プログラマーとしてのキャリアを持ち、GMOくまポンで常務取締役なども経験した岸本優喜さん(以下:岸本)。コーディングとコンサルティング、2つのスキルを併せ持ち「頭」も「手」も動かせるプロ人材が今回支援したのは、自社ECサイトの売上に伸び悩む名古屋に本社を持つトーヨーキッチンスタイルさんでした。岸本さんが週に1回の支援で果たしてどのように売上増150%に導いたのか、黒田研哉さん(以下:黒田部長)との対談形式でじっくりご紹介します。

会社の規模や社内の体制を考えると、大手ECコンサルよりも優秀なプロ人材の方が適切な選択肢だった

株式会社トーヨーキッチンスタイル 黒田研哉部長

独自の切り口「住むをエンターテインメント」でキッチン・インテリアをトータルコーディネート提案してきたトーヨーキッチンスタイル

黒田部長:当社はシステムキッチンを中心としたインテリア全般をトータルで販売しています。基本的な事業スタイルは全国21のショールームでキッチンに関するコーディネイトのご提案をするというものです。従業員は全体で450名程です。

会社としては既成概念や常識、セオリーといったものにとらわれず新しいことにチャレンジしていく風土があります。キッチンを販売している同じような業態のメーカーは他にもありますが、当社は「住むをエンターテインメント」という理念を掲げ、彼らとは全く違う切り口で製品を打ち出しています。トーヨーキッチンのようなキッチン・インテリアメーカーはほかには無いという点が企業文化かもしれません。

私自身は新卒からずっとトーヨーキッチンスタイルにいて、営業や広報、店舗販売や店長のようなこともやりましたね。あらゆる部署でノウハウを蓄積し、現在は新製品やショールームの販売促進業務など会社の後方支援的な役割を担っています。

高単価商材にも関わらず右肩上がりだった売上が伸び悩み、施策を打とうにも社内にはノウハウがなかった

黒田部長:今回岸本さんにお願いしたECサイトに関しては、インテリアの販売がメインです。そのほかにも細々したメンテナンス用品から数十万~数百万円単位のキッチン・機器まで、分野としては様々な製品を取り扱っています。

近年は社内におけるインテリア関連の売上が非常に伸びていて、ECサイトはそれを支えていた要素の一つでもありました。特に施策を打たなくても1ユーザーあたりの単価は5万円前後で、以前なら考えられなかったような高額商品もネット上で売れるようになっていたんです。それは当社の取り扱う価格帯の商材に対して、世間一般におけるEC市場のあり方が変わりつつある事が大きな要因だと感じていました。

10年ほど拡大を重ねていて、施策をしていなくてもずっと成長していたところに売上の伸びの限界が来ました。課題を感じ、今後もECサイトを成長させていくために対策を打とうとしたのですが、ECサイトの担当は私含め数名で、全員兼務で対応しています。我々だけでは解決策が浮かばず、会社としても成長は止めたくないので「外部のブレインを置いたほうがいい」という話になりました。

支援は名古屋で毎週実施。たとえ交通費がかかっても、東京で最新の技術や情報に触れているプロのアドバイスを求めた

黒田部長:大手企業によるECコンサルティングサービスもさまざま存在することは知っていましたが、当社のような規模感の企業でECの専属チームも組めない環境下では、ただアドバイスをもらうだけでは難しいんですよね。それよりも、細かな対応をしてもらえるプロ人材とやり取りをできたらと考えました。

そんなとき取引先経由でご紹介いただいたのがプロシェアリングサービス会社のサーキュレーションさんでした。早速担当のコンサルタント鈴木貴大さんに解決すべき課題をお伝えして、候補者リストを出してもらいました。面談したのはすごい経歴の方ばかりで、正直誰を選んだとしても何かしらのメリットは得られるだろうなと思いました。

そうそうたるメンバーから岸本さんにお願いした決め手は「チームで取り組める環境作りをします」とお話しいただいたことです。本当は私がリーダーとしてみんなを引っ張っていければいいのですが、なかなか時間も取れない懸念がありました。そんな中でも岸本さんならメンバー各自が持っている力を引き出す立ち回りをしてくれるのではと思ったんです。また、エンジニアとしてのキャリアがある分、うちの状況に合わせて頭だけではなく時には手も動かしてくれそうだという点が頼もしかったです。

岸本さんは東京在住で、ご依頼したら毎週名古屋の本社に通っていただく必要があり、第一線の人材に魅力を感じつつも交通費のコスト的な課題も気になりました。しかし現実では東京の方が最先端の技術を扱っていますし、仮に名古屋在住の優秀なフリーランスがいても、Web領域の場合は結局東京に出てしまうケースが多いです。交通費が高くても東京の優秀な人材が対面で最新のノウハウを教えてくれるなら、得難い経験になるので、結果的にはコスト以上のメリットがあると感じました。

GMOで子会社立ち上げの経験も持つ岸本さんが感じた、トーヨーキッチンのECサイトが持つポテンシャル

元GMOくまポン常務取締役 岸本優喜氏

岸本:私はプログラマーとしてキャリアをスタートし、Web制作会社を経て、後にGMOメディア社と合併するGMOティーカップ社に入社しました。掲示板やブログといった個人向けの様々サービスのプロジェクトの責任者として経験を積み、そして2010年にGMOグループが新たな取り組みとして割引クーポンサービス「GMOくまポン」が立ち上がり、マーケティング担当者として招集されました。マーケティング分析、テレビやウェブ広告の管理運用、メルマガの企画・運用、ポイント導入など、認知拡大、新規会員獲得、CRM構築などサービスが大きくなるために様々なことを行い、最終的にGMOくまポン社の常務取締役に就任してから独立しました。現在は、Webサービスの戦略策定からコーディング、サイトデザインに至るまで、ハンズオンで支援しています。

支援で大切にしているのは、企業の側に立つことですね。お話をいただいた段階で私の採用・不採用は関係なく、企業の中でやれることを探り、目標数値に対してどうアプローチすべきかを考えます。

トーヨーキッチンさんの場合は、まず扱っている商材がすごく綺麗でかっこいいのが印象的でしたね。一方でライトなんかは可愛いものもある。デザインが多岐に渡っていて面白いなと思いました。品質が良いということはリピーターやファンがつきやすいということですから、施策を積み上げていけば売上も伸びるだろうと直感しました。しかも、これまでECについては自社サイトだけで売上を作っていたことにも驚きました。普通は楽天やヤフーに出店して上手くいってから自社サイトを作るパターンが多いんです。一度大きな壁を乗り切っているわけですから、あとは購買意欲が高い人が集まっているところに上手く横展開すればいいだけです。ECに関しては非常に優良な会社だと思いましたよ。

広告に頼るのではなくサイト改善に着手。クーポンで新規会員を獲得しメルマガで既存会員をフォローする仕組みを導入

東京青山のトーヨーキッチン スタイル・ショールーム

1ヶ月で現状分析を終え、2ヶ月目からは継続購入と新規会員獲得を目的にクーポン施策を実施

黒田部長:支援は週1回でした。新規会員獲得の施策として当社は広告に頼るにではなく、ショールームの来館者に登録してもらうメールマガジン(メルマガ)を重視していました。

岸本:普通のECサイトはリアル店舗を持っていない場合があるのですが、トーヨーキッチンさんはそもそも素晴らしいショールームを持っていますから、その点は強みだと思いました。

そういった現状分析のため、最初の1ヶ月ほどでサイトのデータを確認させてもらいました。その上で打った施策はクーポンの導入です。ECサイト運営でポイントになるのは2回目購入なので、初回購入した人に対してクーポンを渡したらユーザーがどう動くのかを見ようと考えました。結果、トーヨーキッチンさんの場合は全く効果がありませんでした。商品の単価が高いので、クーポンなどで2回目の購買意欲が高まるお客さんではなかったんです。

そこで、次は新規会員登録で1000円クーポンがもらえるキャンペーンを開始しました。それまでは会員登録もメルマガ登録もせずに購入する人が半数以上でしたから、新規会員獲得の方向に切り替えたわけです。会員にさえなってもらえば、メルマガも打てますからね。

どんな視点で数字を見て、次の施策につなげるのか。柔軟な支援ができるプロシェアリングだからこそきめ細やかに担当者をコーチングできた

黒田部長:既存の掘り起こしのため、誕生日クーポンの発行やキッチン購入者へのメンテナンスのお知らせなど、メルマガ施策も岸本さんにご指導いただいて実施しました。

岸本:担当者の方々と一緒に数字を見ながら、細かなテクニックを教えるという感じでしたね。メルマガは昼に送信した方がクリックされやすいですし、記載するURLの作り方にもコツがありますから。ほかには具体的な数字の分析方法についてもレクチャーしました。例えばメルマガ内で商品紹介をする際に、10個並べたときと3個並べたときのクリック数に大きな違いが無いのであれば、作業効率を考えて3個でいくべきだといったことです。

メルマガにしろクーポンにしろ、大事なのは記録です。スプレッドシートに日次と月次で必要な数字を全て記録し、それをメンバー同士のミーティングで確認・分析すれば、どんな施策を打ったときにどんな効果が出たのかすぐにわかります。そのための分析シートを作成したり効果測定ツールの使い方を教えるなど、環境整備にも注力しました。

ベンダーに依頼すると何十万円、数週間かかっていたUIの改修も岸本さんがエンジニアの経験を活かして1日でこなしてくれた

黒田部長:ECサイトの導線やUIにも課題があったので、改修もしてもらいました。というのも、もともとサイトの作りとして参考にしていたのがECではない海外のサイトだったので、ECサイトとしての利便性が必要だと思っていました。

岸本:例えばトップページの画像の出し方などを変えましたね。以前は1つの画像が画面横一杯に表示されていたのですが、実はこういったスライダーはデザイン的には優れていてもあまり訴求効果がありません。少し幅を狭めて、スライドする次の画像が見えるようにしました。

あとは新規会員登録1000円クーポンをトップ画像の下に出したり、スマホでの見栄えを考えたバナー配置にしたり、ニュース系の記事は下部にまわして代わりに商品ランキングを上にしたりと、細かに配置を変更していきました。

黒田部長:ECサイトにおけるそういったテクニックがあることは私たちでも知っていたのですが、ベンダーにお願いすると少し調整するだけでも費用と時間がものすごくかかってしまって、これまで簡単にできなかったんですよね。何十万、何週間というコストをかけてリニューアルしたのに効果が出ないことも多いのが問題になっていて。岸本さんはそういう面でも非常に柔軟に相談に乗ってくれて、HP制作のスキル等を活かしてすぐにサイトを直してくれました。

岸本:私は週に1回の支援ですから、ベンダーに頼むと次に訪問したときに前回の課題が直っていない状態になってしまうんですよね。作業だけが溜まっていって、効果が測れない。私が作業すれば1日で済むような内容でしたから、そこは対応することにしました。

SEO対策なんかも一通りは実施しましたが、ここに関してはすぐに効果が出るものではありませんし、Googleが判断基準を変える可能性があるためあくまで最低限の内容です。それよりも会員登録率を上げるなど、ユーザーへのアプローチに注力して支援を進めました。

支援から1年であらゆる数字が伸び、売上の土台となる新規会員登録数150%増を達成

黒田部長:岸本さんにご支援いただいた1年間での成果が、会員登録者数約150%、メルマガ登録者約190%などあらゆる測定項目で良い数字に繋がりました。当初は購入者のうち会員登録してくれていたユーザーが1割程度だったのですが、これも最後には7割にまでなり、見事に逆転しました。

売上も今は前年比で150%ほどに伸びていて、顧客基盤を作った効果が出始めています。

岸本:新規会員登録率を上げておくことが後々になって効果を発揮するんですよね。獲得した会員さんにはクーポンを発行して購入のきっかけも与える。そういった施策が大きな売上につながります。

黒田部長:こうした支援やその成果を通して学んだのは、継続する大切さです。やはり数字を意識しながら施策を打たないと、登録数も下がってしまうんですよ。岸本さんが週に1回来てくれたときのようなフォローはもうありませんから、自分たちでやり続けなければと強く感じます。

良い製品が潜在的なファンにもリーチするよう、今後も顧客目線の柔軟な施策を展開し続けてほしい

黒田部長:支援を経た次の段階として、今はAmazonなどモールへの出店も進めようとしています。その中で新しい課題も出てきていますが、ECの幅を広げることができて感謝しています。機会があれば是非また岸本さんとご一緒したいです。

サーキュレーションさんに良い出会いを提供していただいたおかげで、道が拓けたのだとも思っています。担当コンサルタントの鈴木貴大さんはキューピッドのような存在ですね(笑)。

岸本:今でもトーヨーキッチンさんの売上などの数字はたまに見ていますが、いい感じに伸び続けているのであまり心配はしていません。黒田さんを中心として、バランスが取れたECサイト運営ができているのだと思います。

最初にお話をいただいたときから感じている通り、トーヨーキッチンさんが提供しているのは素晴らしい製品ですから、潜在的なファン層は多いはずです。今後そこにどうリーチして売上を作るのか、柔軟に考えていってほしいですね。

プロシェアリングという形で毎週支援をしながら思っていたのは、今後私のようなパラレルワーカーが増えていくにあたり、彼らの挑戦の場を既に支援経験もある玄人が一緒に創っていくような機会があれば良いと感じました。プロシェアリングの可能性にこれからも期待してます。

クーポンやメルマガといった施策も全てを完璧にできている企業はなく、自社の顧客にはどの施策がマッチしているか見極め、効果測定のための基盤を整えることが、後に大きな成果となることを体現する案件でした。

本日はお忙しい中、ありがとうございました!

左:サーキュレーション コンサルタント 鈴木貴大
右:株式会社トーヨーキッチンスタイル 黒田研哉部長

企画編集:新井みゆ

写真撮影:樋口隆宏(TOKYO TRAIN)

取材協力:トーヨーキッチンスタイル

TOYO KITCHEN STYLE(トーヨーキッチンスタイル)|システムキッチンとインテリアで上質な暮らしをご提案

https://www.toyokitchen.co.jp/ja/

トーヨーキッチンスタイル公式オンラインショップ

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moooi Japan|モーイオフィシャルサイト

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※ 本記事はサーキュレーションのプロシェアリングサービスにおけるプロジェクト成功事例です。