多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第18回です。

前回は合理的な案件管理等、具体的な手法をお伝えしながら営業管理について解説していきました。今回は営業人材の採用の仕方、考え方についてお伝えします。

採用では「売れる営業か」を判断してはいけない

ある程度事業が軌道に乗ってきて
「営業の工数が足りない」「もっと人がいればもっと売れる」
という状況になり、営業採用を考えられる方が多い。

また、同時にそういう状況下で営業を採用したものの成果を出せずに辞めてしまうという経験をした経営者の方は多いのではないだろうか?

営業という仕事は比較的属人性が高い仕事で人によって成果が倍ほど違うということも少なくないから、採用では誰しも「売れる営業か」を判断しようと躍起になる。

が、5年ほどの短い期間だが、中小企業の採用をお手伝いしていた経験から言うと、その営業が売れるかどうかはどんな人を採用したか、よりもどのような仕事の任せ方をしたかによるところが大きいと感じる。

理由を一言で説明してしまうと、仕事の任せ方を気にしなくて良いような本当の意味での即戦力人材であれば、社員として雇用されるという選択をする必要がなく採用市場には出てこないからである。

売り方がわかっているのであれば、社員として働くのではなく、「貴社の商材を売らせてくれ」というアプローチになるはずである。

在庫リスクが高いなど一部の商材を除き、売れるという前提であればわざわざ不自由な被雇用という選択をするメリットがない。

営業として採用されようとしている時点で、ある程度「営業として欠けている点がある」と考えるべきである。

本人の強みが活きる配置ができるかを考える

その前提に立てば、目の前の営業が優秀かどうかを見極めるのではなく、何が欠けている点でどのような仕組みであれば補うことができるか、そして本人の強みが活きる配置ができるかを考えることが重要であるとわかっていただけると思う。

多くの経営者が言うとおり、本当に優秀な人間は何でもできるし、本当に優秀な営業は何でも売れる。

それは事実ではあるが、そのような人材はそうそう採用市場にはいないのである。

営業の採用においては候補者がどれだけ優秀か?を見極めようとするより、
「何が成果を出せない原因となっているのか?」「それを自社ではカバーできるか?」
を考えたほうが売上には近いと感じる。

当然、カバーするといっても絶対に譲れない要素はある。

そして、自社商材やマーケット環境によって「譲れない要素」「譲れる要素」は変わるので、自社にあった「譲れない要素」「求める欠点」を明確化した上で採用活動を行うと成功しやすいと思う。営業側から見ても優秀であればあるほど、成果を出せるフィールドは広いから、何かしらその会社で働く理由が必要である。

給与という方法もあるが、その分求める売上も上がってしまうのであまり得策ではない。

欠点を補ってくれる(=働きやすい)環境を整えている方が労使双方にとってメリットが大きいのである。

「優秀な営業」を採用するという「宝探し」を辞める

ある営業会社のケースを例に取ると、その会社は粗利率90%以上で商品知名度も高いという「良い」商材があった。

が、営業難易度は比較的高く、前職で成果を挙げていた営業を中途採用で大量に採用するものの、成果を出せたのはほんの一握りでしかなく、非常に採用効率が悪かった。

このため、特定のスタープレイヤーに売上を依存するという体質であり、退職時のリスクが高いことが課題であった。そこで「優秀な営業」を採用するという「宝探し」を辞め、「仕組み化」の道を模索することになった。

営業プロセスを分解すると
「アポ獲得」「関係性構築」「事業課題抽出・自社商品での解決提案」「クロージング」
の5ステップあることがわかった。

比較的若い営業は行動量を担保しやすく「アポ獲得」「関係性構築」までは得意だったが、経験がないため、「事業課題抽出・自社商品での解決提案」が弱かった。

一方、中途採用者を含め年長者はどうしても行動量が足りないなど前段階でつまずいていることが多いことがわかった。

そこで1人で営業完結するのを辞め、若年者と年長者のセットで営業する仕組みにしたところ営業成績の向上と同時に離職率も改善することに成功した。

若年者がアプローチから関係性構築までを行い、提案は年長者が行う。最後、クロージングは若さに任せて若年者が口説くという流れである。

こうすることによって年長者だけでも若年者だけでも売れなかった顧客層を開拓することができるようになり、業績も安定させることができた。

上記は仕組み化の第一歩を踏み出したという事例だが、仕組みが堅固であればあるほど、営業個人の資質に求める項目は少なくなる。

「営業はセンス」「売れる奴は売れるし売れない奴は売れない」などと言う言葉はよく耳にするが、営業の仕組み化ができていない状況ではそう見えるということだと思う。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。
ノマドジャーナル編集部
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