(写真 左:中嶋 翔さん 右:福留 大士さん)

前回まで、新規事業立ち上げの際の「インタビュー」と「リサーチ」についてお話いただきました。最終回となる今回は、これから新規事業立ち上げに関わる方が新規事業の手順と気をつけるべきことを教えていただきます。

新規事業の種は「不」で始まる言葉を探すことから

Q:新規事業の経験がなく、いきなり新規事業の責任者を任される方がいると思うのですが、新規事業において最初に考えるべきことは何でしょうか。

福留 大士 さん(以下、福留):

まずは新規事業の「種」を見つけることからですね。弊社の場合、企業のコンサルティングを通して種が見つかることが多いですが、事業会社で新規事業を担当される方においては、
「あるべき姿と現状のギャップ」、これをどれくらい発見できるかどうかだと思います。

いわゆるよく言われる「不」で始まるような言葉を探すのが早いですね。

「不都合」だとか「不便」のような言葉。これらをたくさん出して、マーケットを見つけるというのが出発点で、次に、それは何故だろうと原因を考えて、その原因を取り除いていくというのが、王道です。

例えばアマゾンの場合、現状だと配達に3時間かかっていたとして、ユーザーにとって「不便だよね」「待たせすぎだよね」「1時間で届いたほうがいいよね」という現状があれば、それを「1時間」で届けるべきですよね。他にも朝歯磨きをしていたとして、歯磨き粉が切れてしまった場合に「当日」ではなく「今」欲しいですよね。

このように、種を見つけたら、次に、「何故、1時間で配送できないのか」とWhyを考えたり、「どうやったら配達できるか」とHowを考えたり、と構想を膨らませていきます。これらのステップがまさに新規事業立ち上げの初期段階になります。この時にゼロベース思考で考える事が重要です。例えば「通販は翌日以降に届くものだ」というある種の「常識」囚われていては「1時間で商品を届ける」というサービスを考えつくことはできません。ですが、「歯磨き粉が切れた時はいますぐ届いたら嬉しい」ということもある種の「常識」でわかることです。

Q:では、種が見つかったあと、それを事業にする場合、特に大企業では社内のコンセンサスを得るために論理的な説明が必要になると思いますが、「論理的である」と言えるためにはどのようなポイントを抑えたら良いでしょうか?

福留 :

ポイントは3つあります。

1つ目は、結論がクリアであること。

2つ目は、結論に至る思考の道筋や根拠が明確であること。

最後3つ目は、その根拠が感覚ではなく事実にもとづいていることです。

上司や他のメンバーから指摘が入る場合は、結論と根拠の結びつきが弱い可能性があるので、他の根拠を用意したり、無駄に入っていた根拠を除いたりする必要があります。

新規事業立ち上げは、優先順位を考える

Q:論理的であることを担保するために「MECE(=網羅性)が重要である。」と言われますが、不明点が多い新規事業開発においてどのようにしてMECEを担保したら良いのでしょうか?

福留 :

事業計画作成のために検討項目を洗い出していく時は新しい領域であるがためにどうしても漏れが出てきてしまいがちです。事業計画表や有効なフレームワークがあるなど、なにかしら参考になる前例がある場合は、まだ抜け漏れはでにくいですが、それが全く無い白紙の時っていうのは漏れが出がちです。結局抜け漏れをなくすために一番有効な方法は、複数の他人の意見を聞くことだと思います。「検討項目は他にないか?」と色々な方の切り口で検討すると漏れを少なくすることが出来ると思います。

よく「ダイバーシティ」が重要だと言われますが、何故必要なのかというと、ものの見方や考え方が違う方が話すことで、自分では気づけなかったことに気づけるんですよね。

しかし、個人的には新規事業立ち上げの際に、MECEよりも重要な事があると考えています。それが「優先順位をつける」ということです。網羅的に考えるよりも、優先順位をつけて考えていくことが重要だと思います。本当は網羅的に全てを分かっていて、その中であえて取捨選択ができれば良いのですが、網羅的に考えることばかりに気を取られてしまうと一番大事なスピードが落ちてしまいます。優先順位をつけられず、新規事業の立ち上げが遅れてしまうのが一番の害悪ですね。

Q:では最後に、これから新規事業を始められる方にアドバイスをお願いします。

福留 :

新規事業はDCAPを回すことが重要です。フレームワークもロジックツリーのようなものを丁寧に書くよりも、とりあえず最初に新規事業立ち上げに必要なノウハウを研修などで受けて、すぐにアウトプットに活用して、優先順位を決めたら早速動き出すことをおすすめします。

先程もお伝えしたとおり、新規事業においては「スピード」が一番です。網羅性を担保しようと色々と調べている間にライバルに先を越されたということはあってはなりません。当然、初めてやる方が自分だけでこれらの取り組みをスピード感をもって行うことは難しいです。そのために我々のような会社がコンサルティングや研修を用意しているのでうまく活用して新規事業を成功させていただきたいと思います。

今回は新規事業の立ち上げプロジェクトをすすめる上で気をつけるべきことについて伺いました。新規事業はスピードが一番大事であるということですので、網羅性とスピードを両立するために、素早く複数のプロフェッショナルから指摘を受けることができる「Open Research」のようなサービスは新規事業企画において非常に有効だといえるでしょう。

新規事業について相談したいという方は是非、下記からお問い合わせください。

取材・記事作成/畠山 和也
撮影/加藤 静

【専門家】福留 大士(ふくどめひろし)
株式会社チェンジ 代表取締役兼執行役員社長

1998年アクセンチュア入社、ヒューマンパフォーマンスグループにて、製造業や政府官公庁向けの組織・人の変革プロジェクトやシステム導入プロジェクトに従事。2003年に株式会社チェンジを立ち上げ、代表取締役に就任。人材開発やITなど、他領域に渡る新規ビジネスを国内外で立ち上げた実績を持つ。

【専門家】中嶋 翔
株式会社チェンジ シニアコンサルタント 中国語の仕事.com担当

2011年横浜国立大学経営学部卒業後、株式会社チェンジ入社。チェンジでは事業開発の担当部門で新入社員時代から、インドでのIT技術者育成事業、ソーシャルメディア活用のコンサル・運用支援事業などの事業立ち上げを行ってきた。近い将来、子会社の社長の座を狙っている。

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。