私を含む多くの日本人は自己主張が苦手です。知られたジョークに「国際会議において有能な議長とはどういう者か。それはインド人を黙らせ、日本人を喋らせる者である」というのがありますが、多くの日本人は寡黙をもって良しとする価値観を持っています。

一方で、仕事の仕方や就業形態が大きく変わる一億総インディペンデントコントラクター化時代を迎え、私たち一人一人が自分をブランディングする必要性が日増しに高まっています。今回はパーソナルブランディングについて書いてみます。

■リーチのある人を採用せよ

私が翻訳したアメリカのマーケティングテキスト『インバウンド・マーケティング』は、新しい時代の人材採用のポイントとして、特にマーケッターを採用する場合、出来るだけリーチのある人を採用するようアドバイスしています。ここで言うリーチとは、採用候補者自身がブログやソーシャルメディアなどのメディアを活用し、友達やフォロワーを囲い込み、彼らとコミュニケート出来るという意味です。

同書は例として、アメリカンエキスプレスの事例を取り上げています。アメリカンエキスプレスがアップルのエバンジェリストとして有名なガイ・カワサキ氏と契約し、同氏のブログやソーシャルメディアの膨大な数のフォロワーにアプローチしているケースを紹介しています。150万人を超えるツイッターのフォロワーを抱えるカワサキ氏ほどではなくても、企業が消費者へアプローチする手段としてインバウンド・マーケティングの比重が高まる中、自社の社員のリーチが多いことは企業にとって非常に魅力的です。

■自分のスキルを切り売りする場合もブランディングは重要

ビジネスパーソンとして企業に雇われるのではなく、自分のスキルを切り売りする形で仕事をする場合もパーソナルブランディングは重要です。例えば企業がライターを外部に求める場合、特に初めて依頼する場合、依頼候補者について事前に調べるのが今の時代には当たり前になっています。

特に専門性の高い分野のライティングを依頼する場合、その人の過去の仕事や実績などが相当詳しく調べられます。Googleで検索し、その人のホームページやブログをチェックするのみならず、その人が関係した過去の仕事の情報などをソーシャルメディアなどでもチェックします。

例えば依頼候補者が二人いたとして、一人はホームページが非常に充実していて専門性の高いコンテンツで溢れ、ツイッターにも相当数のフォロワーが存在する一方、もう一人はホームページやブログはおろか、その人についての情報がいくら検索しても出てこないといった場合、どちらが採用される確率が高いでしょうか。

■パーソナルブランディングにおすすめのメディアは?

山中に閉じこもり、仙人のように世間から隔絶した暮らしをするのでもない限り、自分をアピールして存在や実績を世に知らしめる必要がないという人は多くないでしょう。私たち一人一人がインディペンデントコントラクター化するということは、同時に一人一人がマーケティングプロセスの主体となることでもあるのです。

では、パーソナルブランディングにどのメディアを使うのがいいのでしょうか。私のおすすめは、やはりホームページかブログです。いずれもテキストコンテンツが中心ですが、画像や動画も載せられ、ソーシャルメディアとの連携も出来ます。何よりもコンテンツが蓄積されてGoogleの検索対象になるので検索者からアプローチされやすいのです。

『インバウンド・マーケティング』は、可能であればホームページやブログに自分のオリジナルドメインネームを使う事を勧めていますが、そこまでやれば検索者にそれなりのインパクトを与えられるでしょう。そこまでしなくても内容を充実させ、Googleの評価も得て行けば、コンテンツとしての価値が少しずつ上がってゆきます。

まだ自分のホームページやブログがないという方は、今すぐ立上げられることをおススメします。

記事制作:
ジャパンコンサルティング合同会社
代表 前田健二

ノマドジャーナル編集部
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