実際に副業を始める前に、チェックしなければならないのが会社の就業規則です。つい最近まで、政府が副業容認論を打ち出す以前は、多くの会社が就業規則で副業・兼業禁止を定めていました。ところが、最近は雰囲気が大分変わって来たようです。

■中小企業の副業に関する実態

昨年12月に東京商工会議所が中小企業の副業に関する実態調査(http://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=93282)をまとめています。それによると、調査対象となった702社のうち、副業を「積極的に推進」が15%、「やむを得ず容認」が16%、「将来的に容認」が25%だったそうです。

つまり、現時点で副業を容認している企業が全体の31%、将来的に容認と併せると全体の56%の企業が副業を容認しつつあります。政府の後押しもあり、世の中全体が副業を容認する方向へ進んでいるのは間違いないようです。

■副業が禁止されていたらどうする?

一方、就業規則で副業禁止が定められている場合はどうでしょう?特に公務員は副業が原則禁止です。また、大企業のポジションで、特に高い機密保持が求められるような職種なども副業が禁止されるケースが少なくないようです。

上に挙げた東京商工会議所の調査でも、副業を「現在も将来も認めない」とした企業が全体の43%ありました。

このような場合、憲法が定める職業選択の自由を盾にあくまでも副業を強行すべきでしょうか?筆者の答はノーです。いたずらに騒ぎを大きくするだけですし、また、雇用者側にも副業を禁止する相応の理由があるはずで、雇用者、被雇用者ともにウィンウィンの関係になりません。

フリーランスエコノミー時代における副業は、雇用者、被雇用者ともにウィンウィンの関係をもたらすものが望ましいのです。

■雇用者、被雇用者ともにウィンウィンの関係をもたらす副業とは?

サンフランシスコにテックショップというファブラボがあります。ファブラボとは各種のモノづくりの道具を集めた会員制の工房の様なものですが、筆者は数年前にこのテックショップを取材したことがあります。

二階建ての倉庫を改造して作られたテックショップには会員が500名ほど存在し、会員は3Dプリンター、ミリングマシン、レーザーカッターなどの工作機械を自由に使う事が出来ます。

会員の多くは収入を得るためにモノづくりをしていて、ペンダントなどのアクセサリーから水中撮影用カメラの複雑な形状の部品まで、実に様々なモノが作られていました。

テックショップの責任者のお話では、会員の約三分の一は日本で言うサラリーマンで、自分が勤めている会社がテックショップの会費を負担しているとのことでした。

言うなれば企業がお金を払ってまで積極的に社員に副業をさせているのですが、なぜそのような事が行われるのかという筆者の質問に対し、「色々な人たちが触れあうモノづくりの環境に社員が身を置くことで、新しい製品アイデアが生まれたり、ジョイントベンチャーが立ち上がったりするからです。企業は社員にテックショップを利用させ、そうした化学反応が起きることを期待しているのです」という答えが返ってきました。

実際、テックショップからはクラウドファンディングのキックスターターで巨額の資金を集めるプロジェクトや新製品が相次いで誕生しています。社員がテックショップという環境に身を投じ、積極的に副業をすることで結果的に会社に大きな利益をもたらしているのです。

フリーランスエコノミー時代における、雇用者被雇用者ともにウィンウィンの関係をもたらす副業とは、正にこのようなものなのでしょう。こうした副業がもたらす可能性を説明し、会社に理解してもらえるのであればいいのでしょうが、それがかなわない場合は、副業を認める環境へ身を転じることを検討せざるを得ないかも知れませんね。

記事制作:
ジャパンコンサルティング合同会社
代表 前田健二

ノマドジャーナル編集部
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