2017年、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、フリーランス協会)が設立された。働き方改革が叫ばれる中、自由な働き方を求めて、フリーランス人口が増え、さらに多様化している。しかし、まだまだ少数派の働き方であり、様々な課題を抱えてもいる。それらの課題をクリアにするべく、発信し、提言しいていくための中立組織だ。

前編ではまず、フリーランス協会が目指す方向性について、理事の一人である田中美和さん(株式会社Waris代表取締役共同創業者)にお話を伺った。

増加するフリーランスを支える組織として、フリーランス協会が誕生

日本のフリーランス人口は、2016年で1064万人、2017年には1122万人に達している。(出典:ランサーズ株式会社フリーランス実態調査」)この1年だけでも、全体の5%に当たる58万人が増えている計算だ。

かつてフリーランスで働く人たちといえば、IT技術者やクリエイターがほとんどだった。しかし現在では、よりビジネス寄りの文系総合職、シェフやネイリストといった職人など、職種の幅も広がりつつある。

しかし、増えているとは言っても、社会全体から見ればまだまだマイノリティ。仕事獲得の不安定さ、社会的信用の低さ、社会保障の手薄さ、ネットワークの弱さ、専門スキル向上の難しさ、間接スキル習得機会の少なさ・煩雑さなど、様々な問題を抱えている。

 

フリーランス協会は、個人の働き方の多様化を後押しすることを目的に、

  1. 多様化するフリーランス人材の実態を調査・発信
  2. フリーランス人材が健全かつ前向きに活躍できる土壌・環境づくり
  3. 柔軟な働き方を望む人にフリーランスという選択肢を提示

といった活動を通じて、法人及び個人会員の声を、政府・自治体・世論に届けている。設立から8か月で、メルマガ会員の数は3000人を超え、すでに約60社もの企業が賛助企業に加わるなど、その需要の多さが伺える。

 

フリーランス協会では、複数のプロジェクトを通じて、具体的な取り組みを行っている。

例えば“調査・白書プロジェクト”では、フリーランス・パラレルワーカーの実態を調査し、2018年春の白書発表を目指している。また、“パラレルキャリア推進プロジェクト”では、認知を深めることを目的としたイベントを、東京・福岡・大阪など、主要都市で行っている。

地方✕フリーランスが生む、新しい働き方と地域活性化

最近では、“地方創生プロジェクト”の動きも活発だ。フリーランスは、場所に捉われない働き方が魅力の一つ。その利点を生かし、地方と都心で二拠点生活を送る人も増えている。携わるプロジェクトによって場所を変えたり、仕事とプライベートの拠点を分けたりすることで、地元に貢献したり、自分らしい働き方を実現できたりと人生を豊かにできることが、個人にとってのメリットだ。

 

一方、地方行政にとっては、人の流れを生んで地域を盛り上げ、地方では獲得できない人材にリーチできる、というメリットがある。Iターン・Uターンとなると、この先長きに渡って地方で生活すると決断し、仕事も生活も全ての拠点を移さなくてはならず、なかなかハードルが高い。しかし、フリーランスの人にプロジェクト単位で関わってもらうスタイルなら、期間も短く、必要な時に足を運んでもらうだけで済む。もし土地柄を気に入ってもらえれば、ゆくゆくは住んでもらえる可能性もある。実際、“地方×フリーランス”という可能性に興味を持ち、具体的にイベントを検討している都市も出てきている。

ありそうでなかった、フリーランスならではのリスクをカバーする損害保険

個人会員向けサービスは、年間1万円で、賠償責任保険・福利厚生サービスが自動付帯される“ベネフィットプラン”がある。フリーランスで懸念すべきトラブルである、受託物の損壊、納期遅延、情報漏えいなどを保障する保険だ。福利厚生サービスでは、人間ドック、保育施設利用、スキルアップ支援、リラクゼーションの優待などが受けられる。

任意加入では、所得補償制度もあり、病気やケガなどで働けなくなった場合、喪失する所得を保険金として受け取れる保険がある。その他にも、クラウド会計、コワーキングスペース利用、カウンセリング、法務税務相談などのサービスが割安で受けられるという特典までついている。

 

フリーランス歴が長い方ほど、ご注目いただいているという印象です。フリーランスとして働く上での課題感を、中立的立場で発信したり、保障してくれる機関がこれまでなかったため、『こういうのを待っていた!』というお声も多く寄せられています。また、今後フリーランスを目指す人にとって、安心して挑戦するための後押しになればいいなと考えています」

 

よくある事例としては、クライアントと業務を受託したフリーランスとの間で、すり合わせが不十分だったために、期待値や認識に齟齬があり、揉め事に発展してしまうことがある。こうしたトラブルは、壁にぶち当たって初めて気づくケースも少なくない。フリーランス経験が長い人からの支持が厚いのは、そうした経験があってのことかもしれない。

専門家:天田有美

慶應義塾大学文学部人間科学科卒業後、株式会社リクルート(現リクルートキャリア)へ入社。一貫してHR事業に携わる。2012年、フリーランスへ転身。
キャリアコンサルタントとしてカウンセリングを行うほか、研修講師・面接官などを務める。ライター、チアダンスインストラクターとしても活動中。