブにアートを掛け合わせるなど、新しく挑戦しつづける事で「小豆島オリーブ園」としての価値を高めていく事につながっている。小豆島で今後も楽しみな施設のひとつである。

専門家:城石 果純

早稲田大学人間科学部卒業後、株式会社リクルートに入社。
入社2年目に第1子を出産した事で、時間あたり生産性の概念に興味を持つ。
第2子出産時に小豆島に移住。それ以後、時間と場所に制約を抱えながら
MVP・通期表彰などの事業表彰を獲得し続けた事で、
リクルートグループがリモートワークに取り組むきっかけを作った。
現在は、「地域と組織のサポーター」としてフリーランスで活動。小豆島在住の3児の母。
地域の良いものを掘り起こしてコーディネートする事と「ひとのチカラ」を活かす事を大切にしている。