知られざるビジネスノマドの働き方。ファッション流通コンサルタント、インディペンデント・コントラクター(IC)協会の理事長も務める、ビジネスノマド歴12年の斉藤氏による独立キャリアについてのコラムです。
(第6回目の記事はこちら

前回の第6話までにお話ししたのは、独立して勤務先の看板や肩書がなくなって個人となった自分が仕事を獲得するためには、まずは自分の強み=過去の実績や経験の棚卸すること。そして自分の仕事ぶりを信頼して、仕事先を紹介して下さる知人がどんなキーワードで自分をお相手に紹介してくれるか?をわかりやすく整理しておくことの重要性についてお話しました。

今回は、過去の実績だけにとらわれず、自らフリーエージェントとしての未来を切り開くための、「パーソナルブランディング」を始めるためのお話をさせていただきます。

過去の実績と人脈でメシが食えるのはせいぜい3年

独立して、企業が求めるスキルをお持ちであれば、しばらくは過去の実績と人脈のご利益である程度メシは食えるでしょう。しかし、そんな過去の吐き出しだけに頼れるのも、せいぜい3年くらいが限度と考えるべきでしょう。それくらい時代の変化のスピードは速いのです。

そのため、独立したら目先の仕事にベストを尽くすと同時に、3年後にどんな仕事をしていたいか?を考え、未来に向けての自分の看板づくり=パーソナルブランディングを始めることをお勧めします。

独立して間もないころは、自分は何ができる人間か、つまり「何によって覚えられているか?」が仕事の受注につながることは前話でお話ししました。それと同時に3年後には「何によって覚えられたいか?」を考え始め、それを実際に行動に移すのです。これがパーソナルブランディングの始まりです。

パーソナルブランディングの3つの秘訣

筆者が独立後3年の間に実践して効果があったパーソナルブランディングの3つの秘訣をご紹介しましょう。

1. 名刺の住所にこだわる

一つ目は名刺の住所にこだわることです。

直行直帰はあたりまえ、自宅、クライアント企業、移動中、キンコーズ、カフェ・・・働く場所を選ばないビジネスノマド、フリーエージェントはどこでも仕事ができるのがメリットです。しかし、名刺にどんな住所を記載するかにはこだわるべきです。

「その道のプロになるなら、マーケットの中心に身を置け」これは独立時アドバイスをして下さった方の言葉です。

ビジネスノマドとしての働きかたから考えると、特に独立当初のローコストオペレーションをしなければならない時期に事務所を持つ必要はないのではないかと思うかも知れませんが、だからと言って名刺に自宅の住所を記載することには要注意です。おそらく、ローコストで使えるヤツというイメージくらいは持ってもらえるかも知れませんが(果たしてそれでいいのでしょうか?)それ以外のメリットは少ないと思います。

どこに本拠地を置くか?それによって相手はあなたを見ています。自分の職種や業界にとってふさわしい住所を選ぶことによってその住所を自分ブランドの一部にしてビジネス相手にアピールするのです。

筆者の場合はファッション業界の企業が相手になるため、南青山がベストで、他にも神宮前、恵比寿あたりの住所がふさわしいと思っています。

同様に社労士であるインディペンデントコントラクターの仲間は虎ノ門に、IPOコンサルである知人も茅場町を名刺の住所にしています。

個人事業である我々がスタートアップに無理な事務所経費(固定費)をかける必要は全くありません。知人の事務所に間借りしたり、非常に便利なSOHOオフィスなどのビジネスセンター施設のサービスを利用すればよいのです。

筆者は独立時、原宿、表参道に近い神宮前でアパレルメーカーを開業していた友人の事務所にデスクをひとつ借りることから始め、その後、広尾(恵比寿駅)、神宮前(表参道駅)、南青山(青山一丁目駅)の住所のSOHOオフィスを転々としています。面白いもので、移転のお知らせハガキを出すたびに仕事がひとつ増えたものです。よい住所に移転するたびに、筆者がビジネス拡大をしているなら仕事を依頼してみようと思っていただけたのでしょう。

名刺の住所はビジネスブランディングの基本です。

2. 自ら専門家を名乗る

二つ目は自ら「専門家」を名乗ることです。過去に培った仕事の実績をもとに独立をする方であれば、必ず優れた専門分野を持っているはずです。専門家とは学者でもなく、士業のような資格でもありません。誰かが名づけるものではないため、自ら名乗ることが可能です。ですからある意味、名乗ったもの勝ちなのです。但し、インチキ専門家と呼ばれないように(笑)、その専門分野については一般の人よりも断然詳しくわかりやすく説明できること、その知識やノウハウを供与することで対価が得られるレベルであること、そして常に最新情報のインプットを行うことでその専門性をアップデートしている、磨きをかけていることが前提です。

筆者はアパレル業界で海外生産から店頭販売まで幅広く実務経験を積んだ経歴から独立後、ファッション流通の専門家を名乗っています。

独立2年目にブログを始めましたが、サブタイトルにファッション流通専門家ブログとつけたことから筆者の記事を引用する読者の方々が「専門家のブログによれば・・・」とご紹介いただいています。(ブログの活用については次回以降に詳しくお話します。)

専門家を名乗るのが恥ずかしければ、「○○○○のプロ」でもよいでしょう。専門家、プロを名乗れるくらいの自負がなければ、独立事業主としてメシは食っていけないのではないでしょうか?

3. メジャーな看板を利用する

三つ目は 自分よりも大きく、知名度のあるメジャーな看板を利用することです。

勤務先の看板がはずれると、ビジネス社会における個人というものはいかにちっぽけなものかと実感するはずです。

そんなちっぽけな個人こそ、いかにメジャーな看板を利用して企業と対等な立場でビジネスをするための知恵と術を身に付けるかを考えるべきなのです。

もしあなたが誰もが知る大企業出身の方であれば、その企業出身であることは大いに利用すべきです。(ずっとそれだけにすがってしまっては未来はありませんが・・・)

次に勤務先でなくても、潜在クライアントが気になる業界や企業や商品やビジネストレンドの研究を徹底的に行い、それらに詳しくなること=専門家になることです。
研究を継続することで、それらに詳しい人と一目が置かれるようになれば、それはあなたの看板のひとつになるのです。

また、専門家を名乗り、周りから一目置かれるようになると、一般メディアや業界メディアから取材が来たり、記事の執筆の依頼があったりする可能性があります。それは、メディアの記者の方々はあるニュースや事象に関して、より詳しく語ることのできる専門家を常に探しているからです。取材は一般的に無償、執筆は気持ち程度(数千円から数万円)の報酬ですが、マスメディアに自分の名前が掲載されることのインパクトを考えてみてください。マスメディアにコメントが取り上げられていた人ということで既存クライアントや知人の中で一気に株(信用)が上がります。

このことは、知人が潜在クライアント先に「彼(または彼女)は○○○○(メディア名)にも取材されるくらいの人」と紹介できるようになることで、より信用が高まることになるのです。

これは企業のビジネスセミナー講師でも同様です。そのセミナーを主催する企業名があなたの看板となり、「○○○○(企業名)で講師を務める人」とあなたの株を上げるのです。

メディアの取材や企業のビジネスセミナー講師の依頼を頂けるくらいのコンテンツづくりや専門性を磨くことこそ未来へのパーソナルブランディングへの種まきなのです。

さて、次回はパーソナルブランディングを具現化するための武器、ウェブマーケティングについてお話します。

専門家:斉藤 孝浩(インディペンデント・コントラクター:独立業務請負人) 
グローバルなアパレル商品調達からローカルな店舗運営まで、ファッション業界で豊富な実務経験を持つファッション流通コンサルタント。大手商社、輸入卸、アパレル専門店などに勤務時代、在庫過多に苦労した実体験をバネにファッション専門店の在庫最適化のための在庫コントロールの独自ノウハウを体系化。成長段階にある新興企業からの業務構築や人材育成のコンサルなど、これまでに20社以上の企業を支援。
著書に「人気店はバーゲンセールに頼らない(中央公論新社)」や「ユニクロ対ZARA(日本経済新聞出版社)」がある。本業の傍ら、独立業務請負人の働き方の普及を目指すNPOインディペンデント・コントラクター(IC)協会の第3代理事長も務める。有限会社ディマンドワークス代表

ノマドジャーナル編集部
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