ビジネスノマドによってキャリア形成に結果として大きな影響を受け、新卒でベンチャー創業期のメンバーに入りながらスキルを身につけ独立していった事例です。

志賀 大さんは、ソーシャルベンチャーの一社であるケアプロにて営業、新規事業担当などを経て、現在は経営者として日本初トリアージ型救急クリニックを立上げ自ら運営を行なっています。社会人の初期を過ごしたケアプロで出会ったビジネスノマド守屋 実さんからはどのような学びがあったのでしょうか?

第2回は、志賀さんがインターンからベンチャー企業に入った経緯です。看護師として比較的明確なレールが敷かれていたはずのキャリアからベンチャーへ入社されるまでの意思決定のプロセスについて、生々しいやり取りを含めて振り返ってもらいます。

「その道に進むことに対して本当にワクワクしているのか?」を自分に問いかける

Q:志賀さんは看護師としてのキャリアを考えていましたが、その道を歩まず、当時としては明日をも知れないベンチャー企業に入社されました。進路について迷ったりされたのでしょうか?

志賀 大(以下、志賀):

そうですね。ケアプロについてはインターンで事業を経験させていただいてはいたのですが、入社についていざ決断するとなると、それまで乗ってきた看護師のレールのほうも魅力的に見えたりしました。

Q:珍しい進路ですね。看護師の資格を取った後に、それ以外の道に進む人は多くはないですよね。

志賀:

看護師になるために4年間を費やしてきていましたし、このまま自分の大学の附属病院にいけば貰える給料の額や給料がどのように上がっていくのかもある程度見えていました。病院なら、自分の経験をそのまま生かせる。そこに進まないという選択肢は、4年間を棒に振る可能性があるわけです。看護師として積めるはずだったキャリアを捨てることにもなります。そう考えていくと、そのまま看護師になるレールにも魅力を感じたわけです。

そのまま看護師になったほうが、経験を積み、出世して、結婚して、とライフプランが描きやすいですよね。

志賀:

はい。しかし一方で、くすぶっている自分もいました。私にとって「自分がワクワクしているかどうか」と、「人の役に立つかどうか」というところは2大重要決定要因なんです。この2つが揃っている道が自分にとって理想でした。

そのため、看護師の道に進むことに対して本当にワクワクしているのか、そしてワクワクできるのか、と問いかけている自分がいたのです。看護師になってこのまま病院で働く道は、間違いなく人の役に立つんですよ、でも僕の場合、このワクワクが少し低いと感じたんです

これは、正社員から独立する方が、独立を悩む時と似た感覚かもしれません。実際に、次に訪れたキャリアの岐路、ケアプロをやめて独立するかというタイミングでも同じような感覚に陥りました。

絶妙のタイミングで「想い」を乗せてくる。ベンチャー入社の意思決定の経緯

Q:ケアプロへの道は、その「ワクワク」と「人の役に立つ」という両方の感覚が得られたということですね。

志賀:

ケアプロは、この2つが同時に揃っていました


当然、給与やリスク、不安定性など、決定の判断軸にするものはいくつもありますが、僕にとっては「ワクワク」と「人の役に立つ」の2つが一番強くあり、ケアプロ入社に傾いていました。あとは第三者のひと押しが欲しかっただけなんです。そこで、守屋さんに飲みに連れていかれたんですよ。

守屋さんから「やんないの?ほんとにやんないの?ぶっちゃけどっちがいいの?」、そして「で、どうすんの?」って。「やろうぜ」というニュアンスも感じられたんですね。そこで僕は「迷ってるんです、どっちもいいと思うんですよ」って、さっきの話をするんですね。そこで守屋さん「けど、迷ってるんだろ?」、「はい、迷ってます。」「じゃあ働こうよ、一緒に。」という流れで。なんかこう、最後は迷っているうやむやなやつは持っていかれるんですよね(笑)

守屋さんは自分の意見を最後に乗せてくるんです。迷っていることを聞いてもらって、ずっと平行線なんですが、このときにぱっと言われる一言が結構大きくて、「じゃあ、一緒に働こうよ!」と。結果として入社に傾いてくる。

Q:悩みを聞きながらも、最後は採用したいという想いをのせてくる説得だったんですね。

志賀:

想いを乗せてくる、飛ばしてくるタイミングが絶妙なんですよね(笑)。半分酔っているのもありまして、そろそろ帰ろうか!という時にペンを出してきて、箸袋を開いて、「ここに、僕はケアプロに入ります。って書いて」って。書くんですよ、言われたとおりに素直に。

次の日、素面になって出社すると、「はい、おめでとう」って渡されました。前日自分自身で入社意思を書いた箸袋を。

自分の誓約書みたいなものを見て、「あ、入ったんだ俺、みたいな。昨日俺入ったんだ(笑)」って。4年生の9月頃で、病院の内定ももらっていて、両方とも決断の期限が迫ってきていた時でした。

箸袋に書いた入社の約束〜親を説得する〜

Q:看護師からの転身というのは、もともとの道が明確だっただけに親御さんもびっくりしたのではと思います。反対されませんでしたか?

志賀:

説明の仕方を工夫しました。相談する段階で実はもう決断していたんですが、相談する体で話をしたんですね。相談ベースで話せば受け入れてもらえると思ったんですよ。

親に「俺、進路についてちょっと迷ってるんだよ。どう思う?」と聞くと、好きなことやればいいよと言ってくれるんですよ(笑)。そのときには「ちょっと考えてみるね」と言いつつ、心の中ではガッツポーズをして、後日ケアプロに入社することにしたという報告をしました。

【キャリア】ベンチャー立上げ人材のキャリア 第1回 :ビジネスノマドから学んだ独立志向

取材・インタビュア協力・撮影/サーキュレーション インターン生 小林

【専門家】守屋実
1992年に株式会社ミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で、新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、株式会社エムアウトを、ミスミ創業オーナーの田口氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施後、2010年、守屋実事務所を設立。設立前、および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。投資を実行、役員に就任して、自ら事業責任を負うスタイルを基本とする。2016年現在、ラクスル株式会社、ケアプロ株式会社、メディバンクス株式会社、株式会社ジーンクエスト、株式会社サウンドファン、ブティックス株式会社、株式会社SEEDATAの取締役などを兼任。
【専門家】志賀大
2010年にケアプロ株式会社に創業期メンバーとして参画。当時日本初のサービスであるワンコイン健診サービス(現:セルフ健康チェックサービス)の責任者として従事。退社をする2015年までに、営業・採用・事務・広報・ロジスティクスなどを経験。ケアプロ在籍中に一般社団法人みんなの健康を2011年に設立。2015年にみんなの健康を株式会社として再度設立し、日本で初めて行政より民間委託を受けた、一次救急専門のクリニック「いおうじ応急クリニック」を開始。医療機関の創業・開業やヘルスケア分野におけるコンサルティングを行う形で活動をしている。2016年現在では、年間自宅看取り件数が国内5本の指に入る在宅医療法人にてハンズオンコンサルティングも行っている。
ノマドジャーナル編集部
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