ソフトバンク、リクルートを経て、多くの営業組織をみてきた営業ノマドによる連載第五回です。

営業現場において、何をおいても一番最初にやることは「信用」の獲得です。

どんなに素晴らしい商品・サービスでも、どんなに素晴らしい企画であっても、それを扱う人間が信用されていなければ購入はおろか、話を聞いてすらもらえないこともあります。これは、営業の現場では当然のことですし、誰しもが納得するところだろうと思います。

ただ、営業において信用という言葉は決してひとくくりにしてよいものではなく、分けて考えべきです。営業の各段階において、どの部分の信用を獲得できているか?を確認しつつ、営業活動を進めると次のコミュニケーションをどう図るべきかが、大変わかりやすくなります。

今回は効率的に営業を進める上で必要な「信用」の獲得について解説していきます。

「個人としての信用」「仕事スキルとしての信用」「商品・サービスの信用」

信用の種類を大きく分けると「個人」「仕事のスキル」「商品・サービス」の3つがあります。

まず、「個人としての信用」ですが、これは人間として営業個人が信用できるか、好きか嫌いかというレベルの信用です。

次に「仕事スキルとしての信用」ですが、これは提案力であったり、商品知識といった営業個人の力に対する信用です。

最後に「商品・サービスの信用」ですが、これはいわゆる商品力であり、顧客がサービス自体に価値を感じるかどうかという点です。

よっぽど商品力や仕事スキルが高く評価され、顧客側にニーズがある場合を除き、この3つが揃わないと受注することは難しいです。受注に至っていない段階やリピートオーダーを狙いに行く段階で、どの信用を獲得できているか、どの信用は獲得できていないのかを常々チェックしておくと良いでしょう。

「個人としての信用」だけでは仕事に繋がらない

「個人としての信用」だけが獲得できている場合、顧客からプライベートな用事(ご飯やお茶、イベントなど)に誘われても、仕事には全くつながらないということが起こります。この場合、どれだけこの誘いに乗ったところで、仕事にはならないので注意が必要です。

むしろ、仕事面での信用を獲得すべく、企画や商品の提案などに力を入れるべきです。

私も若い頃、何度も飲みに誘われたり、相談があると言って呼び出される割に仕事にならないお客さんがたくさんいました。相談に乗り続けたり、飲みにたくさん行くことで仕事になるかなと思って行ったこともありましたが、そういったケースが仕事につながったことは結局数えるほどしかありません。

リスクの高い営業戦略とは?

「仕事スキルだけが信用」されている場合、色々と相談されるのですが、その場の雰囲気はよくないケースが多いです。いわゆる「優秀だけども、いけ好かない」と思われているパターンです。

このケースで受注に至っていないのであれば、「個人信用」を獲得が受注への近道でしょう。このケースは、他への信用がなくとも受注に至っていることがありうるのですが、他の手段が見つかった場合やニーズが弱くなった場合に急に仕事にならなくなるリスクがあります。

個人信用を得ていれば、状況の変化は事前に教えてもらえるので、ニーズにだけ対応しているというのは、真っ当に見えて実はリスクの高い営業戦略と言えるのです。

信用は売上のバロメーター

最後に「商品・サービスに対する信用」ですが、これだけがある場合も受注に至っているケースがあります。この場合のリスクは担当変更です。

もちろん、サービスに対するニーズが下がれば商品の発注自体が止まりますが、ニーズがあっても営業に対する個人・仕事スキルへの信用がない場合は、より望ましい営業、もしくは類似商品に変えたいというニーズが顧客側に発生してしまいます。あなたが競合の少ない自社製品を扱っているのであれば「商品・サービス信用」だけあれば十分ですが、そのようなケースは極めて稀であり、営業としての価値発揮もできていない状態でしょう。

信用は売上のバロメーターなのです。

いずれの信用も獲得できているのか、どの信用が足りていないのか、営業の随所で確認しながら営業活動を進めると効率的な営業活動をしていけると思います。

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専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。

ノマドジャーナル編集部

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