副業をしていると、給料や報酬を手渡しで受け取ることがあります。手渡しなので当然、口座などに振込の記録が残りません。そのため、「手渡しなら副業が本業の会社にばれないのではないか。その分の税金を納めなくても国にばれないのではないか」と思う人もいるかもしれません。ここでは、手渡しの副業がばれるかどうかをパターン別に解説します。

手渡しの副業は国等に税金の未納がばれる

副業がアルバイト・パートの場合

副業がアルバイト・パートで、その給料が手渡しである場合を考えてみましょう。

年末から翌年1月にかけて、会社は「給与支払い報告書」を作成します。これは、1月1日から12月31日までに、会社が従業員に支払った給料の合計額を記載したものです。作成した給与支払報告書は、翌年の1月末までに各従業員が住んでいる市区町村に提出しなければなりません(退職者で、1年間の給料が30万円以下の場合を除く)。これは、従業員が正社員であっても、アルバイトやパートであっても同じです。

副業がアルバイトやパートの場合、その人の住んでいる市区町村には、本業の会社と副業であるアルバイトやパート先の会社の2枚の給与支払報告書が届くことになります。市区町村は2枚の給与支払報告書に記載された給与支払額を合算し、住民税の金額を計算します。そのため、少なくとも各市町村はその人が副業をしていることを把握しています。

では、国はどうなっているのかというと、今までは特別な事情がない限りは、確定申告をしないと正直、副業の把握は難しいという実情がありました。しかし、マイナンバーが導入されてからは、その人が副業していることを把握しようと思えば、把握できる可能性が高くなりました。というのも、平成29年1月以降、市区町村に提出する給与支払報告書には、従業員のマイナンバーを記載する必要があるためです。

副業がアルバイト・パートで、その給料が手渡しの場合、確定申告をせず所得税の納税をしなければ、市区町村に提出された給与支払報告書に記載されているマイナンバーによって、いずれ税金の未納がばれる可能性があります。故意ではなくても、脱税とみなされる恐れもあります。きちんと確定申告し、所得税の納税を行いましょう。

副業が事業所得や雑所得の場合

次に、副業が事業所得や雑所得の場合で、その報酬が手渡しの場合を考えてみましょう。

実は、事業所得や雑所得の場合でも、仕事先から所得税が源泉徴収される業種があります。それは、ライターや講師、コンパニオン、モデル、外交員などです。

仕事先は源泉徴収した所得税を国に納めるだけでなく、年間で一定金額を超える場合、税務署に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出する義務があります。義務が生じる金額は業種により異なり、例えば原稿料が発生するライターや講演活動をする講師なら年間5万円を超える場合、コンパニオンや外交員の場合は年間50万円を超える場合などとなっています。

所得税はすでに源泉徴収されて支払済であるため、確定申告をして税金が還付されることも多いですが、本業の会社の給料によっては、確定申告後追加で所得税を支払わなければならないケースも出てきます。通常、確定申告で所得税額を計算するまでは所得税が還付になるのか、追加で納付するのかは分かりません。税務署は支払調書によって、報酬額や源泉徴収額を把握しています。追加で納付するケースで、申告や納付を忘れていると故意ではなくても、脱税とみなされる可能性があります。確定申告は必ず行いましょう。

では、所得税が源泉徴収されていない業種の場合はどうなるのでしょうか。この場合でも、確定申告をせずに税金が未納であることがわかる場合があります。それは仕事の受注先に税務調査があった場合です。税務調査では、経費の支払いが本当にあったのかを確認します。

確認方法は領収書や振込記録などです。ただ手渡しの副業の場合、振込記録がありません。その場合振込先が個人であれば、その人が確定申告しているかどうかなどを確認することもあります。この場合、国に所得税の未納がばれるだけでなく、脱税行為を行ったとして仕事先からの信頼も失いかねません。そのことも含めて確定申告と納税を必ず行うようにしましょう。

手渡しの副業は本業の会社にばれる?

副業がアルバイト・パートの場合〜本業の会社にばれる〜

次に、手渡しの副業が本業の会社にばれるかどうかを見ていきましょう。

まずは、副業がアルバイトやパートの場合です。この場合は結論から言うと、本業の会社に副業していることを気づかれる可能性が高いです。「手渡しの副業は国等に税金の未納がばれる」のところでも述べましたが、会社が従業員に給料を支払ったときは、1年間の給料の合計額を記載した給与支払報告書を、各従業員の住んでいる市区町村に提出しなければなりません。市区町村は、本業の会社と副業の会社からそれぞれ届いた2枚の給与支払報告書に記載された給与支払額を合算し、住民税の金額を計算します。

では、この住民税の納付はどのようにして行われるのでしょうか。実は、副業がアルバイトやバートの場合、それぞれの給与の住民税を各会社の給料から天引きすることは認められていません。あくまで、副業分も合わせた住民税の納付書が本業の会社に届き、副業分も合わせた住民税が本業の会社の給料から天引きされます。本業の会社の給料分よりも高い住民税を天引きされるため、本業の会社の経理担当や人事総務の担当者がそのことに気づけばばれてしまいます。

副業が事業所得や雑所得の場合〜本業の会社にばれない〜

手渡しの副業が事業所得や雑所得の場合を見てみましょう。結論からいうと、きちんと手続きをすれば、副業が本業の会社にばれることはありません。副業が事業所得や雑所得の場合、その所得(収入から経費等を引いた金額)金額が20万円以下かどうかで手続きが異なります。

所得金額が20万円超の場合、所得税の確定申告が必要です。所得税の確定申告書の第二表に「給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択」という欄があります。ここで「自分で納付」にチェックを入れると、本業の給料分の住民税納付書は勤めている会社に、副業分の住民税は自宅に納付書が届きます。そのため、本業の会社に副業がばれることはありません。必ず「自分で納付」のチェックを忘れないようにしましょう。

所得金額が20万円以下の場合は、所得税の確定申告をする必要はありません。しかし、所得金額が20万円以下の場合に申告しなくてよいのは所得税だけで、住民税は申告する必要があります。通常は所得税の確定申告を行えばそのデータが各自治体に行くので住民税の申告は不要ですが、所得金額が20万円以下の場合は所得税の確定申告をしないため、別途住民税の申告が必要になります。

各自治体によって申告書の体裁は異なりますが、住民税の申告書にも住民税の納付方法を選択する欄があります。こちらも所得税の確定申告と同じように「自分で納付」にチェックを付けると、本業の給料分の住民税の納付書は勤めている会社に、副業分の住民税は自宅に納付書が届くので、会社に副業がばれることはありません。こちらも必ず、「自分で納付」のチェックを忘れないようにしましょう。

まとめ

副業をしていると、給料や報酬を手渡しで受け取ることがあります。その場合でも所得税の申告・納税をせずに放っておくと、いずれ国に未納がばれる可能性が高いです。必ず確定申告と納税を行いましょう。

本業の会社に副業をしていることがばれるかという点については、副業がアルバイトやパートの場合はばれる可能性が高いですが、副業が事業所得や雑所得の場合は住民税の「自分で納付」のチェックを忘れなければばれることはありません。必ず「自分で納付」のチェックは忘れないようにしましょう。

執筆者:はせがわ・よう

関西在住。会計事務所に10数年勤務後、2016年よりフリーライターとして活動。会計・税務関係の記事をメインに執筆しています。