多くの営業組織をみてきた営業のスペシャリストによる連載第20回です。

以前の記事(記事:「営業の採用の仕方・考え方」)にて「優秀な営業」を採用するという「宝探し」を辞めようというお話をしましたが、今回の例は営業の組み合わせで解決した例として、もう少し踏み込んだ事例で印刷業での営業改善事例をご紹介します。

優良顧客との関係性をいかに構築するかが中小印刷会社が生き残るキー

ご存知の方も多いと思うが、印刷業は価格競争が非常に激しい業界である。一部を除き商品による差別化がほとんどできない状態になってしまっている。

また、価格も激安ネット印刷が普及した結果、中小印刷会社がネット印刷に価格で対抗することは100%と言っていいほど不可能になってしまった。業界自体も毎年5%程度縮小しており、小規模・零細印刷会社を中心に廃業も相次いでいる。そのような環境の中、中小印刷会社が生き残るには「価格にあまりなびかない良い顧客をどれだけ確保できるか」である。そのため、優良顧客との関係性をいかに構築するかが中小印刷会社が生き残るキーとなっている。

優良顧客とはいえの印刷需要が増えるということはまずないから、売上を伸ばそうというと必然的に新規開拓をする必要が出てくる。当然、各社自社顧客に対する囲い込みは激しく行うので入り込むことは簡単ではない。

印刷会社が新規顧客開拓のために行った施策とは

そのような環境下においてある印刷会社が新規顧客開拓のために行った施策が「地域活性ポータルサイト」の立ち上げである。

あまり詳しくは書けないが、県などを巻き込んで地域活性のためのポータルサイトを立ち上げた。地域活性のためにポータルサイトに参画を呼びかけたのである。ポータルサイトへの参画は無料であくまでも「印刷会社が中心となって行う地域活性の取り組みに協力してもらう」というお願いである。

ただし、「優良顧客=地域の優良企業」であるから今まで入り込めなかった会社にも別口の切り口で関われるようになった。印刷の発注は関係性が非常に重要ということもあり、ここをきっかけにして印刷の新規顧客を多数獲得できた。

中小企業にとっては如何に人材力を向上させずに営業力を強化するか

現場の営業は特別なスキルを習得する必要はなく「無料なので地域活性のための取り組みに協力してください」と各企業に声をかけ、その取組の活動を通して顧客と関係性を構築したらあとは普通に印刷の営業をするだけである。

上記は多数の印刷会社が苦労する「新規顧客開拓」を営業力強化することなく達成した事例である。上記の通り、売上げアップ=営業力強化=優秀な営業の採用や営業教育とは必ずしもならないし、むしろ中小企業にとっては如何に人材力を向上させずに営業力を強化するかを課題とすべきなのだと思う。

専門家:畠山 和也

ソフトバンク、リクルート、ラクスルにてマーケティング・営業を歴任した後独立。自身が一線の営業として活動するのみならず、顧客のマーケティング・組織まで踏み込んだ施策を実行。メーカー・商社・代理店・小売など30業種以上を担当。顧客規模としても大手から中小まで幅広い経験がある。現在、営業・マーケティングコンサルタントとして6社を担当。成果にコミットしたコンサルテーションに定評がある。

ノマドジャーナル編集部
専門家と1時間相談できるサービスOpen Researchを介して、企業の課題を手軽に解決します。業界リサーチから経営相談、新規事業のブレストまで幅広い形の事例を情報発信していきます。