成長する企業の多くは「上場」を目指します。株式市場は高い成長が期待される企業に資金を提供する場であり、上場企業は、株式の発行による資金調達(エクイティ・ファイナンス)が可能です。
しかし様々なリスクを検討しないまま、何となく投資家から言われるまま、エクイティ・ファイナンスを実行すると様々なリスクが表面化し、行き詰まる経営体制になることがあります。一度、発行した株式を株主から買い取ることは、ハードルが高く、やり直しがききません。
「後悔先に立たず」、にならないようにするにはどうすれば良いのか?ファイナンスの専門家、株式会社プルータス・コンサルティングの山田昌史氏による「資本政策の現場」連載記事をまとめました。
【資本政策】後戻りできない??そもそも資本政策とは(前編)
2015年08月07日掲載 【資本政策】後戻りできない??そもそも資本政策とは(前編)
そもそも資本政策とは具体的にはなんなのでしょうか。
資本政策とは、一言でいうと株主資本に関する計画ですが、エクイティ・ファイナンスによる資金調達により株主構成は変化するため、資金調達と株主構成のバランスを考えた計画が重要です。ウィキペディアで検索しても出てこないこの言葉を、起業した早い段階から正確に理解しておくか否かで会社運営の根本的な誤りを大きく減らすことができます。
「後悔先に立たず」の資本政策。まず、世の中でどのような「後悔」が起きているのか、以下、失敗事例を項目毎に紹介しています。
- 起業後の新株発行による資金調達での後悔
- 上場前の株式譲渡での後悔
- 上場前の新株発行による資金調達での後悔
- ストック・オプション発行での後悔
- 種類株発行による資金調達での後悔
【資本政策】事業計画にまず着手。そもそも資本政策とは(後編)
2015年08月08日掲載 【資本政策】事業計画にまず着手。そもそも資本政策とは(後編)
資本政策を立てないまま上場に向かうということは、目をつぶって走り続けるようなもので、多様な落とし穴に落ちてしまうリスクがあります。仮定をいくつか置いてでも、事業計画を作成し、資本政策表に落としこむべきです。なぜなら、資本政策は事業計画(資金計画を含む)と表裏一体だからです。
まず事業の計画がなければ、いつ、いくら必要かがわからず、資金計画が立たないし、資金調達する時の株式価値の見積りも立ちません。そうなると、このような資本政策表が作れません。
やはり仮定をいくつか置いてでも、ありうるひとつの現実的な事業計画を作成し、資本政策表に落としこむべきです。ひとつ作成し、定期的に見直すだけでも、事業の強み弱みが自分で把握できる、有力な経営ツールにもなります。資本政策の根っこと言える「事業計画」の大切さを解説しています。
起業家はIPOを目指すのが正解なのか?(前半)
2015年08月26日掲載 起業家はIPOを目指すのが正解なのか?(前半)
起業するからには、IPOを目指すべきというのは正解なのでしょうか。
IPOとは、市場から調達した資金を成長に向けた投資にあて企業価値を高めるといった好循環を繰り返す企業にとって、最良の選択と言います。
IPOとM&Aと非上場経営、どれを選ぶかで採りうる資本政策上の施策は大きく変わってくるので、事業の成長性を良く考えた上で、どの方向に進むかは慎重に考える必要があるでしょう。いずれも会社の成長に繋がりうる選択肢ではありますが、多額の資本を市場から集めて一気に注入することにより、継続的に拡大、成長していくことができる事業であれば、やはりIPOの方が事業をより大きく拡大していくことができます。(逆にいうと、そうでない事業は上場する意味はないかもしれず、M&Aによる資本業務提携を検討した方がよいかもしれません)
起業家はIPOを目指すのが正解なのか?非上場会社のメリット(後半)
2015年08月28日掲載 起業家はIPOを目指すのが正解なのか?非上場会社のメリット(後半)
前編では、IPOとM&A、非上場会社のままといった選択肢について、どちらが会社を成長させられるのか、といった観点で整理していきました。後編は、どちらが儲かるのか?やその他の考慮事項について整理し、どういった選択肢をとることが得策なのかを考えていきます。それぞれの選択肢の先に、どのような道がありうるのでしょうか?
どちらが儲かるかという結論では、継続的に拡大、成長していくことができる事業であれば、IPOによる段階的な株式売却の方が、結果的に株主は儲かる可能性が高いです。経営者にそのような自信がなければ、他社へ経営を委譲することによる、短期での経営権の換金の方が儲かることも多いといえます。
他の考慮要素は?IPOの事業上のメリットと上場コスト、非上場会社のメリットなども合わせて解説しています。
資金調達を考えるためのステップ ベンチャー企業にとってVCとつきあうことの意味【前編】
2015年09月03日掲載 資金調達を考えるためのステップ ベンチャー企業にとってVCとつきあうことの意味【前編】
IPOに関するデータをみていると、全体として投資が進んでいる結果、早い段階(創業後間もない段階)から高い株価で多額の資金調達をするケースが、急速な増加傾向にあります。一般論として、このような傾向が顕著である場合、株価形成が正しく行われないケースが時々生じます。「早い段階で株式を発行して資金調達をする。」これは必ずしもよいことばかりではありません。
「支払いが生じないので株式での調達が最も有利です」「株式での調達コストはタダ」(?)という考え方についての整理や、スチュワードシップ・コードとROE5%について解説しています。
資金調達を考えるためのステップ ベンチャー企業にとってVCとつきあうことの意味【後編】
2015年09月04日掲載 資金調達を考えるためのステップ ベンチャー企業にとってVCとつきあうことの意味【後編】
株式発行を行う際に、資本コスト以上に考えるべき「希薄化」について、そして、起業家にとってVCはよいパートナーか?資金調達の検討に必要なステップについて解説しています。
資金調達の検討に必要なステップをこれまでのコラムを交えて整理すると、まず、根本的には、資金使途の性質と事業からのキャッシュ・フローの実績、担保性資産の有無を考慮する必要があります。VCから株式による資金調達が可能であるとしても、本当に上場を目指すべきビジネスモデルなのか、を真剣に考える必要があります。いつ、何株をいくらで、発行するかは、事業計画とリンクした資本政策を十分に検討した上で、決定する必要があるのです。実行したら後戻りはできないリスクがつきものです。
VCを決めるには、企業戦略とVCの投資戦略が合致しているのかについて、きちんと向き合うことが必要です。担当者の人柄、本当にパートナーとして付き合っていけるかも重要なポイントと言えるでしょう。
【種類株】普通株以外での増資で創業オーナーと投資家の悩みを解決。種類株の活用
2015年10月06日掲載 【種類株】普通株以外での増資で創業オーナーと投資家の悩みを解決。種類株の活用
いまやベンチャー企業においても、資金調達手法は普通株式の発行だけではなく種類株式や新株予約権を用いた新たな手法が年々開発され、多くの選択肢が与えられています。普通株式以外の資金調達手法がどのように便利なのか、ヤフーとブックオフコーポレーションの事例をわかりやすく紹介している記事です。
また、種類株式、CB、ワラントの用語解説も必見です。
普通株式では出資が集められないような場合(→種類株式で解決)、株式の発行を提携事業の成否に応じて決めたい場合(→CBで解決)、資金を必要に応じて段階的に集めたい場合(→ワラントで解決)、など、普通株式以外の手法を使うことによって、会社と投資家のニーズをうまくマッチする架け橋となり、一見解決困難な資金調達を意外とうまく成し遂げることが可能となります。このような資金調達手法の基礎知識は、経営の一般知識として必要なレベルまで普及してきています。
いかがでしたでしょうか?経営者でなくとも会社がどのように資金調達しているのか、このようなファイナンスの基礎知識、用語について理解しておくことはビジネスマンとして必要なことでしょう。次回は、そもそも基礎となる「会社の価値」がどのように決まるのか、について解説していきます。
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