会社を設立したり、新しいお店を開店させる際に必要になるのが「資金」。
よく、「資金調達をする」という言葉を聞くと思いますが、内部で調達する方法や借入、増資など、様々な手法があることはご存知でしょうか。

 

できる限り、自社の上げた利益で内部調達をするのがベストではありますが、すぐにでも資金が必要なタイミングもあるでしょう。また、会社を設立する場合には資本金を集めたくても、なかなか集まらない場合も多いのが実情です。

 

必要になってから慌てるのではなく、資金の使用目的や自社の状況に合わせて、最適な資金調達手法が選べるようにしておきましょう。

資金使途に応じた資金調達を考える

Q:資金調達にはどんな手段があるのでしょうか

A:資金調達の手段としては借入や増資などがありますが、大事なことは資金使途に応じた資金調達を行うことです。
会社経営では、資金が重要なことは言うまでもありません。会社にとっての資金は、人でいうと血液と同じと考えてください。血液が回らないことが命にかかわる事態であるのと同様に、、資金が回らなければ、会社が倒産してしまう可能性もあり得ます。

 

この資金調達には下記のように様々な手法があります。
【資金調達の大分類】

手法
  内部資金   内部留保や減価償却、貸倒引当金という非現金支出費用
  外部資金   負債   借入金
  社債
  資本金   増資

 

資金調達でまず考えなければいけないことは、利益を上げて内部留保をしっかり行うことです。配当をした後の利益は貸借対照表上、利益剰余金として積み上がります。これは自社の利益を源泉としているため資金調達上は会社外部からの調達資金である外部資金と対比して内部資金と呼びます。

 

また、会計の勘定科目には費用のうち現金を支出しない費用があります。例えば、減価償却費や貸倒引当金繰入額という科目です。これは費用ではありますが、現金は支出されないため、資金調達という視点では返済が必要な外部資金と対比して内部資金として考えます。

外部からの資金調達は、負債と資本のどちらで調達するかを考える

Q:内部資金での調達が難しい場合は、どうすればいいのでしょうか。

A:この場合は、外部からの資金調達を考えます。さらに、負債と資本のどちらで調達するのかも考えなければなりません。
ここで大事なのは、負債はいつかの時点で返さなければいけないものということです。一方、資本金として調達すれば、それは会社を継続する限り返さなくて良いものです。

 

返す義務があるものか否かという点は非常に大きいです。会社がなぜ倒産するか、というとそれは負債の返済ができないからです。黒字であっても負債が返せず黒字倒産ということが生じてしまうのも、資金繰りに行き詰ってしまった結果です。そのため資金の調達においては負債の比率やその内容が大事となってきます。

 

また決算書上においても、負債の比率と自己資本の比率は分析上よく見られます。特に自己資本比率=純資産÷総資産は安全性指標として必ずと言っていいほど見られますので、資金調達の際には、資本の部の状況に留意してください。
なお、適正な自己資本比率の水準は業種によって異なりますが、目安としてまずは、財務的に安全とされる30%以上を目指しましょう。(詳しくはこちら→https://nomad-journal.jp/archives/1148

外部調達を行う。借入、社債、増資における注意点

Q:外部調達を行う際に気をつけることはありますか。

A:それでは借入、社債、増資、それぞれの場合での注意点を見ていきましょう。

■金融機関からの借入

実務においては金融機関からの借入がもっとも一般的でしょう。金融機関からの借り入れについては金利の利率も大事ですが、長期で借りるのか短期で借りるのかその資金使途に応じて検討をしてください。
例えば、納税資金や賞与資金のような一時的なものであれば短期で借り入れて問題ないでしょう。一方、工場の設立や店舗の開設などの資金であれば、その効果が出るまで時間がかかりますので長期の資金で借りることが必要ですし、借入だけではなく社債や資本による調達も考えなくてはならない場合もあります。

■社債の発行

社債とは企業が広く債券を発行して資金調達をすることですが、非上場会社が発行する際は信用力等から考えて金融機関になるでしょう。転換条項や新株予約権などが付いた社債の発行も可能です。債券が不履行となっては大変ですので、社債の発行による資金調達はハードルが高くなっています。

■増資

資本として調達する際には、既存株主から調達する株主割当や第三者から株主を募る第三者割当等があります。株価をいくらにするのか、その権利はどうするのかも検討する必要があります。

 

これまで見てきたように、資金調達には様々な方法がありますが、負債の調達においては自社の資金繰りを、資本の調達においては資本政策の視点が大事となります。
会社が選択できる資金調達手法が様々ですので、自社の資金使途に応じて資金調達手法を選択していってください。

専門家:江黒 崇史

大学卒業後、公認会計士として大手監査法人において製造業、小売業、IT企業を中心に多くの会計監査に従事。
2005年にハードウェアベンチャー企業の最高財務責任者(CFO)として、資本政策、株式公開業務、決算業務、人事業務に従事するとともに、株式上場業務を担当。
2005年より中堅監査法人に参画し、情報・通信企業、不動産業、製造業、サービス業の会計監査に従事。またM&Aにおける買収調査や企業価値評価業務、TOBやMBOの助言業務も多く担当。
2014年7月より独立し江黒公認会計士事務所を設立。
会計コンサル、経営コンサル、IPOコンサル、M&Aアドバイザリー業務の遂行に努める。