ビジネスノマドとの関わりによってキャリア形成に大きな影響を受け、新卒でベンチャー創業期のメンバーに入りながらスキルを身につけ独立していった事例です。

第6回は、ベンチャーから独立した後のノマドとのかかわり方です。現在は松阪にて日本初のトリアージ型救急クリニックを立ち上げ、経営者として事業運営をしている志賀 大さん。事業の立ち上がりも順調とのことですが、その後のビジネスノマドとのかかわり方について伺いました。

独立後の関係性

Q:志賀さんがケアプロから独立後も守屋さんとの関係は続いていますね。志賀さんは、独立後どれくらいの頻度で守屋さんに会って相談されていますか?

志賀 大(以下、志賀):

今はもうほとんどないですね。業務的なところは、ケアプロ時代にみっちり教えていただいたこともあって、今までは守屋さんに相談しなくても少しずつ自分で判断できるようになってきている。なので、本当に「やばい!」という時だけですね。

守屋 実(以下、守屋):

むしろ今は志賀さんが、周りの相談に乗ってサポートしているよね。

志賀:

そうですね、守屋スタイルでサポートしています。当時の川添さんをサポートしている守屋さんを思い出しながら。

Q:それでは志賀さんから守屋さんへの相談はもうあまりしていない感じですね。

志賀:

相談の頻度はどんどん減っていく感じでした。最近は近況報告メインの相談が2〜3ヶ月に1回くらいです。

守屋:

相談を受けるというよりも、むしろ次は志賀さんの会社に入社させてもらおうかと(笑)

会社に固執し続けることが正解でない場合も

Q:守屋さんのベンチャー企業の中での機能の一つとして、社員との相談の窓口になっていますね。社員とコミュニケーションをとって個別の特性を見極めて、より向いている仕事に動かしたり、キャリアや業務の相談に乗って選択肢を提示しています。結果として会社の離職率を下げたり、個々の生産性をあげていることになっていると思います。さらに、ベンチャーでも成長率の高い人、飛び抜けた人、エース級の人へのフォローができるので、それらの人材のスキルや志向性から、組織の枠を超えた先の選択肢まで一緒に考えられるのがいいですね。

守屋:

優秀な人材でも、あるとき、悪いサイクルに入ってしまい、自分自身も気持ち悪く感じて、周りもコミュニケーションに苦労し始める。その状況でも、その会社に固執し続けるということは誰にとってもいいことはないと思います。そうした環境に居続けると健やかに育たない。曲がってしまう。

志賀:

自分ではその状況に陥っているのがわからないんですよね。そもそもインターンから入った1社目だと、他の選択肢が見えないですし。独立もよくわからない。

実は相談しやすい、ノマドならではの立ち位置

Q:1対1の雇用関係にある従業員に比べて、多数の会社で働くビジネスノマドはニュートラルな立場で物事を見られるし、社員にもそう映っているから相談しやすいと思います。守屋さんも社員の相談の窓口となっていましたか?

志賀:

最初は驚きました。守屋さんが入ってきて、一か月ぐらいでインターンの僕でも「すごい人」とわかったのですが、そんな「すごい人」でも普通に22,23歳の何もわからない自分に時間を割いてくれる。「とりあえず何でもいいから連絡よこせ」ぐらいのコミュニケーションを取ってくれるんですが、それでも最初は連絡を取りづらくて(笑)。でも、相談しやすいように、関わってきてくれるんです、守屋さんのほうから。そうこうしているうちに結果的にはすごく相談させてもらうことになっていました。

守屋:

とはいっても、何聞かれても志賀さんの欲しい答えは、答えないんだけどね(笑)。質問し返すだけで。

志賀:

実は、ケアプロで僕がそういう相談窓口のような立場になった時期があります。会社を出ることを決めつつ、今の診療所の立ち上げをしていたタイミングで、ある種ノマド的な立ち位置になった時です。その当時で言うと、部長より、社長より、誰より、みんなの精神状態を知っているのは僕だったんじゃないかと思います。結構来るんですよ、話というか、相談というか。守屋さんじゃないけど、話しやすいんでしょうね。

Q:全てに目が行き届きにくい成長期のベンチャーでは、相談の窓口も必要な役回りですよね。でも必要と分かっていても、なかなかそこにリソースを割けていない場合が多いのかもしれません。

会社の代表として事業立ち上げをしつつ、他社でも働くノマドに

Q:現時点では、志賀さんは会社の代表としての仕事がメインだとは思いますが、並行していろいろと手伝っていらっしゃいますよね。ご自身ではビジネスノマド化しているイメージですか?

守屋:

今でも既に2.5社にコミットしている感じだよね、自社以外でも医療機関の立ち上げの話があって、その間で別のベンチャーも手伝ってるわけだから、もうすでにこれをビジネスノマドと呼んでもかまわないんじゃないかな?

Q:自分のやっている会社が軌道に乗ったら、たとえば他の人に任せて、別の事業の立ち上げをするとか、今の会社とは一定距離をおいて離れるとかも選択肢の一つでしょうか。

志賀:

ありだとは思いますが、さっきの、判断するときの2つの軸(人の役に立っているか。わくわくするかどうか)で考えることになると思います。その判断軸の中で、この会社は自分以外のメンバーでやってもらい、世の中のためになる事業を新たに行なうほうがいい、となれば、うまく引き継いで次のところに行く、ということも場合によってはあるかもしれないですが、現状では考えてはいないです。

《編集後記》

守屋さんがミスミ時代から経験しているように、事業立ち上げが成功したとしてもあえて残らずに次にいく選択肢もありですよね。その会社の代表としておさまっているのが最善の場合と、他の人に任せて次にいくのと、自分のできることとやりたいことで選択できる余地がある。
軌道に乗って会社のフェーズがかわると創業メンバーがあまり機能しなくなったり、逆に事業の成長や組織化に際して阻害要因になっていたりする場合もあります。そこでビジネスノマドとして他でも通用したり、動いていくのが当たり前という考え方があると、会社に固執しない選択肢も取りやすいですね。

取材・インタビュア協力・撮影/サーキュレーション インターン生 小林

【専門家】守屋実
1992年に株式会社ミスミ(現ミスミグループ本社)に入社後、新市場開発室で、新規事業の開発に従事。メディカル、フード、オフィスの3分野への参入を提案後、自らは、メディカル事業の立上げに従事。2002年に新規事業の専門会社、株式会社エムアウトを、ミスミ創業オーナーの田口氏とともに創業、複数の事業の立上げおよび売却を実施後、2010年、守屋実事務所を設立。設立前、および設立間もないベンチャーを主な対象に、新規事業創出の専門家として活動。投資を実行、役員に就任して、自ら事業責任を負うスタイルを基本とする。2016年現在、ラクスル株式会社、ケアプロ株式会社、メディバンクス株式会社、株式会社ジーンクエスト、株式会社サウンドファン、ブティックス株式会社、株式会社SEEDATAの取締役などを兼任。
【専門家】志賀大
2010年にケアプロ株式会社に創業期メンバーとして参画。当時日本初のサービスであるワンコイン健診サービス(現:セルフ健康チェックサービス)の責任者として従事。退社をする2015年までに、営業・採用・事務・広報・ロジスティクスなどを経験。ケアプロ在籍中に一般社団法人みんなの健康を2011年に設立。2015年にみんなの健康を株式会社として再度設立し、日本で初めて行政より民間委託を受けた、一次救急専門のクリニック「いおうじ応急クリニック」を開始。医療機関の創業・開業やヘルスケア分野におけるコンサルティングを行う形で活動をしている。2016年現在では、年間自宅看取り件数が国内5本の指に入る在宅医療法人にてハンズオンコンサルティングも行っている。
ノマドジャーナル編集部
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