ソフトバンク、リクルートを経て、多くの営業組織をみてきた営業ノマドによる連載第六回です。
前回、信用が大事であるというテーマを取り上げましたが、実際に信用を得るために何をすべきでしょうか?今回は営業において大切な「信用」を得るために何をしたらよいのか具体的に解説していきます。
顧客と「ラポールが築けている」かどうか?
前回の記事で信用の種類を大きく分けると「個人」「仕事のスキル」「商品・サービス」の3つがあることを述べましたが、どの部分から信用を獲得するべきかという問題が有ります。
順序については営業開始の状況(テレアポ、紹介、引継、前職つながり・・・)次第でもあるため、一概には言えないのですが、一般的には「個人としての信用」からがよいでしょう。
「個人としての信用」が獲得できている状態のことを私は「ラポールが築けている」と呼んでいます。「ラポール」という言葉は元々臨床心理学の言葉で「セラピストとクライアントの間に相互信頼が成立している状態」を指す言葉です。
これはリクルートで働いていた際に多用されていた言葉なのですが、顧客との関係性を測る際の用語でした。顧客とのことでまず上司に聞かれていたのは、「お客さんとラポールは築けているか?」「なぜそう判断したか?」でした。
相手が「自分は理解されている」と感じられるまでがゴール
「個人としての信用」を築く方法は単純で「褒める」又は「共通の話題」です。
「褒めることができる」ということは「相手の良いところを見つけることができた」ということであり、「褒め方本」などというものが存在するように、実際にやろうとすると決して簡単なものではないのです。
「個人としての信用」を獲得しようとするならば、これを会ってすぐにできなくてはならないですし、軽薄な褒め言葉だけを投げかけても返って信用を失うばかりです。相手が大事にしているもの、自分の特長であると思っていることに素早く気付いて指摘することが求められます。相手が「自分は理解されている」と感じられるまでがゴールなのです。軽薄な褒め言葉は真逆の効果をもたらすので注意が十分に必要でしょう。
その人なりの価値観はなんなのか?
より具体的に手法をお伝えすると「相手の特長を見つけて5W1Hを聞く」というのが簡単にできる方法だと思います。
例えば、「相手が特徴的な腕時計をしていた」ことに気付けたとします。そうしたら「その時計素敵ですね。どこで買ったんですか?」「いつ買ったんですか?」「なぜそれを選んだんですか?」といった形で質問をしていくのです。すると相手は、特に不快なことがなければ答えてくれるでしょう。その回答の中にまた質問をぶつけていきます。「その店にはよく行くのですか?」「店選びの基準はありますか?」そういった質問の中でその人なりの価値観が出てくるまで聞いていきます。ここまで聞ければ、相手は自分のことを多少は理解してもらっている、興味を持ってくれていると感じるからです。こちらの質問に対しても回答してもらえるだけでなく、好意的なジェスチャーや表情で応対してもらっているはずでしょう。
この状態が「ラポールが築けている」状態であり、商談に入れるようになったサインでも有るのです。
大事なことはあくまでも相手を理解するための会話
「共通の話題」に関しては相性の問題もあるので一般化は難しいのですが、基本は「褒める」場合と同じです。「共通の話題」が見つかった場合は「褒める」方法よりも営業自身が自分のフィールドで話せるので難易度は下がります。ただ、大事なことはあくまでも相手を理解するための会話だということなのです。
持論を延々に展開するようなことは避けるべきであり、基本的なスタンスは傾聴です。
いずれの場合も「質問をする」「相手が回答する」「回答内容について再度質問をする」これをスムーズに行うにはそれ相応の練習が必要であり、すぐにできることではありません。初めてこれを行う人は、大抵最初の質問に対する回答が返ってきた段階で次の質問が思いつかないで終わってしまうのです。スムーズに質問し続けられる能力が必要です。
これは営業として基礎体力のようなもので、スポーツであれば走力に当たる能力であり、信用獲得にかぎらず営業には必要な能力なので、訓練していくべきでしょう。
残り二つについては次回で詳しく解説していきます。
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ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。
ノマドジャーナル編集部
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