ビジネスノマドとして、自身のスキルを生かして働いていくときに重要なのが、「セルフブランディング」です。

 

ウェブマーケティングから営業支援、組織構築支援まで、幅広い領域でクライアントの事業拡大に貢献する本気ファクトリー。代表の畠山和也さんは、自身がビジネスノマドとして数多くの企業に関わり、「根雪マーケティング」というコンセプトでリピーター獲得を推進してきました。

 

セルフブランディングの実践ストーリーから学び、その方法を考える本連載では、前回は、自己紹介資料作りに取りかかってからの苦労を綴っていただきました。畠山さんが自身のコンセプトを見出すまでには、どのようなプロセスがあったのか。第4回では、その具体的な方法論を語っていただきます。

営業としての成功体験を棚卸しして見えてきたコンセプト

どこにでもあるような会社紹介ではなく、自分自身が価値提供を最大化するための自己紹介資料。それを作るためにまず取り組んだのは、自分のキャリアを棚卸しすることです。これまでの歩みを振り返り、自分にどんな強みがあるのか、改めて再確認していきました。

 

新卒で入社したソフトバンクグループでの、リスト作りやトーク開発から始めた新規開拓営業。その後にリクルートで従事した採用支援における、ターゲットにメッセージを届けるための広告制作やマーケティングの知見。担当していたクライアントを競合から守り、4年間通してリプレイスされなかったという成果。そして、スターティアラボでの単一商材から提供価値を広げ、営業スタイルをリピート型に変えていった経験。これらを棚卸ししていくことで、「根雪マーケティング」というコンセプトが少しずつ見えてきたのです。

 

私がずっと実践してきたことは、ある意味ではシンプルです。クライアントに価値を提供して競合に対する優位を保っていれば負けることはないし、クライアントのニーズのタイミングをつかんでおけば、必ず自分に声を掛けてもらえる。それこそが、踏み固められて融けることのない根雪のような強い関係性をもたらす。そんな自分自身の強みをコンセプトとして言語化しました。

根雪マーケティングに必要な「3つの信用」

私自身はこの根雪マーケティングを進める上で、「3つの信用」を常に意識してきました。1つ目は個人として「畠山君は信頼できる人だよね」と思ってもらうという意味で「個人としての信用」。2つ目は「会社としての信用」。そして3つ目が「仕事としての信用」。確実に内定を出すための広告制作など、クライアントが求める結果をきっちり出すということです。

 

個人としての信用を得るために、私は常に経営者と「事業についての話」をしていました。求人広告の営業は求人相場の話や原稿の話をすることが多いのですが、経営者はその各論にはあまり関心を持ちません。「事業のことを教えてください。私も経営者になりたいんです」といつもお願いしていました。組織マネジメントの話題も多かったように思います。個人の信用、会社の信用、仕事の信用。この3つがそろったときにクライアントの満足度が高まることを、身をもって経験してきました。

 

しかし、これだけではリピートしません。私が在籍していた当時、リクルートの求人広告事業は競合に浸食されつつありました。理由は、市場の拡大に営業パーソンの数が追い付かず、クライアントとタイミングよくコミュニケーションが取れていなかったこと。そのため私は定期的にコミュニケーションを取るための工夫としてオリジナルの顧客管理ツールを作り、運用していました。

最初にたくさんのエネルギーを費やし、知見を作る

こうした工夫は、それまでのリクルートのスタンダードな営業スタイルとは少し違うものだったかもしれません。会社から「こうやりなさい」と指示される以上にやっていました。普通に考えれば、「1社あたりにそこまで時間を掛けるのはやりすぎだ」と言われて、止められてもおかしくないレベル。「あいつは結果を出すから、やりたいようにさせてやろう」という度量の深さがリクルートにはあったのだと思います。最終的には、いくつかのクライアントに対して評価制度設計を提案するなど、組織コンサルティングのようなこともしていました。

 

ここで大きな学びとなり、「根雪マーケティング」の考え方にもつながっているのが、「最初にたくさんのエネルギーを傾けることで知見ができる」ということ。以降は同じことをやるにしても、より短時間でできるようになります。評価制度作りに初めて取り組んだ際には、クライアント企業の全社員から話を聞いて、組織課題をすべて明らかにすることから手をつけていきました。その経験が物を言います。

 

業界や規模が変わっても組織課題というのは近似や傾向があって、新規のクライアントと話しているときにも「こんな課題はありませんか?」「これが原因じゃないですか?」と「社員の方はこんな風に言っていませんか?」と言えるようになるのです。クライアントは一発で「こいつは違うな」と分かる。新規開拓のプロセスで「仕事の信用」を獲得するための時間が短縮され、結果的には最初にエネルギーを費やしたことで、その後の展開をどんどん効率化していけるようになっていきました。

 

「根雪マーケティング」とは、こうした私自身のプロセスを言語化し、クライアントでも展開できるノウハウとして明確にしたもの。私でなければ語れない、独自の価値であると考えています。

 

取材・記事作成:多田 慎介

専門家:畠山 和也

本気ファクトリー株式会社代表取締役。
ソフトバンク、リクルート、スターティアラボ、ラクスルなどでマーケティング・営業を歴任し、本気ファクトリーを設立。
顧客をリピーターに変える「根雪マーケティング」をコンセプトに、自身が第一線の営業として活躍するのみならず、クライアントのマーケティングや組織構築にまで踏み込んだ施策を実行。メーカーや商社、広告代理店、小売などさまざまな業界を手掛け、大手企業から中小企業まで幅広いコンサルティング実績がある。