多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第10回です。

営業をやったことがある人なら誰しも「ヒアリングが大事。」という話を聞いたことがあるだろうし、実際にやっている人も多いだろう。が、ヒアリング初心者の方を中心にうまくヒアリングができないという人も多いのではないだろうか?

よくある失敗としては

  • 一つ質問をして、返答があったがそれ以上聞くことがなく会話が止まってしまった
  • ヒアリング項目を事前に沢山用意していたが、順に聞いていたら尋問のようになってしまってきまずくなってしまった

などがある。

ヒアリングの目的は

① 提案に必要な情報を聞き出す

② コミュニケーションを取ることで良好な関係性を構築する

の2点なので「十分に聞けなかった」も「聞けたけど気まずくなってしまった」もヒアリングの成功とは言えない。また、気まずくなってしまった状態で聞いた内容が相手の本音であったり、十分な情報だったりはしないだろうから、聞けた内容としても不十分であった可能性が高い。

ヒアリングを行う上でのポイントはいくつもあるが、今回は「聞く順番」についてお伝えしようと思う。

ヒアリングには聞く順番にセオリーがある

ヒアリングのポイントはズバリ「現在→過去→未来」のセオリーの順番に聞くことだ。

当然のことだが、営業で聞きたいのは「未来の話」である。極論、自社の商品を買ってもらえるのか?その余地はあるのか?余地があるとしたらどのような提案が必要なのか?それを判断するために知りたいのは未来の話である。

ただし、未来の話は不確定であり、わからないことも多い。さらに安直に答えてしまって、営業に言質をとられるのも嫌だからいかんせん回答しにくい。質問に答えやすい質問と答えにくい質問とがあるが、未来の話はどちらかといえば答えにくいものに含まれる。

コミュニケーションを円滑にする上で質問のセオリーは、答えやすい質問から入り、相手が質問に答えることに慣れてきてからだんだん高度な質問に入っていくというものである。

現在・過去・未来のうち、どれに関する質問が最も簡単だろうか?

3つ質問させていただくと

① 今、あなたは何をしているだろか?

② 1週間前の同じ時間、あなたは何をしていただろうか?

③ 1週間後の同じ時間、あなたは何をしているだろうか?

①の質問に答えるのは簡単だ。「あなたは今、この記事を読んでいる」

②の質問に回答するのは少しむずかしい。覚えていない人の方が多いだろう。だが、1週間くらい前のスケジュールを開けばおおよそ何をしていたかは思い出せるだろう。

③の質問はさらにむずかしい。現時点でスケジュールが入っている人もいるだろうが、そうでない人も多いだろうし、スケジュールが変更になるかもしれない。ほぼ確定した予定だったとしても何かの事件や事故が起こってかわってしまう可能性は否定出来ない。

このように、現在についての質問が最も答えやすく、過去→未来の順番に回答が難しくなるのだ。また、現在から離れれば離れるほど、一般には回答は難しくなる。

回答がしやすい順番に聞いていこうとすると必然的に現在→過去→未来の順に聞いていくことになる。

また、現在→過去→未来の順に聞くことは相手の頭の中を整理するためにも有効だ。

例えば、現在ある事業を行っているとする。その事業についてどんな仕組みになっているのか?を聞いたとする。そして、それを過去に遡る。この場合、どのようにして現在の事業が出来上がってきたか?を聞くことになる。

当然、現在の事業には何かしらの課題があるだろうが、現在だけをみていたら「なぜ、その課題が発生したのか?」「なぜ、その課題が現状未解決のままなのか?」は理解することが難しい。だが、歴史的な経緯を知れば、その課題が発生してきた理由がわかる。

解決するにあたって配慮するべきこともわかるようになる。そういったものは往々にして先方担当者も忘れていることが多い。順を追って思い出すことでこれらのことがはっきりしてくることも多い。

過去も含め、現状を相手と共有し、同じ目線を獲得してから未来のことを聞く

未来は過去と現在の延長線上にあるのだから、何もない状態よりは未来について考えやすい。過去と他人は変えられないが未来と自分は変えることができる。

顧客と過去・現在を共有すれば、同じ目線をもってどのような未来にすべきか話し合うことができるだろう。そのような「自分たちのことを理解した相談相手」は顧客にとって営業担当者を超えたかけがえの無いパートナーに思えるだろう。

顧客にそう思っていただける仕事ができたら、営業としては最上の仕事ができたといえるのではないだろうか?

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。
ノマドジャーナル編集部
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