前回までの連載で、「地方の仕事」を取り巻く現状や、副業・リモートワークといった働き方について、概要を見てきました。あくまで全体像をさらっと紹介しただけですので、どのテーマについても「ピンとこないな」と思われた読者もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回からは、連載【地方×副業、リモートワーク】で扱うテーマについて、具体例やニュースを挙げて、さらに詳しく踏み込んでいきたいと思います。

 

まずは今回から数回に渡り、地方で働くことのメリット・ハンディキャップについて、それぞれ具体的にご紹介いたします。

地方の仕事……踏み出すには勇気が必要?

地方で働くことのメリットについて、あらゆるメディアで多くの人が力説しています。しかしその割には、昔も今も地方人は都会を目指し、都会で働こうとします。逆に、都会から地方に移住して働くケーズは(会社の転勤などをのぞき)あまりありません。地方から都会への人の流出は止まらず、都市部への一極集中と地方の過疎化という、極端な現象が続いているのです。

 

多くの人が、地方の自然の美しさや、都会にはない恵まれた環境に魅力を感じつつも、なかなか地方で暮らすことに踏み切れない現実があります。地方人(特に若者)は都会で働くメリットを重視し、一方で都会人は地方に移住するリスクを恐れるのかもしれません。

そこで今回は、都会で生まれ、インターネットの有名人となりながらも、あえて地方に移住して働くことを選択した人物をご紹介したいと思います。その有名人こそ、ブロガーのイケダハヤト氏です。

イケダハヤト氏とは?

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、イケダハヤト氏は執筆業を営んでいます(かつての首相・池田勇人とは関係がありません)。

神奈川県に生まれた彼は、IT系のベンチャー企業などでの勤務を経て、フリーライターに転向しました。そうして執筆を始めたブログで多くのアクセスを集め、人気ブロガーとしてブレイクしたのです。

特徴ある主張は時に反発も買い、ネット上で集中的に攻撃される(注)こともありますが、ひときわ異彩を放っています。

(注)ネットで集中的に攻撃を受ける……いわゆる「炎上」と呼ばれる現象。

 

都会で生まれ育ち、ネットの世界でスターとなったイケダ氏。ところが彼は意外にも「地方移住論者」であり、2014年に東京から高知県長岡郡本山町(もとやまちょう)に移住したのです。

イケダハヤト氏の主張

地方移住に関するイケダ氏の主張は、こちらの記事にまとめられています。

 

地方移住して3年。メリットとデメリットを語ろう。

http://www.ikedahayato.com/20160601/60489216.html

(イケダハヤト氏ブログ「まだ労働で消耗してるの?」より)

 

ここでは、イケダ氏の視点をもとに、地方への移住、地方での仕事について考えてみたいと思います。

(なお、イケダ氏は人気ブロガーゆえにかなり個性的な主張を展開されているので、こちらでは別の視点も交えて話を進めます)

健康の増進

イケダ氏の体験でも、自然豊かな地方への移住で、健康が目に見えて増進されたといいます。

ただし地方といっても「地方都市」ではなく、山や田畑に囲まれたエリア(いわゆる「田舎」と呼ばれる地域)への移住が健康にいいという主張です。

氏の指摘するとおり、ひと口に地方といっても「地方都市」と「自然エリア」の違いは重要でしょう。たとえ首都圏から離れていても、地方の中心都市(県庁所在地など)では車やオフィス街が多く、自然に乏しい面があるのは否めません。その点、山間部や水田地帯に行くと、自然に囲まれての生活ができます。

 

イケダ氏は、地方移住による健康増進について

  • 野菜中心の食生活になる
  • 空気と水がいい
  • 人が少ないことで、ストレスが軽減される

などの理由を挙げています。

 

氏や家族は、高知への移住後は体調を崩しにくくなり、風邪もほとんどひかなくなったといいます。

また周囲には、難病や精神疾患の改善例があり、療養のために滞在する人もいるそうです。

(もちろん医学的な裏づけがあるわけではないですが、都会と地方の違いが健康を左右するファクターだとは、言えるかもしれません)

食のメリット

とにかくイケダ氏は、高知での食生活に大変満足しているようです(ブログで大きな写真を使って紹介しています)。良質な野菜や海産物を、新鮮な状態で味わえるのは、地方ならではの魅力と言えるでしょう(ファストフードやコンビニ弁当の食生活とは、一味違います)。

食事は生活と健康の基本です。季節それぞれの旬の食材を存分に味わうことが、人生を充実させるひとつのポイントだと言えるでしょう。

生活費が安い

さらにイケダ氏は、地方の生活費の安さを強調します。高知県本山町は山間部なため家賃も安く、駐車場つきで3万円で済むと言います。

さらに食費も大幅に浮きます。外食をせず、土地の野菜や果物を中心にした食生活で、費用をかけずにフレッシュな食事を楽しめるのです。

 

イケダ氏は「お金を使わなくても豊かに生きることができる」と、本山町の人々の生活を絶賛しています。地方で働くことによる収入低下を不安に思う人もいるでしょうが、地方に住むことで、逆に支出を大きく抑えられる可能性もあるのです。

 

以上、今回は人気ブロガーのイケダハヤト氏の主張をご紹介しつつ、地方移住の生活面のメリットを考察してみました。次回も引き続きイケダ氏の主張から、地方暮らしを仕事面から考えたいと思います。

 

記事制作/欧州 力(おうしゅう りき)