出典:mashable.com

ソフトバンク、リクルートを経て、多くの営業組織をみてきた営業ノマドによる連載です。営業がほしいという声はどこでもきかれますが、採用に当たってはどのようなことを意識するべきでしょうか?営業を業務委託や代理店で活用するのも手法の一つですが、今回は営業の採用について考えていきます。

経営者が理解するべき営業採用の考え方

「採用で苦労している」

中小企業向けに採用のお手伝いをしていると、経営者から採用の苦労話を聞かない日はありません。

事業が軌道に乗ると、専門の営業担当者を採用しよう考える中小企業経営者は多いです。しかし、中小企業は、知名度や待遇面から大企業と比較して優秀な人材を採用することが難しい。やっとのことで採用した営業担当者が、成果を出せずにすぐに辞めてしまうことも少なくありません。

長年中小企業の営業採用コンサルティングをおこなってきましたが、経営者に必ず理解してもらっている営業採用の考え方があります。

「売れる」営業マンは転職市場で売られていない

そもそも即戦力の「売れる営業」は、中小企業向けの採用市場には出てきません。「本当に優秀な人間は何でもできる。」「本当に優秀な営業は何でも売れる。」これらは事実です。しかし、大企業の営業職が第一志望で、中小企業の志望順位は二番手と考える人も多いし、本当に「売れる営業」であれば、在庫リスクが高いなど一部の商材を除き、売れるという前提であればわざわざ不自由なサラリーマンという選択をするメリットがありません。

批判を恐れず厳しい言い方をすれば、「営業担当者として採用されよう」と中小企業に面接にやってくる時点で、「営業として何らかの能力に欠けている」と考えるのが妥当なのです。

営業でも即戦力並みの成果を出せる営業体制をイメージする

営業は、個人能力に大きく依存する仕事です。人によって成果が何倍も違うことも少なくありません。だからこそ、採用する側は「売れる営業か?」判断しようと躍起になるのも当然です。

しかし、何度も言いますが、本当に優秀な営業担当者は中小企業の採用市場には出てきません。したがって、血眼になって優秀な営業担当者を採用しようとするより、成果がでる営業体制を普通の営業担当者でどうやって構築していくか?に考え方を転換する必要があります。

  • 営業(採用希望者)の強みは? 欠けている能力は?
  • 欠けている能力はどのような仕組みであれば補うことができるか?
  • 本人の強みが活きるポジションに配置できるか?

といったことを考えながら採用を進めていきます。今目の前で面接している候補者をあなたの会社の営業部に配置したとき、大きな成果を生み出せる営業体制のイメージを常に念頭に置いておきます。

営業プロセスを分担して売上激増!離職率も半分以下に

営業体制を再構築し、営業担当者を適所に相充して成功した例をご紹介します。

A社は粗利率90%以上で商品知名度も高い商材を持っています。しかし、この商材を営業するのは難しく、前職で成果を上げていた営業担当者を中途採用で大量採用したものの、成果を出せたのはほんの一握りで、彼らに売上を依存していました。成果を残せない営業担当者の離職率が高かったのです。

そこで、現状を改善するため、最初のステップとして、営業プロセスを「見える化」しました。A社の営業プロセスは、5ステップに分かれます。

「アポ獲得」 → 「関係性構築」 → 「事業課題抽出」 → 「自社商品での解決提案」 → 「クロージング」

次に、営業担当者ごとに「強み」「弱み」を明らかにしました。若い営業担当者は行動力があり、「アポ獲得」「関係性構築」までは得意なことが多いです。しかし、経験が少ないため、「事業課題抽出」や「自社商品での解決提案」が弱いことが多かったのです。一方、中途採用者を含めたベテラン年長者は、前述の営業プロセス前半でつまずくことが多いことが明らかになりました。

そこで、一人でなんでもできる「売れる」営業担当者を大量に採用する戦略をやめ、既存の人材で営業プロセスを役割分担する営業体制に変更しました。前半ステップを主に若年者、後半ステップを主に年長者が担当することで、営業成績が飛躍的に向上したのです。

また、営業成績の向上は、副次的な効果を生みました。離職率を半分以下に下がったのです。チーム全体で成果を残せるようになったことで、営業担当者のモチベーションが上がったからです。

まとめ:営業体制を工夫することで個力に頼らないで成果を上げる

「営業はセンス」「売れる奴は売れるし売れない奴は売れない」などと嘆くことはありません。A社のように営業体制を工夫することで、営業担当者の個人資質に頼ることなく、成果を上げることができるのです。

中小企業が即戦力の「売れる」営業担当者を採用できないのは致し方ありません。しかし、普通の営業担当者を適材適所に配置し、成果の出せる営業体制を整えるのは、経営者の努力次第と言えるでしょう。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。

ノマドジャーナル編集部

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