多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第19回です。

前回は営業人材の採用の仕方、考え方について解説しました。今回は営業をしている上でよくある事象についてお伝えします。

「忙しくない時」などあるだろうか?

営業をしているとお客様の「断りの理由」や「すぐにできない理由」として「今、忙しいから・・・」と言われたことがあるだろう。

若い営業だと「じゃぁ、忙しくないときに改めよう」と思ってしまう。

が、そこで少し考えてみて欲しい。あなたや周りの人が「忙しくない時」などあるだろうか?おそらく、忙しくない時などほとんどないと思う人が大半だろう。しかしながら、お客様に「忙しい」と言われて断るときもあれば、そういうことは言われずに商談になる場合もある。

この違いはなんだろうか?

当然、「忙しい」の基準は人によって違うので、残業なしで帰っている人が「忙しい」と感じることもあるだろうし、23時まで毎日働いても「忙しい」と感じない人もいるだろう。同じ勤務時間でも人や状況によって「忙しく」感じることもあればそうでないこともあるだろう。

「忙しい」と断られるか断られないかの違いは「営業のもってくる話の優先順位の違い」によって生じてくるものだと私は考える。

極端な例を出すと、どれだけ他の業務が忙しかろうと「あなたのもってくる話を検討しないと明日会社が倒産する」という内容の話であればどれだけ他の業務が詰まっていようと全てを後回しにしてあなたの話を検討するだろう。逆に、全く興味がない、聞く必要性がないと判断している場合も「忙しい」ではなく「いらない」「興味ない」といった断り方になるだろう。

ソフトウェア投資の提案をしていたが、顧客担当者が営業部長の方で大きなプレゼン案件があるから足下は忙しいと直近の提案を断られそうになった。

プレゼン案件の中身を聞いてみると提案しているソフトウェアを活用することでよい企画が練れると判断し、「一緒に企画を考えましょう」と提案。時間をとってもらい、企画を考えると同時にソフトウェアの導入を提案した。
(プレゼンは通らなかったがソフトは導入された)

採用広告を提案したところ、顧客担当者(社長)が忙しすぎて採用どころではないと断られそうになった。「社長が日常業務に追われていたら会社は伸びない。足下は大変でも採用に時間を使い、社長の仕事を肩代わりする人を採用しましょう」と伝えて商談に進めた。

自分の提案の重要性をお客様に感じさせることができているかどうか

つまりは「必要性が0ではないが、他のことの優先順位が高い」場合に「忙しい」と断られることになるのである。これを営業の目線から言うと「自分の提案の重要性をお客様に感じさせることができていない」ということなのである。

であるから、「忙しい」と断られた際にすべきアクションは「忙しくない時にまた来よう」ではなく、下記2つである。

1. その担当者が優先している業務はなにか?をしらべる

2. その業務より自分の提案を優先すべき理由を探し、伝える

上記2つの作業によって担当者の優先順位を変えることができれば、すぐに商談にすることができる。当然、自分の提案より担当者の現状の業務の方が優先されてしまうこともあるだろうが、それは現状の全ての業務が自分の提案より優先されるほど担当者にとって自分の提案の価値が低いことを意味する。

であれば行うべきは「忙しくない時間を見計らう」ではなく、「自分の提案をより価値が高いものにする」作業である。

その作業は必ずしも商品や企画を変えることではない。商品の使い方や提案の仕方によって担当者にとっての価値は大きく変わるからだ。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。
ノマドジャーナル編集部
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